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社長の引退年齢は何歳?引退準備とハッピーリタイアの進め方

「そろそろ自分も引退を考える年齢なのだろうか」「周りの経営者はいつ頃、どんなきっかけで引退を決めているのか」——長年会社を率いてきた経営者であれば、一度はこうした問いが頭をよぎるはずです。健康や体力への不安、後継者の有無、会社の将来を思うほど、決断のタイミングは難しく感じられます。
一方で、実際のデータを見ると、日本の社長の平均年齢や引退年齢には明確な傾向があります。何歳で引退するのが正解というものはありませんが、統計や実務上の目安を知ることで、自分自身の状況を客観的に位置づけることができます。
そこで本記事では、社長の平均年齢・引退年齢に関する最新データを整理したうえで、引退を考えるべきタイミングの判断基準、準備の進め方、事業承継の選択肢までを、売り手経営者の目線でわかりやすく解説します。
事業承継の基礎知識を体系的に押さえておきたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

この記事の監修者

森沢 雄太
一般社団法人
M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
社長の引退年齢に関する現状データ

まずは、社長の年齢や引退年齢について、どのようなデータがあるのかを確認しておきましょう。感覚論ではなく統計をもとに現状を把握することで、自分の状況を客観的に捉えやすくなります。
社長の平均年齢は60.8歳、35年連続で過去最高を更新
帝国データバンクの「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」によれば、全国の社長の平均年齢は60.8歳で、35年連続で過去最高を更新しています。この30年間で平均年齢は約5歳(正確には5.4歳)上昇しており、経営者の高齢化が着実に進んでいる実態がうかがえます。
年代別に見ると、50歳以上の社長が全体の82.6%を占め、60歳以上の社長も半数を超えています。多くの中小企業で、経営者が高齢層に差し掛かっている状況が見て取れます。
引退(交代)時の平均年齢は68.5歳
同調査では、社長交代時における「交代前(引退)」の社長年齢は68.5歳(前年比0.1歳減)とされています。交代後の新社長の平均年齢は52.8歳で、交代前後の年齢差である若返り幅は15.7歳です。社長の平均年齢そのものが35年連続で過去最高を更新し続けている状況を踏まえると、経営トップ全体の高齢化が進む中で、引退(交代)のタイミングも60代後半で推移しやすい傾向がうかがえます。
業種別に見ると、経営者の年齢が最も高いのは不動産業で、IT関連を含むサービス業では比較的若い傾向にあるとされます。地域別では秋田県が62.6歳でトップとなるなど、業種・地域によって経営者の年齢構成には差があります。自社の業種特性を踏まえたうえで、平均データを参考にすることが大切です。
高齢化の背景にある後継者不在の問題
経営者の高齢化と表裏一体の関係にあるのが、後継者不在の問題です。帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表)によれば、後継者不在率は50.1%とされています。これは後継者が「いない」または「未定」とされた企業の割合を指し、前年から2.0ポイント改善し、調査開始以降で最も低い水準となっているものの、依然として調査対象企業のうち半数以上(50.1%)で後継者が定まっていない状況にあり、引退の先延ばしにつながっている面は否めません。
自社に後継者候補がいない場合の具体的な選択肢や対策は、後継者がいない会社で詳しく解説しています。
中小企業庁の中小企業白書でも、経営者の高齢化と事業承継の課題が継続的に取り上げられており、後継者の確保・育成が中小企業全体の構造的な課題として認識されています。数値はあくまで全国平均であり、自社の状況とは前提が異なる可能性がある点には留意しつつ、大きな傾向として押さえておくとよいでしょう。
なぜ社長の引退年齢は上がっているのか

経営者の高齢化と、それにともなう引退時期の後ろ倒しの背景には、複数の要因が重なっていると考えられます。ここでは代表的な理由を整理します。
健康寿命の延伸と経営意欲の持続
医療の進歩や健康意識の高まりにより、60代・70代でも活動的に働き続けられる経営者が増えています。体力的に現役を続けられる期間が延びたことで、引退の時期を先送りする判断がしやすくなっている面があります。ただし、健康状態は個人差が大きく、年齢だけでは判断できない部分でもあります。
後継者不在という構造的な要因
前述の通り、後継者不在率は50.1%とされ、後継者が見つからないまま引退時期を迎えられない社長も少なくありません。「引退したくても後を継ぐ人がいない」という状況が、結果的に引退年齢を押し上げている側面があります。
資金・体制面での準備不足
事業承継には、後継者の育成、株式や資産の整理、取引先・金融機関への説明など、相応の準備期間が必要です。準備が整わないまま漫然と時間が過ぎてしまい、引退を決断できないまま年齢を重ねるケースも見られます。
社長が引退を考えるべきタイミングと判断基準

「何歳になったら引退すべきか」という問いに、万人に当てはまる正解はありません。年齢はひとつの目安に過ぎず、実際には複数の要素を総合的に見て判断することになります。
健康状態・体力の変化
経営判断の質は、経営者自身の心身の状態に大きく左右されます。定期的な健康診断の結果や、日々の体力・集中力の変化を客観的に見つめることは、引退のタイミングを考えるうえで欠かせない視点です。無理を重ねて経営判断が鈍る前に、余裕を持って準備を始めることが望ましいとされています。
後継者の有無と育成状況
親族内、社内、社外を問わず、後継者候補がいるかどうか、また育成がどの程度進んでいるかは、引退時期を左右する大きな要素です。候補者がいる場合でも、経営を任せられる状態になるまでには一定の年数がかかるのが一般的です。
会社の業績・経営環境の動向
業績が安定している時期に引き継ぐのか、それとも立て直しが必要な状況で引き継ぐのかによって、後継者の負担は大きく異なります。市場環境の変化や競合状況を踏まえ、会社にとって望ましいタイミングを見極める視点も重要です。
個人としてのライフプラン
引退後にどのような生活を送りたいか、資金面での見通しはどうかといった、経営者個人のライフプランも判断材料になります。会社の状況だけでなく、自分自身の人生設計とすり合わせて考えることが、後悔の少ない決断につながります。
引退準備は何歳から始めるべきか

事業承継には想像以上に時間がかかることが多く、「引退を決めてから準備を始める」のでは間に合わないケースも珍しくありません。
事業承継にかかる期間の目安
後継者の選定・育成、株式や資産の整理、取引先や金融機関との関係整理などを含めると、事業承継の準備には5~10年程度の期間を要するとされています。中小企業庁は「事業承継ガイドライン」や「事業承継診断」の中で、経営状況の見える化、経営改善(磨き上げ)、承継計画の策定、実行というステップを踏み、60歳前後には準備に着手することが望ましいとの考え方を示しています。後継者不在で第三者への引継ぎを検討する場合は、事業承継・引継ぎ支援センターのような公的機関や、中立的な立場の専門家に早めに相談しておくことで、選択肢を狭めずに準備を進めやすくなります。
公的機関や専門家への相談をどう進めればよいかについては、事業承継の相談先で詳しく解説しています。
早めに準備を始めるメリット
準備を早く始めるほど、後継者育成に十分な時間をかけられ、会社の磨き上げ(収益性や財務体質の改善)にも余裕を持って取り組めます。また、複数の選択肢(親族内承継・従業員承継・第三者承継など)を比較検討する時間的な余裕も生まれます。
準備の先延ばしがもたらすリスク
一方で、準備を先延ばしにすると、経営者自身の体力や気力が低下した状態で意思決定を迫られたり、後継者育成が間に合わず事業の継続性が損なわれたりするリスクがあります。後継者不在のまま時間が経過し、最終的に廃業という選択を余儀なくされるケースも実務上は見られます。
引退準備の初期チェックリスト
- 自身の健康状態・体力を客観的に確認したか
- 後継者候補の有無と、その育成状況を整理したか
- 自社の株式構成・資産状況を把握しているか
- 事業承継にかかる大まかな期間・スケジュール感を確認したか
- 相談できる専門家(税理士・弁護士・事業承継の窓口等)の当てはあるか
事業承継の方法と選択肢

引退を考える際には、会社をどのように次の世代へ引き継ぐかという選択肢も併せて検討する必要があります。代表的な方法にはそれぞれ特徴があり、状況に応じた見極めが求められます。
| 承継方法 | 概要 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 子や親族が経営を引き継ぐ | 従業員・取引先の心理的な受け入れが得やすい | 親族に経営意欲・適性がない場合は難しい |
| 従業員承継 | 役員・従業員が経営を引き継ぐ(社内での内部昇格のほか、株式を買い取るMBO・EBOという手法を含む) | 経営方針や社風の継続性を保ちやすい | 株式取得をともなう場合は資金調達が課題になりやすい |
| 第三者承継(M&A) | 社外の企業・個人へ株式や事業を譲渡する | 後継者不在でも事業継続の道を残せる | 譲渡先の選定や条件交渉に専門知識が必要 |
親族内承継は長年主流とされてきた方法ですが、少子化や価値観の多様化により、子や親族が必ずしも会社を継ぐとは限らない時代になっています。従業員承継は経営の連続性を保ちやすい一方、株式買取に必要な資金の確保が実務上のハードルになりがちです。第三者承継(M&A)は、後継者不在の場合でも従業員の雇用や取引先との関係の維持を図りやすい選択肢として、近年は中小企業の間でも徐々に選ばれるようになってきました。
親族内承継のメリット・デメリットや具体的な手続きの流れは、親族内承継で詳しく解説しています。
いずれの方法にもメリットと留意点があり、どれが自社にとって最適かは会社の状況や経営者の意向によって異なります。複数の選択肢を並べて比較しながら、中立的な第三者の視点で条件の妥当性を確認しておくことも、後悔のない意思決定につながる一つの方法です。
中立的な第三者の視点で自社に最適な選択肢を確認したい方は、こちらもあわせてご覧ください。

家族経営と非家族経営で異なる承継の考え方
事業承継の進め方は、家族経営(オーナー企業)か非家族経営かによっても重視すべきポイントが変わってきます。家族経営の場合は、親族間での資産・株式の分配や、後継者以外の親族への配慮など、感情面を含めた調整が必要になりやすいのが特徴です。一方、創業家以外の人物が経営を担ってきた非家族経営の企業では、社内の役員・従業員から後継者を選ぶケースや、外部から経営人材を招くケースが相対的に多く、経営理念やカルチャーの継承をどう担保するかが論点になりやすい傾向があります。自社がどちらの形態に近いかを踏まえたうえで、承継の進め方を検討することが望ましいでしょう。
社長引退後の生活と立場の選択肢

引退後の過ごし方は、経営者一人ひとりの価値観によって大きく異なります。代表的な選択肢を確認しておきましょう。
会長・相談役として関わり続ける
引退後も会長や相談役といった立場で会社に関わり続ける選択肢があります。会社ごとの定款や役員選任手続に基づいて就任するのが通例で、後継者へのアドバイスや、取引先・金融機関との関係維持など、これまで培った経験や人脈を活かせる一方、経営権を後継者に明け渡した後も過度に口を出しすぎると、新体制の意思決定を妨げてしまう懸念もあるため、関わり方の線引きを事前に整理しておくことが望ましいとされています。
完全にリタイアし、新しい生活へ移行する
会社との関わりを一区切りし、趣味や家族との時間、地域活動などに軸足を移す経営者も少なくありません。第一線を退くことで、これまで後回しにしていた健康管理や自己実現に時間を使えるようになります。
引退後に直面しやすい心理的な変化
意外と見落とされがちですが、長年経営者として意思決定の中心にいた人が、その役割を手放した後に一定の喪失感や焦燥感を覚えることは珍しくありません。会社という「自分の居場所」であり続けた存在から離れることで、アイデンティティの再構築が必要になる場合もあります。引退前から、経営者仲間との交流や地域活動への参加など、会社以外にも自分の役割や居場所を持てるよう準備しておくことが、引退後の充実した生活につながりやすいといえます。
社長引退にあたって知っておきたい税金・資金の基礎

引退・事業承継に伴い、税金や資金面での基礎知識を押さえておくことも欠かせません。
株式譲渡にかかる税金の基本
第三者承継(M&A)などで株式を譲渡する場合、個人株主が得た譲渡益には、原則として申告分離課税で20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が課される仕組みになっています(国税庁タックスアンサーNo.1463。復興特別所得税は2013年から2037年までの時限措置)。ただし一般株式等・上場株式等の区分や譲渡のスキームによって扱いが異なる場合があるため、実際の税額は取得費や譲渡費用も含めて税理士など専門家に確認することをおすすめします。
スキーム別の具体的な税額計算や節税対策については、会社売却にかかる税金で詳しく解説しています。
退職金の活用
引退にあたっては、役員退職金の支給を組み合わせて検討するケースもあります。役員退職金は原則として給与所得とは異なる退職所得として扱われ、退職所得控除や分離課税など税制上特有のルールが適用されますが、勤続年数や支給額によって適用される控除の内容が変わってくるため、こちらも税理士等の専門家に事前に相談しておくと安心です。
社長の引退年齢に関するよくある質問
Q1. 社長の引退年齢に法律上の定めはありますか?
法律上、社長(代表取締役等)の引退年齢について明確な定めはありません。会社ごとに定款や内規で役員の定年を定めている場合はありますが、義務ではなく任意の運用です。
Q2. 何歳で引退するのが理想的ですか?
帝国データバンクの調査では、社長交代時における引退(交代前)の平均年齢は68.5歳となっていますが、これはあくまで全国平均であり、健康状態・後継者の有無・会社の状況によって理想的な年齢は個人ごとに異なります。年齢そのものより、複数の判断基準を総合的に見て決めることが大切です。
Q3. 後継者が決まっていない場合、どう準備を進めればよいですか?
親族や社内に後継者候補がいない場合は、従業員承継や第三者承継(M&A)といった選択肢も含めて早めに情報収集を始めることが望ましいとされています。事業承継・引継ぎ支援センターなど公的な相談窓口も活用できます。
Q4. 引退時期を先延ばしにするとどのようなリスクがありますか?
経営者自身の体力・判断力の低下、後継者育成の遅れ、事業承継の選択肢が狭まることなどが挙げられます。準備には5~10年程度の時間がかかる場合が多いため、早めの着手が推奨されています。
Q5. 引退後も会社に関わり続けることはできますか?
会長や相談役といった立場で関わり続けることは可能です。ただし、後継者の意思決定を尊重し、関わり方の範囲をあらかじめ整理しておくことが、円滑な引き継ぎにつながります。
Q6. 事業承継とM&Aは同じ意味ですか?
事業承継は会社を次の世代・第三者へ引き継ぐこと全般を指す広い概念で、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)はいずれもその実現手段の一つです。M&Aは第三者承継を実現する代表的な手法という位置づけになります。
Q7. 経営者の平均年齢は業種によって違いますか?
帝国データバンクの調査では、経営者の年齢が最も高いのは不動産業、比較的若い傾向にあるのはIT関連を含むサービス業とされています。地域別にも差があり、秋田県が62.6歳でトップとなるなど、業種・地域による違いが見られます。自社の業種特性も踏まえて平均データを参考にするとよいでしょう。
まとめ
社長の平均年齢は60.8歳で35年連続の過去最高を更新し、引退(交代)時の平均年齢も68.5歳となっています。後継者不在率は50.1%と前年より改善したものの依然として高水準にあり、多くの中小企業が高齢化と後継者問題という共通の課題に直面している状況がうかがえます。
しかし、これらの数値はあくまで全国的な傾向であり、何歳で引退すべきかという問いに唯一の正解はありません。健康状態、後継者の有無、会社の業績、自身のライフプランといった複数の要素を照らし合わせながら、自分にとって納得のいくタイミングを見極めることが大切です。
事業承継の準備には5~10年程度の時間がかかるとされているため、「まだ早い」と感じる段階から情報収集を始めておくことは、選択肢を狭めないための有効な備えになります。親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)など複数の選択肢を、中立的な立場でじっくり比較検討したい場合は、専門家に相談してみるのも一つの方法です。
監修者:森沢雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事) 日本M&Aセンター出身、M&A成約実績100件超。売り手に寄り添う中立的な立場から、M&Aセカンドオピニオンサービスを提供している。