「店を続けたいが、体力的にも経営的にも限界が近い」「後継者がおらず、このまま廃業するしかないのか」——飲食業界のオーナー経営者から、こうした声をよく耳にします。長年かけて育て上げたお店を、ただ閉じるだけで終わらせたくないと考えるのは当然のことです。
実際、飲食業界では人手不足・原材料費の高騰・後継者不在が重なり、廃業を選択するケースが増え続けています。一方で、M&A(合併・買収)によって事業を次の担い手に引き継ぎ、従業員の雇用を守りながら自身も相応の対価を受け取るという選択肢が、中小飲食店のオーナーにも急速に広まっています。
しかし、「M&Aは大企業がするもの」「手続きが複雑そう」「どこに相談すればいいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、飲食店M&Aの基礎知識から、手法・流れ・相場・成功のポイント・注意点まで、売り手オーナー目線でわかりやすく解説します。M&Aを検討し始めた段階の方が、正確な情報をもとに判断できるよう、実務的な内容を中心にまとめました。

M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事 森沢 雄太
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
飲食業界を取り巻く現状と事業承継の課題

外食産業の市場規模と近年の動向
一般社団法人日本フードサービス協会の推計によると、外食産業の市場規模は2023年に約24兆円規模に達し、コロナ禍の落ち込みから大きく回復しています。しかし、回復の恩恵を受けている一方で、業界全体が構造的な課題に直面していることも事実です。
食材・エネルギーコストの高騰に加え、最低賃金の引き上げによる人件費増、さらに慢性的な人手不足が収益を圧迫し、黒字であっても経営者が疲弊するケースが増えています。特に個人・小規模の飲食店では、オーナーの体力と経営が直結しているため、経営者の高齢化が直接的な事業リスクになりやすい構造があります。
後継者不在が加速する廃業リスク
中小企業庁「中小企業白書2024年版」の分析では、中小企業全体の後継者不在率が5割超に達するとされており、飲食業界もその例外ではありません。子どもに継がせたくても「飲食業は労働環境が厳しい」と断られるケースや、そもそも身近に候補者がいないという状況が広がっています。
後継者がいないまま経営者が高齢になると、廃業という選択肢が現実味を帯びてきます。廃業には閉店工事費用・違約金・在庫処分コストなど、まとまった費用が必要になることが多く、「閉めるにも閉められない」という状態に陥る経営者も少なくありません。
こうした背景から、M&Aによる事業承継が飲食業界で注目されるようになっています。廃業ではなく、事業・従業員・ブランドを次の担い手に引き継ぐことで、オーナー自身が対価を受け取りながら引退できる仕組みが整ってきています。
飲食店M&Aとは何か

M&Aの基本的な意味
M&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略称で、企業や事業を他の企業・個人に譲渡・統合することを指します。飲食店の文脈では、オーナーが自分のお店(または会社)を買い手に売却し、事業を引き継いでもらう取引全般を指します。
大企業同士の大型合併だけがM&Aではありません。個人経営のラーメン店や居酒屋、カフェなど、小規模な飲食店でもM&Aは行われており、近年は専門プラットフォームや仲介会社の整備が進んだことで、中小・小規模飲食店にとっても身近な選択肢になっています。
飲食店M&Aが増加している理由
飲食店M&Aが増加している背景には、売り手側・買い手側それぞれの事情があります。
売り手側では、前述のとおり後継者不在・経営者の高齢化・コスト増加による収益悪化が主な動機です。一方、買い手側では、新規出店よりも既存店舗の買収のほうがリスクを抑えられるという判断が広まっています。特に、立地・内装・設備・既存顧客・スタッフをそのまま引き継げる飲食店M&Aは、開業コストの削減という意味で非常に魅力的に映ります。
また、フランチャイズチェーンや食品関連企業が飲食店を傘下に収めることで、食材の仕入れルートを確保したりブランドを取得したりするケースも増えています。市場全体で需要と供給が噛み合う状態にあることが、飲食店M&A件数の増加を支えています。
飲食店M&Aと居抜き譲渡の違い

飲食店の売却方法として、「居抜き」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。M&Aと居抜きはどちらも「お店を誰かに引き渡す」という点では似ていますが、その内容は大きく異なります。
居抜き譲渡とは
居抜き譲渡とは、主に内装・厨房設備・什器などの造作を新しい借主に譲渡する取引を指します。賃貸借契約については、貸主(物件オーナー)の承諾を得たうえで買主が新たに契約を締結するか、既存の契約を承継する形が一般的で、貸主の同意なく契約がそのまま移るわけではありません。営業権・ブランド・スタッフ・顧客台帳などは原則として引き継がれません。譲渡価格は数十万円〜数百万円程度の造作譲渡料が中心で、対価は設備の状態によって変動します。
M&Aとの主な違い
M&Aでは、設備だけでなく、営業権・ブランド・商標・顧客基盤・従業員雇用・仕入れルートなど、事業全体を包括的に引き継ぐことができます。そのため、売却対価は居抜きよりも高くなる傾向があります。収益性の高い飲食店では、数千万円〜数億円規模の取引になることもあります。
また、居抜きは「場所と設備を渡す」のに対し、M&Aは「事業そのものを渡す」という本質的な違いがあります。長年積み上げたブランド価値や顧客の信頼、スタッフとの関係を次の担い手に引き継ぎたいと考えるオーナーにとって、M&Aはより適した選択肢といえます。
| 比較項目 | 居抜き譲渡 | M&A |
|---|---|---|
| 引き継ぐ対象 | 内装・設備・物件 | 事業全体(ブランド・顧客・スタッフ含む) |
| 売却対価の目安 | 数十万〜数百万円 | 数百万〜数億円(収益性次第) |
| 雇用の継続 | 原則なし | 継続可能 |
| ブランドの存続 | 通常なし | 存続可能 |
| 手続きの複雑さ | 比較的シンプル | 専門家の支援が必要 |
飲食店M&Aの主な手法

飲食店M&Aには、大きく分けて「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの手法があります。どちらを選ぶかによって、税負担・手続き・引き継ぎの範囲が異なります。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手(オーナー)が保有する会社の株式を買い手に売却する手法です。株式を譲渡することで、会社そのものがまるごと買い手のものになります。
売り手にとっては、会社の負債・契約・許認可もそのまま引き継がれるため、手続きがシンプルで対価の受け取りがスムーズです。また、株式譲渡で得た利益(譲渡益)には、原則として申告分離課税が適用され、復興特別所得税を含めた実効税率は約20.315%とされています。ただし税率は税制改正により変わる可能性があるため、売却前に税理士等に最新の課税関係を確認することをお勧めします。
一方で、買い手は会社の簿外債務や潜在的なリスクも引き継ぐことになるため、デューデリジェンス(詳細調査)を十分に行う必要があります。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社全体ではなく、特定の事業(店舗・設備・人材・ブランドなど)のみを売却する手法です。複数店舗を持つ場合に、一部の店舗だけを売却したいときなどに活用されます。
事業譲渡の場合、許認可(飲食店営業許可など)の取り扱いに注意が必要です。2023年12月13日施行の食品衛生法改正により、事業譲渡においても届出によって営業者の地位を承継できる場合が設けられました。ただし、設備の変更や業態の変更を伴う場合など、変更届や新規許可取得が必要になるケースもあります。実際の手続きは管轄の保健所に確認することをお勧めします。また、従業員を引き継ぐ場合は個別に雇用契約を結び直す必要があります。
税務上の課税関係についても確認が必要です。法人が事業譲渡を行う場合、売却益は法人税等の課税対象になります。一方、個人事業主が事業譲渡を行う場合は、譲渡する資産の内容(棚卸資産・設備・営業権など)に応じて事業所得・譲渡所得等として課税関係が異なります。いずれの手法が適しているかは、会社の形態・財務状況・売却したい範囲・税務上の影響などによって異なります。どちらが有利かは税理士等の専門家に確認することをお勧めします。
売り手(オーナー)がM&Aを選ぶメリット・デメリット

売り手側のメリット
1. 廃業コストを回避しながら対価を得られる
飲食店を廃業する場合、原状回復工事・違約金・在庫処分・退職金などでまとまった費用が発生します。M&Aによる売却であれば、これらのコストを避けながら、事業の価値に応じた対価を受け取ることができます。「閉めるお金がかかる」から「売ってお金が入る」への転換です。
2. 従業員の雇用と処遇を守れる
廃業すると従業員は全員解雇せざるを得ません。M&Aであれば、買い手企業が雇用を引き継ぐ条件での取引が可能です。長年一緒に働いてきたスタッフへの責任を果たしながら引退できることは、多くの売り手オーナーにとって大きな安心感につながります。
3. ブランドや店の文化を次の世代に残せる
長年培ってきたレシピ・業態・地域での知名度・常連客との関係を、M&Aによって存続させることができます。廃業すれば消えてしまうものが、次の担い手によって継続される可能性があります。
4. 経営者が引退後の生活資金を確保できる
M&Aによる売却対価は、老後の生活資金や次のビジネスへの投資原資として活用できます。適切なタイミングで売却することで、経営者としての出口戦略を確立することができます。
売り手側のデメリット・留意点
1. 売却後の経営の自由がなくなる
M&A成立後は、原則として買い手が経営権を持ちます。売り手オーナーが従来どおりの経営方針を維持できるとは限らず、メニュー・価格・スタッフ配置などが変わる可能性があります。引継ぎ期間や経営方針の継続についての取り決めを、事前に明確にしておくことが重要です。
2. 売却対価が期待を下回るケースもある
売却価格は買い手との交渉によって決まります。黒字経営であっても、設備の老朽化・賃貸契約の残存期間・立地条件などによって評価が下がることがあります。「いくらで売れるか」を事前にある程度把握しておくことが、交渉での判断に役立ちます。
3. 情報漏洩・従業員への影響に注意が必要
M&Aの検討中にスタッフや取引先に情報が漏れると、動揺や離職につながりかねません。検討段階での情報管理には細心の注意を払う必要があります。秘密保持契約(NDA)の締結など、情報管理の仕組みを整えることが重要です。
飲食店M&Aの流れ

飲食店M&Aの一般的なプロセスは以下のとおりです。規模や手法によって期間は異なりますが、中小飲食店の場合は着手から成約まで3〜12ヶ月程度かかることが多いとされています。
ステップ1:M&Aの意思決定と目的の明確化
まず、「なぜM&Aをするのか」「どのような条件を希望するか」を整理します。後継者不在・引退・資金確保など、売却の目的によって、買い手に求める条件や交渉の優先事項が変わります。この段階での目的の明確化が、後の交渉をスムーズにします。
ステップ2:仲介会社・アドバイザーへの相談と契約
M&Aの専門知識を持つ仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に相談します。売却の希望条件・財務状況・事業内容をもとに、アドバイザーが企業価値の概算や売却の可能性を検討します。仲介会社と契約を結ぶ際は、手数料体系・サービス内容・利益相反の有無を確認することが重要です。
ステップ3:バリュエーション(企業価値評価)
専門家が財務諸表・売上実績・設備状況・立地などをもとに、事業の価値を評価します。この評価が売却価格の目安となります。評価手法については後述します。
ステップ4:買い手候補の探索とノンネームシート(匿名資料)の送付
買い手候補に対して、会社名・店舗名を伏せた匿名の資料(ノンネームシート)を送付し、関心を確認します。興味を示した候補には秘密保持契約(NDA)を締結したうえで詳細情報を開示します。
ステップ5:トップ面談
売り手オーナーと買い手候補の経営者が直接面談します。事業への理解・経営方針・従業員の処遇など、数字だけでは伝わらない部分を確認し合う重要な場です。お互いの相性や信頼感を確かめる機会でもあります。
ステップ6:LOI(基本合意書)の締結
トップ面談を経て双方が合意に向けて進む場合、LOI(Letter of Intent:基本合意書)を締結します。売却価格・スキーム・引継ぎ期間・独占交渉権などの大枠を合意する文書です。法的拘束力のない項目が多いですが、取引の骨格を固める重要なステップです。
ステップ7:デューデリジェンス(DD)の実施
買い手が売り手の事業・財務・法務などを詳細に調査するプロセスです。財務DD・法務DD・ビジネスDDなどが行われ、簿外債務・未払い賃金・設備の状態・許認可の状況などが確認されます。DDの結果によって、価格や条件の再交渉が行われることもあります。
売り手としては、この段階で正確な情報を誠実に開示することが、円滑なクロージングへの近道です。隠された問題が後から発覚すると、表明保証(契約書において売り手が事実を保証する条項)違反として損害賠償リスクにつながる可能性があります。
ステップ8:最終契約(DA)の締結とクロージング
デューデリジェンスの結果をふまえ、最終的な売買契約(DA:Definitive Agreement)を締結します。その後、代金の受け渡しと経営権の移転(クロージング)が行われ、M&Aが完了します。クロージング後は通常、一定期間の引継ぎ・サポート期間が設けられます。
飲食店M&Aの相場と企業価値の考え方

飲食店の売却価格はどう決まるか
飲食店M&Aの売却価格は、事業の収益力・設備の状態・立地・ブランド力・契約条件などを総合的に評価して決まります。一律の「相場」があるわけではなく、個々の案件によって大きく異なります。
よく使われる概算の計算式として、以下があります。
売却価格の目安 = 時価純資産 + 営業利益 × 数年分(のれん)
「のれん」とは、純資産では表せない事業の超過収益力(ブランド・顧客基盤・ノウハウなど)のことです。飲食店M&Aでは営業利益やEBITDAの複数年分をのれんとして加算するケースが多く、1〜3年分程度を目安とする事例も見られますが、実際の倍率は案件の成長性・収益の再現可能性・買い手の戦略などによって大きく異なります。あくまで概算の一例として参考にしてください。
実際の相場感
小規模な飲食店(個人経営・1〜3店舗)の場合、売却価格の目安は数百万円〜数千万円程度のケースが多く見られます。一方、複数店舗を展開しEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が一定規模以上の場合、数億円規模の取引になることもあります。
| 規模・収益力 | 売却価格の目安(参考) |
|---|---|
| 個人経営・赤字〜トントン | 数百万円以下〜数百万円 |
| 個人経営・安定黒字 | 数百万〜数千万円 |
| 多店舗展開・高収益 | 数千万〜数億円 |
| チェーン展開・ブランド価値高 | 数億円〜 |
※上記はあくまで参考値であり、実際の価格は個別の条件によって大きく異なります。
価格に影響する主な要素
収益性(営業利益・EBITDA)が最も大きな評価軸です。加えて、立地の優位性・設備の状態・賃貸借契約の残存期間・スタッフの定着率・口コミ評価・ブランド知名度なども価格に影響します。
赤字であっても、立地の良さや設備の充実度によって一定の評価を受けるケースもあります。一方、黒字であっても設備の老朽化や賃貸契約の短さがマイナス評価になることもあります。事前に専門家に概算評価を依頼することで、現実的な価格感を把握することができます。
飲食店M&Aで成功するためのポイント

財務情報を整理・透明化する
M&Aにおいて、買い手は財務諸表・確定申告書・売上データなどをもとに事業評価を行います。帳簿の整合性がとれていなかったり、個人的な経費と事業経費が混在していたりすると、評価が困難になり、価格が下がる要因になります。
日頃から帳簿を整理し、財務状態を透明にしておくことが、高い評価につながる第一歩です。M&Aを検討し始めた段階で、税理士とともに財務のクリーンアップを行うことをお勧めします。
独自ブランドやレシピ・ノウハウを資産化する
長年培ってきたレシピ・接客マニュアル・仕入れルート・メニュー開発のノウハウは、飲食店の重要な「無形資産」です。これらが属人化していて後継者でも再現できない状態では、買い手からの評価が低くなります。
マニュアル化・文書化・商標登録など、ブランドを資産として可視化しておくことが、売却価格の向上につながります。
タイミングを見極める
業績が下降し始めてから焦って売却を試みると、交渉力が弱まります。理想的なのは、事業が安定している段階、あるいは黒字基調が続いているタイミングです。「まだ早い」と感じる段階から情報収集を始めることで、適切なタイミングで動けるようになります。
従業員への情報開示のタイミングを慎重に管理する
M&Aを検討中であることが早期に漏れると、従業員の動揺や離職につながるリスクがあります。最終合意に近い段階まで、情報は必要最小限の関係者のみに共有するのが原則です。従業員への説明は、クロージング直前〜後のタイミングで、誠実かつ丁寧に行うことが重要です。
専門家の活用で判断の質を高める
M&Aには、法務・税務・財務・交渉など多岐にわたる専門知識が必要です。自己判断のみで進めると、不利な条件で合意してしまったり、重要なリスクを見落としたりする可能性があります。仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を活用することで、適正な価格での売却と円滑な手続きが期待できます。
飲食店M&Aの注意点

デューデリジェンスへの備えを怠らない
買い手によるデューデリジェンス(DD)では、財務・法務・オペレーション面が詳細に調査されます。未払い残業代・設備の不具合・賃貸借契約の特殊条件・許認可の状態など、気づいていなかった問題が浮かび上がることもあります。
事前に自社の状態を把握し、改善できる点は改善しておくことで、DDでの交渉ブレを最小化できます。問題を隠したままにしておくと、後の表明保証違反につながるリスクがあります。
M&A仲介会社の手数料・契約条件を確認する
M&A仲介会社は成功報酬型が一般的で、成約時に売却価格の一定割合(レーマン方式など)を手数料として支払います。着手金・中間金が必要な会社もあります。なお、レーマン方式が代表的な手数料体系ですが、近年は固定フィー・月額報酬・最低報酬額の設定など、会社によって体系が異なるため、複数の会社を比較したうえで判断することが重要です。
また、仲介会社が売り手・買い手双方の代理をする場合(双方代理)、利益相反の可能性があります。自分の利益を最大化するためのアドバイスが必ずしも受けられない場合もあるため、契約前に役割・報酬体系を明確に確認することが重要です。
スピード感のある判断が求められる
飲食店M&Aは、買い手側が複数の案件を同時に検討していることが多く、「少し時間をおいてから検討しよう」という間に、他の案件に関心が移ってしまうことがあります。一方で、焦って不利な条件で合意することも避けなければなりません。専門家の意見を参考にしながら、適切なスピード感で判断することが求められます。
譲渡後の経営方針の変化を理解しておく
M&A成立後は、経営の主体が買い手に移ります。メニューの変更・価格設定・スタッフ体制など、従来と異なる判断が行われる場合があります。「大切に育てたお店がどう変わるか」については、トップ面談の段階で買い手の経営方針を確認し、大切にしたい点については事前に合意を取り付けておくことが、後悔を防ぐために重要です。
飲食店M&Aの相談先と選び方

M&A仲介会社・FAの活用
飲食店M&Aの専門知識を持つ仲介会社やFAは、案件の発掘・マッチング・交渉支援・契約書作成など、M&Aプロセス全体をサポートします。大手M&A仲介会社から、業界特化型の専門会社まで様々な選択肢があります。
選び方のポイントは、飲食業界での実績・担当者の専門性・手数料の透明性・サービスの範囲です。複数の会社に相談し、比較検討することをお勧めします。
公的機関の活用
中小企業庁が推進する「事業承継・引継ぎ支援センター」は、全国各地に設置されており、無料で事業承継・M&Aに関する相談を受け付けています。民間の仲介会社に相談する前段階として、公的機関で基礎的な情報収集を行うことも有効です。
セカンドオピニオンの活用をお勧めする理由
M&Aを検討する際に、一つの仲介会社だけの意見に頼るのはリスクがあります。仲介会社は成功報酬で報酬を得るため、意図せず成約を急ぐ方向のアドバイスになることがあります。また、提示された売却価格が適正かどうかを判断する材料を、売り手オーナーは持ちにくい状況にあります。
こうした情報格差を解消するために、中立的な第三者の立場からM&Aについて意見を聞く「セカンドオピニオン」の活用が注目されています。
M&Aインサイトが運営するM&Aセカンドオピニオンでは、売り手に100%寄り添う立場から、M&Aに関する疑問・不安・契約条件の確認などを完全無料でご相談いただけます。成功報酬も一切なく、売り手オーナーの利益を最優先にした中立的な意見を提供しています。
「仲介会社から提示された価格は適正か」「この契約条件で問題はないか」「今のタイミングでM&Aを進めるべきか」といった判断に迷う場面で、ぜひご活用ください。
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飲食店M&Aに関するよくある質問

飲食店M&Aを検討し始めた段階でオーナーからよく寄せられる疑問に、実務的な視点からお答えします。
個人経営の小さなお店でもM&Aは可能ですか?
可能です。M&Aは大企業だけの手法ではなく、個人経営のラーメン店・居酒屋・カフェ・バーなど、小規模飲食店でも数多くの成約事例があります。買い手には、飲食業に新規参入したい個人・法人や、店舗数を増やしたい中小外食企業など様々な候補が存在します。
ただし、規模が小さいほど買い手の選択肢が限られる場合もあるため、できるだけ事業が安定している段階で動き始めることが重要です。
M&Aにかかる期間はどれくらいですか?
中小飲食店の場合、相談開始から成約・クロージングまで、一般的に3〜12ヶ月程度かかることが多いとされています。買い手候補の探索や交渉がスムーズに進むケースでは3〜6ヶ月程度で完了する場合もありますが、候補先の選定に時間がかかったり、デューデリジェンスで問題が浮上したりすると期間が延びることもあります。
「いつまでに引退したい」という目標がある場合は、逆算して早めに動き出すことをお勧めします。
赤字の飲食店でもM&Aで売却できますか?
赤字であっても、立地の優位性・設備の状態・ブランド・顧客基盤・物件の賃貸条件次第で、買い手がつくケースがあります。特に、好立地で内装・設備が充実している店舗は、黒字転換を見込んだ買い手から評価されることがあります。
ただし、赤字が続いている場合は売却対価が低くなる傾向があり、買い手候補の幅も狭まります。できれば業績が回復・安定している段階での売却が、より有利な条件を引き出す近道です。
M&Aにかかる費用・手数料の目安は?
仲介会社に依頼する場合、着手金(数十万円〜)と成功報酬(成約時)が一般的です。成功報酬はレーマン方式(売却価格に応じた逓減型の料率)で計算されることが多く、例えば売却価格が数千万円規模の場合、成功報酬は数百万円程度になるケースもあります。
着手金や中間金の有無・成功報酬の料率はサービスによって異なります。契約前に手数料体系を書面で確認し、納得したうえで依頼することが大切です。疑問点がある場合は、M&Aセカンドオピニオンに無料で確認相談することもできます。
飲食店M&Aの事例(概要)

実際の飲食店M&Aがどのように行われているか、業界で報告されている事例の傾向を紹介します。
個人経営の居酒屋・バーの事業承継型M&A
後継者不在で引退を検討していた個人経営の居酒屋オーナーが、仲介会社を通じて飲食業への参入を希望する法人と成約するケースが多く見られます。長年の常連客・スタッフ・内装をそのままに、買い手が経営を引き継ぎます。売却対価は数百万〜数千万円程度となる事例も多く報告されていますが、実際の金額は収益性・立地・契約条件などによって大きく変動します。
複数店舗展開チェーンの企業買収型M&A
地方エリアで複数店舗を展開するラーメン店・カフェ・焼肉店などが、大手外食チェーンや食品企業に買収されるケースです。ブランドを維持したまま子会社化されるケースや、別ブランドへの転換を前提に買収されるケースなど、方針は様々です。EBITDAが一定規模以上の場合、数億円規模の取引になることもあります。
食品・異業種企業による飲食店買収
食品メーカーや農業法人が、流通チャネル確保や垂直統合を目的として飲食店を買収するケースも増えています。食材の安定的な販路確保や、製品ブランドの消費者接点として飲食店を活用する戦略です。
まとめ:飲食店M&Aを成功させるための第一歩

飲食店M&Aは、廃業という選択肢を回避しながら、長年育てたお店・スタッフ・ブランドを次世代に引き継ぐための有力な手段です。売り手オーナーにとっては、対価の獲得・雇用の維持・事業の存続という複数の目標を同時に達成できる可能性があります。
ただし、M&Aは複雑なプロセスを伴い、価格交渉・契約条件・税務処理など、専門知識が求められる場面が多数あります。「よくわからないまま進める」ことがリスクにつながります。
まずは、現状の事業価値の概算を把握すること、そして中立的な専門家に相談して情報格差を解消することが、成功への第一歩です。
M&Aについての疑問や不安がある方は、ぜひ一度、M&Aセカンドオピニオンへの無料相談をご活用ください。成約実績100件超の専門家が、売り手オーナーの立場に立ってアドバイスします。
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本記事の内容は、情報提供を目的としており、個別案件に関する具体的なアドバイスを提供するものではありません。M&Aの判断にあたっては、専門家への個別相談をお勧めします。
監修:森沢雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事)
