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M&A仲介に相見積もりは取れる?複数社比較の進め方とマナー

M&Aによる会社売却や事業承継を検討し始めた経営者の多くが、最初に直面するのが「どのM&A仲介会社に相談すればよいのか分からない」という悩みです。インターネットで検索すると、大手フルサービス型から業界特化型、オンラインのマッチングプラットフォームまで数多くの選択肢が表示され、手数料の表記も会社によって異なるため、比較の軸を持たないまま問い合わせをしてしまうケースも少なくありません。
M&A仲介会社の担当者は、成約に向けて誠実に業務を行っています。ただし仲介という業務の性質上、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る契約形態が一般的であり、契約形態や料金体系、対応領域によって、経営者が受けられるサポートの内容は大きく変わってきます。だからこそ、複数の仲介会社を並べて比較し、自社の状況に合った形態・料金体系・契約条件を見極めるプロセスが欠かせません。比較の軸をあらかじめ持っておくことで、営業トークに流されず、自社にとって本当に必要な条件を見極めやすくなります。
そこで本記事では、M&A仲介会社を比較する際に押さえておきたいタイプ別の特徴、料金体系のしくみ、契約形態の違い、そして比較検討で見落としがちなポイントまでを、売り手経営者の目線で整理して解説します。
M&A仲介会社以外も含めた相談先全体の比較については、以下の記事でも詳しく解説しています。

この記事の監修者

森沢 雄太
一般社団法人
M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
M&A仲介会社への相談が増えている背景

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、2025年の国内企業の後継者不在率は50.1%(前年比2.0ポイント改善)に上り、改善傾向が続いているものの依然として半数程度の企業が後継者未定の状態にあります。また同社が別途実施した経営者の年齢に関する調査(2024年)では、経営者の平均年齢が60.7歳まで上昇しており、高齢化が進む中で、親族内承継だけでなく第三者への譲渡(M&A)を選択肢に加える経営者が増えています。
こうした背景を受けて、中小企業庁は2025年8月5日に「中小M&A市場改革プラン」を公表し、中小企業のM&A支援体制の強化を進めています。M&Aに関する相談ニーズが高まる一方で、サービス内容や料金体系も多様化しているため、複数社を比較検討するプロセスがこれまで以上に重要になっています。
M&A仲介とは?FA(フィナンシャルアドバイザー)との違い

M&A仲介の役割と業務内容
M&A仲介とは、会社や事業を譲渡したい売り手企業と、譲り受けたい買い手企業の間に立ち、両者のマッチングから条件交渉、契約締結までのプロセスを支援するサービスです。中小企業庁が2024年8月30日に公表し、2025年1月1日から適用されている「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、M&A仲介者は譲渡側・譲受側の双方と契約を締結し、両当事者の間に立って合意形成を支援する存在として位置づけられています。同ガイドラインでは、仲介者・FAが契約締結前に書面で説明すべき事項が17項目にわたって明示されており、料金体系や利益相反リスクに関する情報開示がこれまでより具体的に求められるようになりました。
M&A仲介そのものの基礎知識については、M&A仲介の役割や業務内容で詳しく解説しています。
具体的な業務範囲は仲介会社によって幅がありますが、一般的には次のような支援を行います。
- 譲渡候補となる買い手企業の探索・打診(マッチング)
- 企業価値評価(バリュエーション)の実施
- ノンネームシート・IM(企業概要書)の作成
- 買い手候補との条件交渉の仲介
- デューデリジェンス(DD、買い手による対象企業の詳細調査)への対応支援
- 意向表明書(LOI)・基本合意書(MOU)・最終契約書(DA)の締結支援
このうちデューデリジェンスとは、買い手が対象企業の財務・法務・事業の実態を精査する調査のことで、この結果次第で条件が見直されることもあります。意向表明書(LOI)は買い手が「この条件で譲り受けたい」という意思を示す書面、基本合意書(MOU)は主要条件についておおむね合意したことを確認する書面で、価格や譲渡条件そのものについては法的拘束力を持たないのが一般的です。ただし秘密保持義務や独占交渉権など一部の条項には拘束力が生じる場合があるため、どの条項に拘束力があるのかを事前に確認しておくことが実務上重要です。最終的な契約内容はデューデリジェンスの結果を踏まえて最終契約書(DA)に落とし込まれ、表明保証(売り手が開示した情報の正確性を保証する条項)などの重要条件はここで法的に整理・合意されるのが一般的です。
FA(フィナンシャルアドバイザー)との違い
M&A仲介としばしば比較されるのが、FA(フィナンシャルアドバイザー)契約です。両者の最も大きな違いは「どちらの立場に立つか」にあります。
M&A仲介は、売り手・買い手の双方と契約を結び、中立的な立場で両者の合意形成を支援します。一方でFAは、売り手または買い手のどちらか一方とのみ契約し、契約した当事者の利益を重視する立場でアドバイスや交渉を行います。
M&A仲介はマッチングから成約までを1社で一気通貫にサポートできるスピード感がある一方、FAは契約者の意向に沿って交渉を進めやすい点が特徴です。どちらが適しているかは、譲渡条件の複雑さや、自社がどこまで交渉に時間をかけられるかによって変わってきます。
M&A仲介会社のタイプ別比較|自社に合う形態を見極める

M&A仲介会社と一口に言っても、事業モデルは一様ではありません。大きく分けると「大手フルサービス型」「業界・専門特化型」「マッチングプラットフォーム型」の3つに整理できます。
大手フルサービス型の特徴
上場企業を含む大手のM&A仲介会社は、業種を問わず中小規模から大型案件まで幅広い案件に対応し、企業価値評価から契約書作成の支援(最終的な契約書のドラフトや法務面の詳細なレビューは弁護士等の専門家と連携するのが一般的です)、クロージング後のPMI(統合プロセス)支援まで一気通貫でサポートする体制を持っていることが多いのが特徴です。全国に拠点を持ち、買い手候補のネットワークも広いため、案件によっては短期間で複数の買い手候補を提示できる場合があります。一方で案件数が多いために担当者1人あたりが抱える案件数も多くなりやすく、対応のスピードやきめ細かさは担当者の力量に左右される面があります。
業界・専門特化型の特徴
特定の業種(医療・介護、IT、建設、製造業など)や、特定の取引規模(小規模M&Aなど)に特化した仲介会社です。その業界特有の商習慣や評価のポイントを熟知しているため、業種によっては大手よりも精度の高いマッチングが期待できます。反面、対応できる業種や規模の範囲は限られるため、自社の業種・規模がその会社の得意領域と一致しているかどうかの見極めが重要になります。
マッチングプラットフォーム型の特徴
オンライン上で案件探索・打診ができるサービス形態が中心で、着手金や月額報酬が発生しない、あるいは低コストで利用できるケースが多く、費用を抑えたい場合の選択肢になります。運営会社によっては仲介・FA機能や各種支援を組み合わせて提供する場合もありますが、従来型の仲介会社に比べると交渉や契約書作成のサポートが手薄になりやすい傾向があり、専門家(弁護士・税理士等)への相談を自ら手配する必要が生じる場合があります。
M&A仲介会社の3つのタイプの特徴を整理すると、次のようになります。
| タイプ | 主な対応規模 | サポート範囲 | 費用感の傾向 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 大手フルサービス型 | 中小〜大型案件まで幅広く対応 | マッチングからPMIまで一気通貫(契約書は弁護士等と連携) | 中〜高(最低手数料が高めの傾向) | スピードと総合力を重視したい場合 |
| 業界・専門特化型 | 業種により様々 | マッチング〜契約支援が中心 | 中程度 | 特有の商習慣がある業種で精度を重視したい場合 |
| マッチングプラットフォーム型 | 小規模案件が中心 | マッチングが中心、交渉・契約支援は限定的な場合が多い | 低コストの傾向 | 費用を抑えつつ自ら主体的に動ける場合 |
※費用感はあくまで一般的な傾向であり、個々の会社・案件によって異なります。契約前に必ず見積もりと料金体系を確認してください。
M&A仲介会社を比較する際に見るべき8つのポイント

複数のM&A仲介会社を比較検討する際は、次の8つの視点で確認すると判断がぶれにくくなります。
- 自社と同じ業種・規模の取扱実績があるか
- 料金体系(着手金・中間金・成功報酬・最低手数料)の内訳が明確か
- 契約形態が専任契約か非専任契約か、テール条項の内容はどうか
- 実際に担当するアドバイザーの経験・専門性
- 上場・非上場という切り口だけで判断していないか
- 仲介という立場ゆえの利益相反リスクにどう向き合っているか
- クロージング後のPMI支援まで対応するか
- 1社だけでなく複数社を比較検討しているか
以下、それぞれの視点について詳しく見ていきます。
業種・規模の取扱実績を確認する
自社と同じ業種・同程度の規模の成約実績があるかどうかは、精度の高いマッチングが期待できるかを見極める重要な指標です。成約実績の件数だけでなく、どのような業種・規模の案件が中心かを確認しましょう。
料金体系の内訳を確認する
料金体系については後述しますが、着手金の有無、中間金の有無、成功報酬の算定方式、最低手数料の金額など、契約前に書面で提示してもらうことが重要です。中小M&Aガイドライン(第3版)でも、算定方法や最低手数料額に加え、レーマン方式の料率テーブルや買い手側手数料の総額、担当者の資格・成約実績など、契約締結前に書面で明示すべき事項が定められています。
契約形態を確認する
専任契約か非専任契約か、そしてテール条項の有無・期間についても必ず確認しましょう。詳細は後の章で解説します。
担当者の専門性を確認する
同じ仲介会社であっても、担当するアドバイザーの経験や専門性によって対応の質は変わります。初回の面談で、自社の業界や状況への理解度、質問への回答の的確さを見極めることが実務的なチェックポイントになります。
上場・非上場という切り口だけで判断しない
上場しているM&A仲介会社は情報開示の透明性や資金力の面で一定の安心材料になりますが、非上場の仲介会社にも特定業界に強みを持つ有力な会社が存在します。上場・非上場という切り口だけでなく、実績や担当者の専門性など複数の軸で比較することが大切です。
利益相反リスクへの向き合い方を確認する
M&A仲介は、中小企業のM&Aの実務において売り手・買い手の双方から手数料を受け取る契約形態が広く見られます(これに対しFAは、売り手・買い手のいずれか一方とのみ契約する点が異なります)。この構造自体は業界慣行として広く行われているものであり、それ自体が不誠実というわけではありません。ただし双方の間に立つ以上、条件面で完全に売り手側だけの利益を追求する立場ではないことは理解しておく必要があります。中小M&Aガイドライン(第3版)では、利益相反が生じうる場面について仲介者が依頼者にあらかじめ説明することが求められており、仲介会社がこのリスクについてどのように説明し、どのような社内体制で対応しているかも比較のポイントになります。
PMI支援まで対応するかを確認する
M&Aはクロージング(契約の実行・決済)で終わりではなく、その後の統合プロセス(PMI)が成約後の成果を左右します。PMI支援まで対応する仲介会社もあれば、クロージングまでで契約が終了する仲介会社もあるため、どこまでサポートが続くのかを確認しておきましょう。
複数社を比較検討する重要性
複数のM&A仲介会社を比較する過程で、条件や進め方に迷いが生じることもあるでしょう。そうした場面では、契約前の段階で利害関係のない第三者に意見を求めてみることも一つの選択肢です。比較検討そのものを焦らず進めることが、後悔のない意思決定につながります。
契約前に中立的な意見を聞きたい場合は、以下のセカンドオピニオンサービスの活用も選択肢の一つです。

M&A仲介会社の料金体系を比較する|レーマン方式のしくみ

M&A仲介会社を比較するうえで、経営者が最も気にする項目の一つが料金体系です。多くの仲介会社が採用している「レーマン方式」を中心に、比較の視点を整理します。
レーマン方式の基本的な考え方
レーマン方式とは、譲渡金額(またはそれに準じる基準額)を複数の階層に分け、階層ごとに異なる料率を掛けて合算する成功報酬の算定方法です。基準となる価額の決め方には主に2つの考え方があり、どちらを採用するかによって報酬額が変わってきます。
レーマン方式の仕組みについては、こちらでさらに詳しく解説しています。
| 算定方式 | 基準となる価額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 株価レーマン(譲渡対価レーマン) | 株式・事業の譲渡対価そのもの | 譲渡金額が基準になるためシンプルで分かりやすい |
| 移動総資産レーマン | 譲渡対価に負債総額を加えた額 | 負債が多い企業ほど基準額が大きくなり、報酬額も高くなりやすい |
中小M&Aガイドライン(第3版、中小企業庁)では、この基準となる価額の考え方によって報酬額が大きく変動しうるため、契約前に算定方法や報酬額の目安を確認しておくことの重要性が指摘されています。どちらの方式を採用しているかは、必ず契約前に確認しましょう。
一般的な料率区分の目安
中小M&A実務でよく見られる代表的な料率テーブルの一例を示すと、次のようになります。
| 基準となる価額の階層 | 料率の目安 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5%程度 |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4%程度 |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3%程度 |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2%程度 |
| 100億円超の部分 | 1%程度 |
※上記はあくまで業界で広く見られる代表的な目安であり、実際の料率・基準額は仲介会社ごとに異なります。中小企業のM&Aでは譲渡金額が数千万円〜数億円規模のケースも多く、その場合は次に説明する「最低手数料」が実質的な負担額になることが少なくありません。なお、M&A支援機関登録制度に登録している支援機関は、制度のホームページ(データベース)上で自社の手数料体系を公表することが求められているため、契約検討先の実際の料率テーブルはこうした公的な情報源や各社サイトで確認することができます。
着手金・中間金・最低手数料の有無
料金体系を比較する際は、成功報酬の料率だけでなく、次の項目も併せて確認する必要があります。
- 着手金:契約締結時に発生する費用(成約有無にかかわらず発生する)
- 中間金:基本合意書(MOU)締結時などに発生する費用
- 最低手数料:譲渡金額が小さい案件でも保証される最低限の報酬額
着手金・中間金が無料の完全成功報酬型の仲介会社もあれば、着手金・中間金を設定している仲介会社もあります。完全成功報酬型は初期費用を抑えられる一方、最低手数料が相対的に高めに設定されているケースもあるため、総額でどの程度の負担になるかをシミュレーションしたうえで比較することが大切です。
契約形態の比較|専任契約と非専任契約、テール条項

専任契約と非専任契約の違い
M&A仲介会社との契約形態には、大きく分けて「専任契約」と「非専任契約」があります。
専任契約は、1社の仲介会社にのみ独占的に業務を依頼する契約形態です。仲介会社側も一定の労力・コストをかけて案件に取り組みやすくなるため、サポートが手厚くなりやすい一方、他社に並行して依頼することはできません。
非専任契約は、複数の仲介会社に同時に依頼できる契約形態です。より多くの買い手候補にアプローチできる可能性がある一方、契約する仲介会社の方針によっては、専任契約に比べて対応の優先度やサポートの手厚さに違いが出ると指摘されることもあります。
| 契約形態 | 依頼できる社数 | サポートの傾向 | 買い手候補の広がり |
|---|---|---|---|
| 専任契約 | 1社のみ | 手厚くなりやすい | 1社のネットワークに限定される |
| 非専任契約 | 複数社可 | 会社の方針により差が出ることがある | 複数社のネットワークを活用できる |
テール条項という見落としがちな契約条件
契約形態を比較する際に見落とされがちなのが「テール条項」です。テール条項とは、契約期間が満了するなどして仲介会社との契約が終了した後も、一定期間(テール期間)内に、その仲介会社から紹介された相手先と成約した場合には、成功報酬の支払い義務が生じるという契約条項です。
専任契約に関連する専任条項(ロックアップ)の解除方法や注意点についても、あわせて確認しておくと安心です。
中小M&Aガイドラインでは、テール期間は長くても2〜3年以内を目安とし、対象となる相手先も「ネームクリア(社名開示)を経て紹介された譲受企業」に限定することが望ましいとされています。同ガイドラインは法律ではなく、登録支援機関の遵守宣言に基づく運用上の指針という性格を持ちますが、契約書にテール条項が含まれているか、期間や対象範囲がどう定められているかは、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。
M&A仲介を利用するメリット

M&A仲介会社を利用することで、売り手経営者には次のようなメリットがあります。
専門知識に基づくアドバイスを受けられる
企業価値評価、契約書の内容、税務上の留意点など、M&Aには専門的な知識が求められる場面が多くあります。仲介会社を利用することで、経営者が本業に集中しながら、専門家のサポートを受けて手続きを進めることができます。
買い手候補との接点を効率的に得られる
自社だけで買い手候補を探すのは容易ではありません。仲介会社は独自のネットワークを持っており、経営者が直接アプローチしづらい候補先とも接点を持つことができます。
交渉や事務手続きの負担を軽減できる
条件交渉、資料作成、スケジュール調整など、M&Aには多くの実務が発生します。仲介会社がこれらを支援することで、経営者の負担を軽減し、M&Aのプロセスを円滑に進めやすくなります。
M&A仲介を利用する際の注意点

一方で、M&A仲介会社を利用する際には、あらかじめ理解しておきたい注意点もあります。
手数料の負担
仲介会社を利用する以上、成功報酬をはじめとする手数料の負担は避けられません。特に譲渡金額が小さい案件では、最低手数料が実質的な負担割合を押し上げる場合があるため、事前のシミュレーションが重要です。
担当者の力量による差
同じ仲介会社であっても、担当するアドバイザーの経験や専門性によって対応の質には差が出ます。契約後に担当者を変更できるかどうかも、事前に確認しておくとよいでしょう。
利益相反構造への理解
前述のとおり、M&A仲介は売り手・買い手の双方から手数料を受け取る契約形態が広く見られます。これは業界慣行として広く行われているものであり、それ自体が不誠実というわけではありません。ただし双方の間に立つ立場である以上、提示された条件が本当に自社にとって妥当なものかどうかを、経営者自身が判断する視点を持つことは大切です。
M&A仲介の利益相反構造については、こちらでも詳しく解説しています。
M&A仲介会社の担当者は、成約に向けて誠実に業務を行っています。そのうえで、提示された条件の妥当性について不安が残る場合には、契約や交渉を進める前に、利害関係のない中立的な立場から意見を聞いておくことで、判断材料を増やすことができます。
提示された条件が自社にとって妥当かどうか判断に迷う場合は、無料のセカンドオピニオンで中立的な視点を確認してみませんか。
上場・非上場のM&A仲介会社を比較する視点

M&A仲介会社を比較する切り口として、上場・非上場という軸もよく取り上げられます。それぞれの特徴を理解したうえで、実績や専門性など他の軸と併せて判断することが重要です。
上場しているM&A仲介会社の特徴
上場企業は有価証券報告書などで財務状況や事業実績を開示する義務があるため、情報の透明性が高いという特徴があります。また資金力があるため、大型案件への対応力や、全国的な拠点網の維持がしやすい傾向もあります。
非上場のM&A仲介会社の特徴
非上場の仲介会社の中には、特定の業種や地域に強みを持つ会社が数多く存在します。情報開示の範囲は上場企業に比べて限られますが、規模の大小にかかわらず実績や専門性の高い会社は多く、上場・非上場だけで優劣を判断することは適切ではありません。
上場・非上場という切り口はあくまで比較の一つの視点にすぎず、自社の業種・規模との適合性や、担当者の専門性といった他の視点と組み合わせて総合的に判断することが望まれます。
業種・企業規模別に見るM&A仲介会社の選び方

M&A仲介会社を比較する際は、自社の業種・規模に応じて重視すべきポイントも変わってきます。
| 自社の状況 | 比較の際に重視したい視点 |
|---|---|
| 特定業種(医療・介護、IT、建設など)に該当する | その業種の取扱実績・専門知識の有無 |
| 譲渡金額が数千万円規模の小規模案件 | 最低手数料の水準、着手金の有無 |
| 譲渡金額が数億円以上の中堅規模案件 | 買い手候補ネットワークの広さ、大型案件の対応実績 |
| 後継者不在による事業承継が主目的 | 事業承継・引継ぎ支援センター等の公的支援機関との連携実績 |
| 複数事業・複数拠点を持つ企業 | PMI(統合プロセス)支援までの対応範囲 |
自社がどのカテゴリーに近いかを整理したうえで、該当する仲介会社を絞り込み、複数社を比較検討することが、ミスマッチを避けるための実務的なアプローチです。
なお、後継者不在で事業承継を検討している場合は、中小企業庁が所管し、各都道府県の商工会議所等が運営する形で全国47都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターのような公的機関に、民間の仲介会社に相談する前の情報収集として問い合わせてみる方法もあります。
M&A仲介会社選びで失敗しないためのチェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、複数のM&A仲介会社を比較する際にそのまま使えるチェックリストをまとめました。初回相談前・契約前の確認にご活用ください。
- 自社と同じ業種・規模の成約実績を確認したか
- 料金体系(着手金・中間金・成功報酬・最低手数料)を書面で提示してもらったか
- レーマン方式の基準となる価額(譲渡対価か移動総資産か)を確認したか
- 契約形態が専任か非専任か理解したか
- テール条項の有無・期間・対象範囲を確認したか
- 実際に担当するアドバイザーと面談し、専門性を確認したか
- 契約後に担当者変更が可能かを確認したか
- クロージング後のPMI支援の有無を確認したか
- 複数社を比較検討したうえで契約先を決めているか
- 条件の妥当性について、必要に応じて中立的な第三者の意見も検討したか
M&A仲介会社の比較に関するよくある質問
Q1. M&A仲介会社は何社くらい比較すればよいですか?
明確な正解はありませんが、実務上は2〜3社程度に相談し、料金体系・担当者の対応・提案内容を比較したうえで契約先を絞り込むケースが多く見られます。ただし非専任契約で複数社に同時依頼する場合は、情報管理の煩雑さも考慮する必要があります。
Q2. 仲介とFAはどちらを選ぶべきですか?
自社の状況によります。スピード感を重視し、マッチングから成約まで一気通貫でサポートしてほしい場合は仲介、譲渡条件の交渉に重点を置き、契約した当事者の意向に沿って進めるアドバイザーを求める場合はFAが選択肢になります。判断に迷う場合は、双方の違いを説明してもらったうえで検討するとよいでしょう。
Q3. 相見積もりを取ることは失礼にあたりますか?
M&A仲介会社との契約は専門家への業務委託契約であり、複数社から見積もりや提案内容を比較検討することは一般的な実務です。多くの仲介会社は初回相談・見積もりを無料としているため、比較検討そのものを遠慮する必要はありません。
Q4. 手数料が安い仲介会社を選べば十分ですか?
手数料の水準は比較の重要な要素の一つですが、それだけで判断するのはリスクがあります。料金が低い分、サポート範囲が限定的であったり、担当者1人あたりの案件数が多く対応が手薄になったりするケースもあるため、料金とサポート内容のバランスで判断することが大切です。
Q5. 契約後に仲介会社を変更することはできますか?
契約形態や契約書の内容によります。専任契約の場合、契約期間中の解約には条件が定められていることが一般的で、テール条項が適用される場合もあります。変更を検討する際は、まず契約書の解約条項・テール条項を確認し、必要であれば専門家に相談することをおすすめします。
Q6. 仲介会社が提示した企業価値評価額は妥当なのでしょうか?
企業価値評価には複数の手法(DCF法、EBITDAマルチプル、純資産法〈時価純資産法・簿価純資産法など〉、年買法など)があり、どの手法を用いるか、どのような前提条件を置くかによって評価額には幅が生じます。特に年買法は、中小M&Aの実務で広く参照される簡便的な評価方法であり、DCF法のような理論的な評価手法とは性質が異なる点を理解しておくとよいでしょう。提示された評価額の算定根拠を確認し、疑問があれば説明を求めることが大切です。判断に迷う場合は、契約前の段階で中立的な第三者に評価の考え方を確認してみるのも一つの方法です。
Q7. 初回相談では何を確認しておくとよいですか?
初回相談では、自社と類似した業種・規模の成約実績、想定される料金体系(着手金・中間金・成功報酬・最低手数料)、契約形態(専任・非専任)、そして担当予定のアドバイザーの経験について確認しておくと、その後の比較がしやすくなります。複数社に同じ質問をすることで、回答の違いから各社の特徴や強みが見えてきます。
まとめ|比較検討のプロセスに、中立的な視点を1つ加える
M&A仲介会社の比較では、タイプ別の特徴、料金体系(レーマン方式の算定方式や料率、着手金・最低手数料の有無)、契約形態(専任・非専任、テール条項)、担当者の専門性など、複数の視点を組み合わせて検討することが欠かせません。上場・非上場や知名度だけで判断せず、自社の業種・規模に合った実績があるかどうかを軸に、複数社を比較する姿勢が、後悔のない選択につながります。1社だけの説明を鵜呑みにするのではなく、比較の物差しを自分の中に持っておくことが、経営者にとって最も現実的な自衛策になります。
M&A仲介会社の担当者は成約に向けて誠実にサポートを行いますが、双方の間に立つ仲介という立場上、提示された条件の妥当性を最終的に判断するのは、ほかならぬ経営者自身です。比較検討を進める中で、契約前の条件や進め方について第三者の視点も確認しておきたいと感じた際は、成功報酬なしで中立的な立場から意見を聞ける場を活用する方法もあります。
M&A仲介会社との契約や条件について、契約前に無料のセカンドオピニオンで確認してみませんか。
監修者
森沢雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事) 日本M&Aセンター出身。M&A成約実績100件超。中小企業の事業承継・M&Aにおけるセカンドオピニオンを通じて、売り手経営者の意思決定を中立的な立場からサポートしている。