M&Aの専任条項(ロックアップ)とは?解除方法と注意点

M&A専任条項とは何か・契約解除の手続きと注意点を解説

M&Aの仲介会社やFAとアドバイザリー契約を結んだあと、「担当者とまったく連絡がとれない」「何ヶ月経っても買い手が見つからない」「このまま契約を続けていいのか不安になってきた」——そうした状況で、初めて契約書の中の「専任条項」という文言を意識し始める経営者は少なくありません。

M&Aの仲介・アドバイザリー契約には、一般的な業務委託契約にはない独自の条項が複数含まれています。専任条項はそのひとつであり、契約の拘束力や解除の可否、費用の発生条件を大きく左右する重要な規定です。しかし、契約締結時にその内容を十分に確認しないまま署名してしまう経営者が後を絶たないのが現状です。

そこで本記事では、M&A専任条項の定義と典型的な契約上の内容から、専任契約を解除したい場合の手続き・留意点、テール条項との関係、違約金リスクの見極め方、さらに中小企業庁が推奨するセカンドオピニオンの活用まで、売り手経営者が実際に直面する場面を想定して整理します。現在進行中のM&Aで契約解除を検討している方にとって、具体的な判断材料となるよう解説します。


目次

M&A専任条項とは何か


M&A専任条項の定義と専任契約・非専任契約の違いを解説

仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)との契約書には「専任条項」と呼ばれる条文が設けられることが一般的です。このセクションでは、専任条項の定義と目的、そして専任契約と非専任契約の実務的な違いを整理します。

M&A相談先の選び方や比較については、以下の記事でまとめています。

専任条項の定義と目的

専任条項とは、M&Aに関する業務を依頼した仲介会社・FA以外の第三者(他の仲介会社、証券会社、金融機関等)に重複して依頼してはならないことを定めた契約条文です。つまり、「このM&A案件の支援を、契約した会社にのみ独占的に委託する」という拘束力を発生させるものです。

仲介会社・FA側の観点からは、専任条項を設けることで、時間・人員・費用を投じて買い手候補の探索や交渉のサポートを行った結果、土壇場で他社経由の成約に持っていかれるリスクを回避できます。一方、売り手側の視点では、1社への集中依頼とひきかえに、より密度の高いサポートを受けやすいという側面もあります。

ただし、専任条項はその設計次第で、売り手経営者の選択肢を著しく制約する条件になり得ます。特に、契約期間が長い・中途解除条件が厳しい・違約金額が大きい、といった内容が重なると、サービスに不満があっても身動きがとれない状況になりかねません。

専任契約と非専任契約の違い

M&Aの仲介・アドバイザリー契約の「専任性」は、大きく3つの形態に分かれます。

契約形態内容特徴
専属専任契約契約した1社以外への依頼が完全に禁止。自ら見つけた買い手との直接交渉も不可とするケースがある拘束力が最も強い。仲介会社側のサポートが手厚くなりやすい反面、売り手の自由度が最も低い
専任契約契約した1社以外への依頼を禁止するが、自ら見つけた買い手との直接交渉は認める場合もある専属専任より若干自由度が高いが、実質的な拘束力は大きい
非専任契約(一般媒介)複数の仲介会社・FAへの並行依頼が可能選択肢が広がる一方、各社のサポートの優先度が下がりやすい

不動産仲介では宅建業法によって媒介契約の類型が法定されていますが、M&Aの仲介・アドバイザリー契約には同様の法的区分は存在しません。上記の3形態はあくまで実務上の分類であり、各社の契約書の文言や設計によって内容が異なります。中小M&Aの実務では、仲介会社・FA側から専任または専属専任契約を求められるケースが多く、その内容を精査せずに署名してしまう事例が報告されています。

中小企業庁が2024年8月に公表した「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、専任条項の設定に関する留意点が明記されており、契約締結前の内容確認の重要性が業界全体で共有されています。同ガイドラインは法令ではなく業界の行動指針ですが、中小企業庁が運営するM&A支援機関登録制度に登録する事業者はその遵守を宣言することが求められており、2025年1月1日から新たな規律として運用されています。

M&A仲介契約における専任条項の典型的な内容

専任条項の典型的な文言としては、以下のような内容が契約書に記載されます。

  • 本契約の有効期間中、依頼者(売り手)は本件M&Aに関する業務を第三者に依頼してはならない
  • 契約相手方以外の者を通じて買い手候補と交渉してはならない
  • 違反した場合、成功報酬相当額または所定の違約金を支払う義務を負う

なお、「専任条項」とは別に、「直接交渉の制限(直接交渉禁止条項)」という条項が設けられることがあります。専任条項が「他の支援機関への依頼の禁止」を定めるのに対し、直接交渉禁止条項は「依頼者が自ら候補先を発見すること」や「依頼者自身が発見した候補先と直接交渉すること」を制限するものです。中小M&Aガイドライン(第3版)では、直接交渉の制限については仲介契約・FA契約が終了するまでを有効期間とすべきとされており、専任条項とは別に確認が必要な事項です。

契約期間については、6ヶ月〜1年程度が実務上の目安とされており、中小M&Aガイドライン(第3版)においても「専任条項を設ける場合の契約期間は最長でも6ヶ月〜1年以内を目安とする」ことが行動指針として示されています。ただし、自動更新条項が付いているケースも多く、実質的に複数年にわたって拘束が続く場合があります。


専任条項が問題となる背景

M&A仲介における利益相反の構造についてはM&A仲介の利益相反とは?売り手が知るべき構造的リスク、仲介会社とのトラブル事例についてはM&A仲介でよくあるトラブルとは?もあわせてご覧ください。

M&A専任条項が問題となる背景・両手取引と情報格差の構造

専任条項それ自体は不当な条件ではありませんが、近年、専任条項をめぐるトラブルが中小M&Aの現場で増加しています。その背景を理解しておくことは、自社の状況を正確に把握するうえで重要です。

両手取引の構造的特性

仲介方式のM&Aでは、仲介会社が売り手・買い手の双方から手数料を受け取る「両手取引」が中小M&Aの現場で広く採用されてきました。近年はFA(フィナンシャル・アドバイザー)方式や片手型モデルを採用する支援機関も増えつつありますが、FA方式では売り手または買い手の一方のみを代理するのに対し、仲介方式の場合は当事者双方の意向を調整する立場に立ちます。

この構造において、専任条項によって売り手の選択肢が制限されると、売り手側は取引条件への交渉力が弱まりやすい状況に置かれます。特に、成約価格や契約条件の妥当性を第三者視点で検証する機会が失われると、情報格差が生じやすくなります。

中小M&Aにおける情報格差

中小企業の経営者にとって、M&Aは多くの場合、初めて経験する非日常的なプロセスです。仲介会社の提示する価格の妥当性や契約条件の適切さを、専門知識なしに自力で判断することは容易ではありません。

この情報格差が大きいほど、専任条項によって選択肢を絞られたときに判断の余地が狭まります。「専任だから他に相談できない」と思い込み、不利な条件のまま交渉が進んでしまうケースは、こうした構造的な情報の非対称性を背景にしています。

なお、後述するように、中小企業庁はこうした状況に対して「セカンドオピニオンの活用」を明確に推奨しています。


専任契約を解除できるのか

M&A専任契約を解除できるケースと判断基準

「今の仲介会社に不満があり、別の専門家に相談したい」「サポートの質に疑問を感じている」——こうした状況で多くの経営者が直面するのが、「専任契約は本当に解除できるのか」という問いです。

解除が可能な状況の判断基準

専任契約の解除可否は、第一に契約書の記載内容によります。多くの仲介・FA契約には中途解除条項が設けられており、「◯ヶ月前の書面通知により解除可能」とする規定や、「一定の要件を満たす場合に解除可能」とする条件が記載されています。

ただし、解除に際して以下の点が論点になることが多いです。

中途解約金・違約金の発生有無:契約を途中解除した場合に所定の金額を支払う義務があるか、あるとすればどの程度の金額か。

催告・通知の形式要件:口頭ではなく書面(内容証明郵便等)による通知が必要かどうか。

テール条項の適用範囲:解除後も一定期間、当該仲介会社が紹介した買い手候補との成約に対して手数料が発生するかどうか。

専任条項が無効または解除可能となりうるケース

契約書に解除条項がある場合に加え、法的観点から一定の条件下では専任条項や中途解約金条項が無効・一部無効と判断される可能性があります。弁護士による解説や裁判例の傾向から、以下のような状況が問題となりうることが知られています。

違約金・中途解約金が著しく過大な場合:成約していない段階で、成功報酬相当額(レーマン方式で算定される相場では取引金額に応じて数百万円〜数千万円に達することもある)に近い金額の違約金を課すことが、公序良俗違反や信義則違反として争われたケースがあります。

実質的な「囲い込み」と評価される場合:契約期間が極端に長く、かつ中途解除条件が実質的に不可能に近い形で設定されており、買い手候補を積極的に紹介する義務も曖昧なまま、売り手を長期間拘束するような設計の場合、合理性を欠く制限として問題視される可能性があります。

その他の法的観点:独占禁止法上の不公正な取引方法や、民法上の信義則・公序良俗に反する条項として問題となりうるケースも個別の状況次第で存在します。いずれにせよ、法的な判断は個別の事情に大きく依存します。

ただし、専任条項の有効性に関する判断は、個別の契約内容・状況・交渉経緯など多くの要素によって異なります。「解除できる」「条項が無効だ」と自己判断することには慎重を要し、弁護士等の専門家に相談のうえ判断することが重要です。


専任契約解除の手続きの進め方

M&A専任契約解除の手続きステップと進め方

現在締結中の専任契約を解除したい場合、実務上の手順を正しく踏むことで、不要なトラブルを回避できます。

ステップ1:契約書の内容を精査する

まず、締結済みの仲介・FA契約書を手元に用意し、以下の条項を中心に内容を整理します。

  • 契約期間と自動更新の有無
  • 中途解除条項(解除の要件・手続き・通知方法)
  • 中途解約金または違約金の有無・計算方法
  • テール条項(契約終了後の成功報酬発生条件・期間・対象範囲)
  • 専任の対象範囲(どの買い手候補への接触が禁止されているか)

これらを把握していない状態で仲介会社に解除を申し出ると、不必要な費用を請求されたり、交渉上不利な立場に置かれる可能性があります。

ステップ2:弁護士・専門家に相談する

契約書の確認が終わったら、弁護士やM&Aに詳しい第三者専門家に内容を確認してもらうことを強くお勧めします。特に以下の点について専門的な判断が必要です。

  • 中途解約金・違約金の金額が法的に問題のない水準か
  • テール条項の適用範囲が合理的な範囲内に収まっているか
  • 解除の手続き上の瑕疵がないか

この段階で、M&Aセカンドオピニオンを活用することも有効な選択肢です。現在進行中のM&Aプロセスについて、成功報酬なしの中立的な立場から意見をもらうことで、今後の方針を冷静に判断する材料が得られます。M&Aインサイトでは、仲介契約の解除を検討している経営者からの無料相談を受け付けています。

ステップ3:仲介会社への通知書を送付する

解除の意思を固めた場合、口頭ではなく書面で通知することが原則です。トラブルを防ぐうえで、通知書は内容証明郵便で送付することが一般的です。

通知書には次の内容を明記します。

  • 解除の意思表示と解除日(または解除を申し出る日)
  • 解除の理由(任意だが、記載しておくことが望ましい)
  • 今後の費用・手数料の取り扱いについての確認依頼

この段階で弁護士に書面の作成・送付を依頼することで、後日のトラブルリスクが低下します。

ステップ4:テール条項対象企業のリストを確定させる

解除後もテール条項の適用が残る場合、「対象となる買い手候補企業はどこか」を明示的に確認・記録しておくことが非常に重要です。

中小M&Aガイドライン(第3版)でも示されているとおり、テール条項の対象はネームクリア(買い手候補の社名を売り手に開示した段階)が行われ、売り手に紹介された企業に限定されるべきものです。ロングリストやノンネームシートの提示にとどまる段階では、テール条項の対象とすべきではないという考え方が示されています(中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月公表)。


テール条項の仕組みとリスク

M&A仲介トラブルの具体的な事例については、M&A仲介でよくあるトラブルとは?売り手が知っておくべき原因・事例・対策を徹底解説でくわしく解説しています。

M&Aテール条項の仕組みと契約解除後のリスク

テール条項はM&Aの仲介・FA契約に独自の条項であり、専任条項と密接に関連します。契約解除後のリスクを正しく把握するために、テール条項の内容を理解しておくことが不可欠です。

テール条項とは

テール条項とは、M&Aの仲介・FA契約が終了(満了・解除・解約を問わず)した後も、一定の期間(「テール期間」)内に当該仲介会社が関与・紹介した買い手候補との間でM&Aが成約した場合、仲介会社に対して成功報酬を支払う義務が生じるという規定です。

テール条項が設けられる合理的な理由は、「仲介会社が多大な労力をかけてマッチングを進めた結果、契約満了直前に成約を遅らせ、契約終了後に手数料支払いを免れるような不公正な行動」を防ぐことにあります。

テール期間の目安

中小M&Aガイドライン(第3版)では、テール期間については「最長でも2〜3年以内を目安とする」という考え方が示されています。ただし、個々の契約によって1年〜3年程度の幅があるのが現状です。

テール期間が異常に長かったり、対象企業の範囲が「一覧表に記載された企業すべて」といった曖昧な設定になっている場合は、合理的な水準を超えた拘束条件として交渉・見直しを求めることが考えられます。

テール条項に関するトラブルの典型パターン

実務上よく見られるトラブルのパターンとして、以下のケースが挙げられます。

契約終了後に独自に見つけた買い手との成約に対して手数料を請求されるケース:テール条項の対象範囲を「仲介会社が関与・接触したすべての企業」と広く解釈されてしまい、仲介会社の実質的な関与なしに自力で見つけた買い手との成約にも手数料を請求されるというトラブルです。

複数社と並行して交渉していた場合に重複請求が生じるケース:専任条項がない場合、複数の仲介会社に並行依頼していると、テール条項の範囲が重複し、複数社から手数料を請求されるリスクがあります。

テール期間が長く、事業承継計画全体に影響が出るケース:テール期間が3年以上に設定されているケースでは、新しい仲介会社に依頼してM&Aを再スタートしようとしても、実質的に旧仲介会社の紹介先に触れることが難しくなる場合があります。


契約解除における違約金リスクの見極め方

M&A専任契約解除における違約金リスクの見極め方と対応

「解除したいが、違約金をいくら請求されるかわからない」という不安を抱える経営者は多くいます。事前に違約金の仕組みを把握しておくことで、解除の判断をより冷静に下せるようになります。

違約金・中途解約金の一般的な設定水準

M&Aの仲介・FA契約における中途解約金・違約金の設定は、会社によって異なりますが、一般的には以下のような形が見られます。

種類概要
着手金相当額の返還不要成約なしに解除した場合、既払いの着手金は返還されない(本来の業務報酬として留保される)
中途解約金(定額)契約書に定額の中途解約金が設定されているケース
成功報酬の一定割合成約金額(または想定成約金額)に基づくレーマン方式で算出される成功報酬額の一定割合

成功報酬の計算方式として広く使われるレーマン方式は、取引金額に対して段階的な料率(例:5%〜1%程度)を乗じる方法で、各社の料率テーブルや最低報酬の設定によって実際の金額は大きく異なります。また、最低報酬が設定されているケースでは、取引規模に関わらず一定額以上の支払いが発生する場合があります。具体的な金額水準は契約書に記載の条件を確認してください。

成約していない段階でこれに近い金額の違約金を課すことが合理的かどうかは、個別の状況を弁護士に確認することが不可欠です。

違約金が過大・不当と考えられる場合の対応

契約書に記載された違約金条項の金額が著しく高額であったり、条件設定が不合理と判断されるケースでは、専門家を通じた交渉・減額協議の余地があります。

一般論として、違約金条項は当事者間の合意に基づいていれば有効ですが、その金額が実損補填の観点から著しく不均衡な場合には、司法の場で減額の余地が議論されることがあります(民法上の損害賠償額の予定に関する議論等)。ただし、M&A仲介契約に限定した判例の蓄積は限定的であり、個別の判断は必ず弁護士に相談のうえ進めてください。


専任契約の締結前に確認すべきチェックリスト

契約段階での確認事項については、M&Aの基本合意書(MOU)とは?締結タイミング・記載内容・注意点を徹底解説M&A契約書とは?種類・内容・作成の注意点を売り手経営者向けに徹底解説もご参照ください。

M&A専任契約締結前に確認すべき重要チェックリスト

これから仲介・FA契約の締結を検討している経営者、または現在の契約内容を見直したい経営者のために、確認すべき事項をまとめます。

契約締結前・締結時の確認事項

  • 専任・非専任の区別と、自ら見つけた買い手との直接交渉の可否が明記されているか
  • 契約期間(開始日・終了日・自動更新の有無・更新条件)が明確か
  • 中途解除の手続き(通知方法・通知期間)が具体的に規定されているか
  • 中途解約金・違約金の金額または計算方法が明示されているか
  • テール条項の存在・テール期間・対象となる買い手候補の範囲が明確か
  • 仲介会社・FAの具体的な業務範囲・業務内容が契約書に明記されているか
  • 成功報酬の計算方式(レーマン方式の料率テーブル・最低報酬額等)が開示されているか
  • 着手金・月額報酬(リテイナーフィー)・中間金の有無と金額が明記されているか
  • 秘密保持義務の範囲(自社情報の取り扱い方針)が適切か
  • 担当者の氏名・保有資格・経験年数・成約実績が事前に説明されているか(中小M&Aガイドライン第3版で仲介会社・FAへの説明が求められている事項)
  • 契約内容について、弁護士や中立的な第三者専門家に確認したか

中小M&Aガイドライン(第3版)では、仲介会社・FAが契約締結前に書面を交付して説明すべき事項として17項目が列挙されています(同ガイドラインは法令ではなく業界の行動指針であり、M&A支援機関登録制度の登録機関はその遵守を宣言することが求められています)。この説明が充足されているかを確認することも、信頼できる支援機関を選ぶ重要な基準のひとつです(中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月公表)。


専任契約中でもセカンドオピニオンは取得できるか


M&A専任契約中のセカンドオピニオン取得方法と活用ポイント

「専任契約を結んでいるから、他に相談するのは契約違反になるのでは?」——多くの経営者が抱くこの疑問に、正面から答えます。

M&Aセカンドオピニオンの詳細については、以下の記事で解説しています。

セカンドオピニオンは守秘義務違反になりにくい

現在進行中のM&Aについて第三者専門家にセカンドオピニオンを求めることは、一般的には専任条項や守秘義務条項に違反するとは考えられにくいです。ただし、契約内容によっては情報提供の制限や相談先を限定するような条項が設けられているケースもあるため、事前に自社の契約書を確認することが必要です。

一般的な理解の根拠として2点が挙げられます。第一に、仲介会社との専任条項は「M&Aに関する業務を他社に依頼すること」を禁じるものであり、第三者に意見・助言を求めること自体を禁じるものではない場合がほとんどです。第二に、守秘義務条項は「自社の機密情報を外部に開示すること」を制限するものですが、相談先の専門家にNDA(秘密保持契約)を締結してもらったうえで相談するなど、情報管理に配慮して相談することが一般的です。

実際、中小企業庁が公表した中小M&Aガイドライン(第3版)においても、登録支援機関が専任条項を設ける場合に合理的な理由がない限りセカンドオピニオンの取得を妨げないことが望ましい旨が行動指針として示されており、売り手がM&Aセカンドオピニオンを活用することを推奨しています(中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月公表)。

セカンドオピニオンで確認できること

仲介会社との専任契約中にセカンドオピニオンを活用することで、以下のような点について中立的な見解を得ることができます。

企業価値・売却価格の妥当性:現在提示されている買い手候補の条件や価格水準が、客観的に見て適切な範囲内にあるかどうかを、第三者視点で確認できます。DCF法・EBITDAマルチプル・純資産法・年買法など複数の評価手法を踏まえた相場感の確認が可能です。

契約条件の適切さ:表明保証の範囲、競業避止義務の期間・範囲、ロックアップ期間の妥当性、個人保証・経営者保証の取り扱いなど、最終契約(DA)の内容について中立的な意見を得られます。

専任契約の解除の妥当性:現在の仲介会社のパフォーマンスや契約条件を踏まえて、解除を検討すべきかどうかの判断材料を得られます。

このような判断が必要な場面で、中立的な第三者に確認したいと感じたら、M&Aインサイトの無料セカンドオピニオン相談をご活用ください(完全無料・成功報酬なし)。

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専任契約を解除しない場合に取れる実務的対応

M&A専任契約を解除しない場合の実務的な対応策

専任契約の解除を検討しているものの、違約金やテール条項のリスクを考えると踏み切れない——そうしたケースでも、現状を打開するための実務的な手段はあります。

仲介会社に対して業務改善を申し入れる

担当者との連絡が途絶えている、買い手候補の紹介件数が著しく少ない、といった状況では、まず文書(メール・書面)で業務改善を正式に申し入れることが一つの選択肢です。口頭での申し入れと違い、書面による記録を残すことで、後日、解除の正当事由を示す証拠として機能することがあります。

申し入れの内容としては、「現在の担当者の対応状況についての改善要求」「買い手候補の提示ペース・内容についての具体的な要望」「定期報告の頻度・形式の確認」などが挙げられます。

契約の範囲内で第三者の意見を取得する

専任条項の範囲内で許容される行動として、仲介会社から提示された買い手候補・条件・価格について、独立した専門家(税理士・弁護士・M&Aセカンドオピニオン機関)に中立的な評価を求めることは可能です。

現在提示されている条件が市場相場として妥当かどうか、デューデリジェンスの内容は適切かどうか、最終契約書のリスク条項に見落としがないかどうか——これらを第三者に確認することは、専任条項に抵触せずに実施できる重要な自衛策です。

契約の更新タイミングを活用する

自動更新条項がある場合は、更新時期に先立って内容の見直し交渉を行うことが有効な選択肢になります。更新を迎える前であれば、「条件変更を受け入れてもらえなければ更新しない」という立場から交渉力を発揮しやすくなります。

更新時に見直しを求めるべき条件の候補としては、テール期間の短縮・テール対象企業の明確化・中途解約金額の変更・担当者の交代要請などが挙げられます。


専任条項に関するよくある質問

M&A専任条項・専任契約に関するよくある質問と回答

Q1. 専任条項が設定されている期間に、他の仲介会社に相談すると必ず違約金が発生しますか?

一般的な専任条項では、単なる意見・助言を求める「相談」のみで直ちに違約金が発生するケースは多くありませんが、契約内容によって判断が変わります。専任条項が禁じているのは通常「M&Aに関する業務を他社に依頼すること」ですが、どこまでが「依頼」に該当するかは契約書の文言次第です。他社と新たに仲介契約を締結したり、他社を通じて買い手候補と交渉に入った場合には契約違反と判断される可能性が高くなります。契約書の文言と個別の状況を弁護士に確認することを推奨します。

Q2. 仲介会社のサービスに不満がある場合、それだけで専任契約を解除できますか?

サービスへの不満それ自体は、直ちに違約金なしの解除根拠にはなりません。法的には、契約書に定められた解除事由に該当するかどうか、あるいは仲介会社側に債務不履行と評価できる事実があるかどうかが問われます。解除の可否・違約金の有無は契約書の内容によって変わるため、仲介会社への業務改善の申し入れ・記録保存・弁護士への相談を経て、段階的に対応することが一般的です。

Q3. テール条項の期間が3年と設定されています。この期間を短縮するよう交渉できますか?

契約締結後の条件変更は相手方の合意が必要ですが、交渉自体は可能です。中小M&Aガイドライン(第3版)では、テール期間は「最長でも2〜3年以内を目安とする」ことが示されています。3年という設定がガイドラインの上限に近い水準であること、対象企業の範囲が不明確である場合には、交渉による明確化・限定化を求めることが考えられます。

Q4. テール条項の対象企業のリストを仲介会社が開示してくれません。どうすれば良いですか?

テール条項の対象企業を書面で確定・開示することを求めることは正当な要求です。中小M&Aガイドライン(第3版)でも、少なくともネームクリアが行われ、売り手に紹介された企業に限定すべきとされています。開示を拒否される場合には、弁護士を通じた交渉または文書での請求が有効な手段になります。

Q5. 専任契約の有効性(無効かどうか)は、自分で判断できますか?

専任条項や違約金条項の有効性は、契約内容・金額・経緯・適用法令(独禁法・民法上の公序良俗・信義則など)を総合的に判断する専門的な問題です。なお、消費者契約法は事業者ではない「消費者」を保護する法律であるため、事業目的で契約するM&Aの売り手には通常適用されません。自己判断で「この条項は無効だ」と断定したうえで行動することは、後日の法的リスクにつながる可能性があります。必ず弁護士に相談のうえ判断してください。

Q6. 仲介会社に専任契約の解除を伝えたら、逆に訴訟を起こされる可能性はありますか?

解除通知を送付したこと自体によって直ちに訴訟になるケースは多くありませんが、違約金の支払い義務の有無・金額について争いが生じることはあります。通知書の内容や交渉の記録を書面で残すこと、弁護士が関与することで、交渉を円滑に進めやすくなります。万が一、仲介会社から不当に高額の請求がなされた場合には、弁護士・調停・裁判による解決手段もあります。

Q7. セカンドオピニオンを得たとして、現在の仲介会社との関係が悪化しませんか?

一般的な専任条項・守秘義務条項には、セカンドオピニオンを取得したことを仲介会社に通知する義務は設けられていないことが多いですが、契約の内容によって異なる場合があります。まず自社の契約書を確認することをお勧めします。セカンドオピニオンを経て契約解除の交渉を行う場合には関係性に影響が出る可能性は否定できませんが、信頼関係が既に損なわれているのであれば、中立的な視点を確保したうえで交渉に臨む方が、売り手にとって合理的な判断になることが多いです。


まとめ:専任条項は「署名前」の確認と「解除前」の専門家相談が鍵

M&A専任条項まとめ・署名前の確認と専門家相談の重要性

M&Aの専任条項は、仲介・アドバイザリー契約の根幹をなす規定であり、売り手経営者の選択肢と費用負担を大きく左右します。本記事の要点を整理します。

専任条項は、仲介会社・FAへの独占的依頼を定める条文であり、専属専任・専任・非専任の3形態がある。中小M&Aの実務では専任・専属専任契約を求められることが多い。

専任契約の解除は一般的に可能だが、中途解約金・違約金・テール条項の適用が残る場合がほとんどであり、事前の内容確認が不可欠。

テール条項の対象範囲は、ネームクリアが行われ実際に紹介された企業に限定されるべきであり、対象企業リストの書面確定が解除時の重要なステップとなる。

違約金・中途解約金の金額が著しく高額な場合は、法的観点から争いうる可能性があるが、自己判断は禁物であり、弁護士への相談が必須。

専任契約中であっても、第三者専門家によるセカンドオピニオンを取得することは、一般的には契約違反にはあたらないと考えられている。中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)においても、登録支援機関が専任条項を設ける場合に合理的な理由がない限りセカンドオピニオンの取得を妨げないことが望ましい旨が行動指針として示されており、売り手によるセカンドオピニオンの活用が推奨されている(2024年8月公表)。なお、自社の契約書の内容によっては制約が生じる場合があるため、事前確認が重要。

現在のM&Aプロセスに不安や疑問を感じていたり、専任契約の解除を検討していたりする場合は、早めに中立的な専門家に相談することが選択肢の幅を守るうえで重要です。M&Aインサイトでは、売り手経営者に寄り添う立場から、完全無料・成功報酬なしのセカンドオピニオン相談を提供しています。

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監修者情報

本記事は、一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事・森沢雄太氏(日本M&Aセンター出身・M&A成約実績100件超)の監修のもと作成しています。

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