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解体工事業のM&A|許可承継と売却相場

解体工事業を長年営んできたオーナー経営者が、「自分が引退したあと、この会社をどうするか」と頭を悩ませるケースが増えています。後継者が見つからず廃業を選ぶと、長年育ててきた従業員の雇用も失われ、地域の工事需要にも応えられなくなります。
同じ悩みを抱える経営者は少なくありません。帝国データバンクが全国の企業を対象に実施した「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」では、後継者不在率は50.1%に達しており、解体工事業界も例外ではありません。高齢化した職人の技術をいかに引き継ぐか、アスベスト対応などの許認可をどう継続させるか——こうした課題が重なり合うとき、M&Aは廃業に代わる現実的な選択肢として機能します。
解決策となりうるのがM&A(合併・買収)による事業承継です。適切な買い手に事業を引き継げば、従業員の雇用を守りながら、経営者自身も個人保証や担保から解放される可能性があります。また、買い手にとっても、解体工事業は許認可・重機・有資格者をまとめて取得できる魅力的なM&A対象です。
M&Aによる事業承継の選択肢と判断基準については、事業承継とM&Aで選ぶべき方法で詳しく解説しています。
そこで本記事では、解体工事業のM&Aをめぐる最新動向・市場背景・売却相場・売り手のメリット・デメリット・成功のポイント・許認可と資産の引き継ぎに特有の注意点・よくある質問まで、売り手経営者の視点から体系的に解説します。
この記事の監修者

森沢 雄太
一般社団法人
M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
解体工事業界の市場動向と構造

解体工事業は、建築物の解体・撤去を専門とする建設業の一分野です。戸建住宅の取り壊しから、商業ビル・工場・橋梁といった大型構造物まで、対象は幅広く、産業廃棄物の収集・運搬・処分を含む案件も多数あります。
国土交通省の建設工事施工統計調査によれば、解体工事の需要は中長期的に底堅く推移しているとされており、老朽化した建築物のストック増加、都市再開発の推進、空き家対策の強化が主な需要押し上げ要因となっています。総務省統計局が2024年4月に公表した令和5年住宅・土地統計調査(速報集計)では、全国の空き家数は約900万戸に達しており、今後の解体需要を下支えする構造的な背景となっています。
一方で、業界の構造的な課題も顕在化しています。解体工事業者の大多数は中小・零細企業であり、大手ゼネコンの下請けとして工事を受注するケースが大半です。競争が激しいため受注単価が下押しされやすく、また廃棄物処理コストの高騰や環境規制への対応が経営を圧迫しています。
解体工事業界が直面する3つの主要課題
業界全体を俯瞰すると、以下の三つの課題が特に深刻です。
第一は人材不足と高齢化です。解体工事は重機操作や安全管理に熟練した職人が不可欠ですが、若手の入職者が増えず、現場を支えるベテランの高齢化が進んでいます。技術の継承が難しくなるほど、会社の価値は下がりかねません。
第二はアスベスト対応の高度化です。改正大気汚染防止法等により、建築物の解体・改修工事におけるアスベスト対策は二段階で強化されています。まず2022年4月からは一定規模以上の解体・改修工事について、都道府県等への事前調査結果の報告が義務化されました(環境省・2022年)。さらに2023年10月からは、建築物石綿含有建材調査者等の資格を持つ者による事前調査の実施が義務付けられています(環境省・2023年)。対応できる技術力と有資格者の確保が企業価値に直結します。
第三は産業廃棄物処理コストの高騰です。解体工事には大量の廃棄物が伴い、その処分費は工事コストに大きな影響を与えます。廃棄物処理施設の受入制限や燃料費上昇が重なり、収益を圧迫する場面が増えています。
解体工事業のM&A最新動向(2026年)

解体工事業界では、後継者問題と需要拡大という二つの力が相まって、M&Aの検討ニーズは高まっています。後継者不在・老朽建築物の増加・アスベスト規制の強化・産業廃棄物処理との統合ニーズといった構造的な背景が重なり、解体工事業を対象としたM&Aが選択肢として注目される状況となっています。以下では、近年のM&Aの主要なパターンを整理します。
建設・関連事業者からのM&Aが中心
最も多いパターンは、建設業界内の関連事業者による買収です。ゼネコンや中堅建設会社が解体工事業者を傘下に収めることで、工事の川上工程を内製化し、受注から施工までを一貫して手がける体制を構築できます。また、産業廃棄物処理会社がリサイクル事業を強化する目的で解体工事業者を取得するケースも見られます。
元請け会社による下請け取得
大手元請け企業が、長年取引してきた下請けの解体工事業者を買収するM&Aも目立ちます。取引実績があるため、経営実態や人員の質についてある程度把握しており、スムーズなデューデリジェンス(企業調査)につながるケースが多いといわれます。デューデリジェンスとは、M&Aの成立前に買い手が対象企業の財務・法務・事業の実態を詳しく調査するプロセスのことです。
後継者不在を起点とした売却型M&A
売り手側から見れば、後継者がいないまま廃業の時期が迫った段階でM&Aを選択するパターンが増えています。廃業を選ぶと解体コストや従業員への退職金負担が生じますが、M&Aにより適切な価格で事業を譲渡すれば、それらのコストを回避しながら従業員の雇用も継続させることができます。
解体工事業のM&A・事業承継における売却相場

売り手経営者にとって、「いくらで売れるか」は最も気になる点の一つです。ただし、具体的な成約金額はケースごとに大きく異なるため、断定的な数値を示すことはできません。ここでは、主な評価方法と価格を左右する要因を整理します。
具体的な企業価値評価の手法については、中小企業の企業価値評価の手法で詳しく解説しています。
主な企業価値評価の手法
| 評価手法 | 概要 | 解体工事業での活用場面 |
|---|---|---|
| 年買法 | 純資産+営業利益×2〜5年分が目安(時価純資産+実態利益×年数など複数のバリエーションがある簡易的な参考指標。倍率は案件や交渉によって異なる) | 中小・零細企業の簡易評価でよく用いられる |
| EBITDAマルチプル | 利払い・税引き・減価償却前利益(営業利益+減価償却費に相当。※厳密には支払利息等も調整される指標)に倍率を掛ける | 利益水準が安定している場合に参照されることがある |
| 純資産法 | 資産から負債を差し引いた正味価値 | 重機などの有形資産が多い場合に参照される |
| DCF法(割引キャッシュフロー法) | 将来キャッシュフローを現在価値に割り引く | 成長が見込める場合や大規模案件で使われることがある |
中小M&Aガイドライン(第3版)は、中小企業庁が2024年8月30日に改訂・公表したものです。なお、M&A支援機関登録制度では、登録支援機関に対して第3版への対応が求められています。実務上は複数の評価方法を参照しながら、最終的には当事者間の交渉で価格が決まります。「必ず○億円になる」という相場は存在せず、最終的な価格は会社の利益水準・財務健全性・有資格者の人数・重機の状態・取引先との関係など複数の要因によって変動します。
解体工事業で企業価値を高める主な要因
解体工事業では、以下の要素が企業価値の評価に影響するとされています。
- 有資格技術者の人数と資格の種類(解体工事施工技士、石綿作業主任者、建設業許可など)
- 保有重機の台数・年式・自社メンテナンス体制の有無
- スクラップや有価物の売却収益が透明に把握されているか
- 元請け比率と主要取引先との関係の安定度
- 許認可(建設業許可・産業廃棄物収集運搬業許可など)の維持状況
解体工事業のM&A:売り手のメリット

売り手経営者がM&Aを選択することで得られる主なメリットを整理します。
後継者問題の抜本的解決
後継者がいない状態で経営を続けることは、従業員や取引先にも不安を与えます。M&Aにより適切な買い手が事業を引き継ぐことで、経営者不在リスクを解消できます。帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」では、後継者不在率が50.1%という水準にあり、地方の中小建設業者では特にこの課題が深刻です。
従業員の雇用継続
廃業すれば従業員は職を失います。M&Aであれば、買い手企業が引き続き雇用を引き受けることが一般的です(ただし条件交渉の結果によります)。長年の現場を担ってきた職人たちの雇用を守ることは、多くの経営者にとって最大の関心事の一つです。
個人保証・担保の解消
多くの中小企業経営者は、会社の借入に対して個人保証を差し入れており、場合によっては自宅などの資産を担保に提供しています。M&Aが成立し、買い手が事業を引き継ぐと、これらの個人保証や担保解除の交渉が可能になるケースがあります(金融機関との協議が必要であり、買い手の信用力や金融機関の判断によって結果が異なります。必ず解除されるわけではありません)。個人保証とは、経営者が会社の債務を個人として保証することで、会社が返済できなくなった場合に経営者個人が代わりに返済義務を負う仕組みです。
経営者保証の解消をM&Aで実現する方法については、個人保証・経営者保証をM&Aで解消する方法で詳しく解説しています。
経営基盤の強化と事業の発展
大手や中堅の買い手傘下に入ることで、資金調達力・ブランド・仕事量が増加する可能性があります。これにより、現場の職人にとっても待遇改善や設備投資の恩恵が生まれることがあります。
経営者自身の新たなステージへ
M&Aにより会社を譲渡することで、経営者は事業の重荷から解放され、売却益を手にしながら新たな活動に移ることができます。株式譲渡による売却益は申告分離課税の対象となり、現行税制では所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%の合計20.315%が適用されます(国税庁)。税率は税制改正により変更される可能性があるため、最新の税務情報は税理士にご確認ください。
解体工事業のM&A:売り手が直面するデメリットと注意点

メリットとともに、M&Aに伴うデメリットも正直に把握しておくことが重要です。
従業員の不安と離職リスク
M&Aが明らかになると、従業員は「自分の処遇がどうなるか」を心配します。経営陣からの丁寧な説明がなければ、優秀な職人が離職するリスクも生じます。情報開示のタイミングと方法については、M&Aアドバイザーと連携して慎重に計画することが必要です。
経営方針・企業文化の変化
買い手企業の方針に合わせた形で経営が変わります。創業者が長年大切にしてきた文化や仕事のスタイルが変容する可能性は避けられません。これを「デメリット」と感じるか、「次世代への発展」と捉えるかは、経営者の価値観によります。
適切な評価を受けられないリスク
財務データが整備されていない、あるいは許認可の状況が曖昧な場合、企業価値が低く評価されることがあります。事前準備を怠ると、本来受け取れるはずの価格より低い金額での成約になる可能性があります。
情報漏洩のリスク
M&Aの検討段階では、会社の財務情報や顧客情報を買い手候補に開示します。NDA(秘密保持契約)を締結して交渉を進めることが原則ですが、万全ではありません。NDAとは、交渉過程で知り得た情報を第三者に開示しないことを約束する契約です。信頼できるアドバイザーを介した情報管理が重要です。
譲渡後の経営への関与義務と競業避止
M&Aの成約後、旧経営者やキーマンには一定期間にわたり事業の引き継ぎ・経営への関与を求める条項(ロックアップ、またはキーマン条項とも呼ばれます)が設けられることがあります。これは、買い手が円滑な事業引き継ぎを確保するための仕組みです。これとは別に、退任後の一定期間、競合する事業への参入を禁じる「競業避止義務」が契約に盛り込まれるケースもあります。成約後の自由度についても、事前に内容をよく確認しておくことが大切です。なお、アーンアウト条項とは、一定の業績目標を達成した場合に追加の対価が支払われる仕組みのことです。
解体工事業のM&Aを成功させるためのポイント

M&Aを検討し始めた経営者が最初に押さえておくべき実践的なポイントを紹介します。
解体業のM&A成功に向けて、専門家への相談はM&Aセカンドオピニオンをご活用ください。

許認可の承継計画を最優先に立てる
解体工事業のM&Aで最も注意が必要なのは許認可の問題です。建設業許可(解体工事業)は法人に帰属するため、株式譲渡であれば許可はそのまま引き継がれますが、常勤役員等による経営業務管理体制および専任技術者等の要件を維持し続ける必要があります。
事業譲渡・合併・会社分割の場合、令和2年10月1日に施行された建設業法の改正により、事前に認可を受けることで空白期間を生じさせずに建設業者としての地位を承継できる制度(事前認可制度)が新設されています。ただし、認可を受けない場合や要件を満たさない場合は、買い手が新たに許可を取得する必要があり、工事を継続できない空白期間が生じるリスクがあります。いずれの手法でも、スケジュールを十分に確認し、行政書士や弁護士と連携して対応することが必要です。
重機・車両の名義と契約を事前に整理する
解体工事業では、重機や工事車両がリースの場合、リース会社の承諾なしに名義変更はできません。保有重機が多いほど、この手続きに時間がかかります。資産一覧と契約内容を早期に把握し、デューデリジェンスの段階で開示できるよう準備しておくことが、スムーズな成約につながります。
アピールポイントを事前に整理する
「なぜこの会社を買いたいと思われるか」を売り手自身が整理しておくことが重要です。具体的には以下の点がアピールポイントになります。
- 石綿作業主任者・解体工事施工技士など有資格者の在籍状況
- 元請け比率と主要顧客との長期的な取引実績
- 大型重機の保有台数と状態
- 自社での産業廃棄物処理・リサイクル体制
早期着手が交渉を有利にする
廃業の時期が迫ってからM&Aを検討し始めると、急いで買い手を探す状況に追い込まれ、条件交渉が不利になりやすいです。余裕のある時間軸でM&Aを検討することで、複数の候補から最適な相手を選べる可能性が高まります。
専門家を早期から活用する
M&Aには、財務・法務・税務・行政許可など多岐にわたる専門知識が必要です。仲介会社やFAだけでなく、税理士・弁護士・行政書士との連携が欠かせません。FAとはファイナンシャルアドバイザーの略で、売り手または買い手のどちらか一方の立場でアドバイスを提供する専門家です。特に、解体工事業のM&Aに詳しい専門家を選ぶことで、業界特有のリスク(アスベスト関連の潜在債務、廃棄物処理の許可状況など)の洗い出しが精度高く行えます。
条件提示を受けた段階で「この金額・条件は妥当か」を自社だけで判断することは難しいため、第三者の中立的な意見を参考にすることも有効な手段の一つです。
解体工事業のM&A:許認可と業界特有リスクの管理

解体工事業のM&Aには、他業種と異なる特有の許認可リスクがあります。ここでは実務上の重要ポイントを整理します。
建設業M&Aにおける許認可リスクの詳細については、建設業M&Aの許認可リスク詳解で詳しく解説しています。
関連する主な許認可一覧
| 許認可の種類 | 根拠法 | M&Aでの注意点 |
|---|---|---|
| 建設業許可(解体工事業) | 建設業法 | 常勤役員等による経営業務管理体制および専任技術者等の要件を維持する必要がある |
| 解体工事業登録 | 建設リサイクル法 | 建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業)を有する場合は登録不要。それ以外で500万円未満の解体工事を営む場合に必要。複数都道府県で工事を行う場合は各都道府県ごとに登録が必要なため、承継時に要確認 |
| 産業廃棄物収集運搬業許可 | 廃棄物処理法 | 都道府県ごとの許可。事業譲渡後は原則として承継できないため新規許可取得が必要(個別の行政判断による例外あり) |
| 産業廃棄物処分業許可 | 廃棄物処理法 | 処分施設を持つ場合に必要 |
| アスベスト関連の届出・資格 | 大気汚染防止法・労働安全衛生法 | 2023年10月以降、資格者(建築物石綿含有建材調査者等)による事前調査が義務化。M&A後も有資格者の在籍を確保する必要がある |
M&A後の統合(PMI)における業界特有の課題
PMI(統合プロセス)とは、M&A成立後に二つの組織・文化・システムを融合させていくプロセスのことです。解体工事業特有の課題として挙げられるのは以下の点です。
第一に、許認可の「空白期間」リスクです。事業譲渡・合併・会社分割では、令和2年10月施行の事前認可制度を活用することで空白期間なく建設業者の地位を承継できますが、手続きを適切に進めないと工事受注に制約が生じることがあります。許可申請のスケジュールを早期に確認し、行政書士等の専門家と連携することが不可欠です。
第二に、近隣住民・行政との信頼関係の引き継ぎです。解体工事は騒音・振動・粉塵が発生するため、近隣対策の暗黙知(特定の連絡先、過去のトラブル対応の経緯など)を文書化して買い手に引き継ぐことが、成約後の信用維持につながります。
第三に、職人の技術とモチベーションの維持です。熟練した解体技術は属人的であり、特定の職人が退職すると現場対応力が大きく低下します。M&A後の待遇・役割の明確化を早期に行うことが重要です。
解体工事業のM&A:成約事例に見るパターン分析

公開情報をもとに、解体工事業界で見られる典型的なM&Aパターンをご紹介します。
パターン①:環境・リサイクル会社による解体業者の取得
リサイクル事業を展開する会社が、解体工事業者を買収するケースです。廃棄物の発生源(解体現場)を押さえることで、収集・運搬・再資源化まで一気通貫の体制を構築できます。売り手側は、廃棄物処理コストの低減とリサイクル収益の確保というシナジーを買い手に提案しやすく、比較的高い評価につながる可能性があります。シナジーとは、二社が組み合わさることで単独では生み出せない価値が生まれる効果のことです。
パターン②:同業大手による地方中小業者の取得
全国展開を目指す中堅・大手の解体工事会社が、地方の中小業者を買収するケースです。許認可・重機・職人・地域の取引先をまとめて獲得できるため、新規参入よりも迅速な事業展開が可能になります。売り手は長年育ててきた事業を「終わらせない」形で次世代に引き継げるメリットがあります。
パターン③:産業廃棄物処理会社との統合・提携
解体工事業者と産業廃棄物処理業者が相互に株式を持ち合い、業務提携からM&Aへと発展するケースもあります。廃棄物処理能力と解体工事能力の相補関係がシナジーを生み出します。特に、2022年以降のアスベスト規制強化により、適切な処理体制を持つ解体業者の価値が高まっています。
M&Aを検討する前に準備すべきチェックリスト

M&Aを本格的に進める前に、自社の状態を確認しておくことが成功への近道です。以下のチェックリストで現状を把握してください。
- 建設業許可(解体工事業)が有効で、常勤役員等による経営業務管理体制および専任技術者が在籍している
- アスベスト関連の有資格者(石綿作業主任者・建築物石綿含有建材調査者等)の人数と資格証を把握している
- 保有重機・車両の台数、年式、メンテナンス状況を一覧化できている
- 産業廃棄物収集運搬業許可・処分業許可の有無と管轄都道府県を把握している
- リース契約している重機・車両の契約書と満了日を把握している
- 直近3期分の決算書(損益計算書・貸借対照表)が整備されている
- 主要取引先(元請け)との契約形態と依存度を把握している
- 個人保証・担保の内容(借入先・金額・担保物件)を把握している
- 廃業した場合にかかる費用(退職金・解体コスト等)を試算したことがある
- M&Aの専門家(税理士・弁護士・M&Aアドバイザー)に相談したことがある
このチェックリストの項目が整っているほど、買い手からの評価が高まりやすく、成約のスピードも上がります。逆に、未整備の項目が多い場合は、今すぐ着手できる準備から始めることをお勧めします。
条件の妥当性や自社評価に不安がある場合は、中立的な第三者に意見を求めることも有効です。M&Aインサイトの無料相談では、成功報酬なしで専門家に相談することができます。
よくある質問(FAQ)

Q1. 解体工事業のM&Aでは、建設業許可はそのまま引き継げますか?
株式譲渡の場合、会社(法人)を丸ごと引き継ぐため、建設業許可は原則としてそのまま継続されます。ただし、常勤役員等による経営業務管理体制および専任技術者等の要件を維持し続ける必要があります。事業譲渡・合併・会社分割の場合も、令和2年10月1日施行の建設業法改正により、事前認可を受けることで空白期間なく建設業者の地位を承継できる制度が設けられています。ただし、認可を受けない場合や要件を満たさない場合は、買い手が新たに許可を取得する必要があり、工事ができない空白期間が生じる可能性があります。どちらの手法を選ぶかはM&Aの設計に大きく影響するため、専門家への確認が必須です。
Q2. 職人が辞めてしまわないか心配です。何か手を打てますか?
M&A後の職人の離職は、業界共通の懸念事項です。対策としては、まず買い手への引き継ぎ段階で雇用条件(給与・役職・処遇)を明確に確認し、継続雇用の確約を契約上取り付けることが重要です。また、成約後にできるだけ早く責任者や現場リーダーに状況を説明し、役割を明確にすることで不安を軽減できます。情報開示のタイミングと方法については、M&Aアドバイザーと慎重に計画することをお勧めします。
Q3. アスベスト問題があると売却できなくなりますか?
アスベスト関連のリスクがあっても、それだけで売却が不可能になるわけではありません。ただし、過去の施工で適切なアスベスト処理が行われていなかった案件が存在する場合、潜在的な損害賠償リスクとして評価に影響する可能性があります。デューデリジェンスの段階で正確に開示し、必要に応じて価格調整や表明保証保険(M&A保険)の活用を検討することが適切です。表明保証とは、売り手が「会社の状態に関して開示した情報は正確だ」と保証する契約上の条項です。なお、アスベスト処理の技術・資格(建築物石綿含有建材調査者等)を持つことが逆にプラス評価につながる場面もあります。
Q4. M&Aの検討を始めてから成約まで、どのくらいかかりますか?
一般的に、小規模なM&Aでも数ヶ月〜1年程度、複雑なケースでは1〜2年以上かかることがあります。解体工事業の場合、許認可の確認や重機・車両の名義整理に時間を要するケースが多く、事前準備の充実度によってスケジュールが大きく変わります。廃業の時期が迫っている場合は、早期に相談を始めることが重要です。
Q5. M&Aアドバイザーに頼むと手数料が高いと聞きましたが、本当ですか?
M&A仲介会社の手数料は、成約金額に応じた段階式で料率が逓減する体系(レーマン方式)で設定されることが多く、一般的に数%程度となります。レーマン方式とは中小M&Aガイドライン(第3版)でも言及されている一般的な算定方式で、公式の標準レートは定められていませんが、業界慣行として活用されています。また、着手金や月額報酬が発生する場合もあります。費用感については事前に複数の専門家に確認し、条件を比較することが大切です。
Q6. 解体工事業者が売却を検討するうえで、最も重視すべき点は何ですか?
最も重視すべきは「誰に事業を引き継ぐか」という買い手の選定です。価格だけを優先すると、成約後に従業員が辞めてしまったり、近隣対策が杜撰になったりといった問題が生じることがあります。財務条件と並行して、「事業をどう発展させたいのか」「従業員の雇用をどう守るのか」という買い手の意向をしっかり確認することが、長期的な満足につながります。
Q7. 赤字が続いている会社でもM&Aは可能ですか?
赤字企業であっても、M&Aの対象になることがあります。特に解体工事業の場合、許認可・重機・有資格者・取引先といった「資産価値」が赤字の財務状況を補完する評価につながることがあります。ただし、赤字が続いていると評価額は下がりやすく、条件交渉においても売り手に不利になる場面が増えます。早めに収益改善の取り組みを行いながら、並行してM&Aの準備を進めることをお勧めします。
まとめ:解体工事業のM&Aで大切にすべき視点
解体工事業のM&Aは、後継者問題の解決、従業員の雇用継続、個人保証の解消、経営基盤の強化など、売り手経営者にとって多くのメリットをもたらす可能性があります。一方で、許認可の引き継ぎ・職人の確保・アスベスト関連リスクの管理といった業界特有の課題を把握したうえで準備を進めることが、成功への近道です。
M&Aを検討する際に価格だけを優先するのではなく、「誰に、どのような形で事業を引き継ぐか」という視点を持ち続けることが、経営者にとっても従業員にとっても満足のいる結果につながります。
M&Aの検討初期段階では、条件の妥当性や選択肢について中立的な立場からアドバイスを受けることも選択肢の一つです。M&Aインサイトでは、完全無料・成功報酬なしの立場から、売り手経営者の疑問に対応しています。