M&Aの着手金とは?相場・手数料体系・支払い前に確認すべきことを徹底解説

M&Aの着手金とは何か・相場・手数料体系を解説するビジネス相談シーン

会社の売却や事業承継を検討しはじめたとき、「M&A仲介会社に依頼すると着手金が必要と聞いたが、いくらかかるのか」「着手金とは何のために払うのか」「不成立になったら返ってくるのか」といった疑問を抱く経営者は少なくありません。

M&Aにかかる費用は成功報酬だけではありません。着手金をはじめとする各種手数料の仕組みを理解しないまま仲介会社と契約してしまうと、想定外のコスト負担や、後になって「こんなはずではなかった」という後悔につながることがあります。

そこで本記事では、M&Aにおける着手金の定義・相場・支払いタイミングから、仲介会社の手数料体系全体の構造、会計処理・損金算入の扱い、費用を抑えるポイント、そして着手金に関するトラブル事例と対策まで、売り手経営者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。着手金の契約書にサインする前に、ぜひ本記事をお読みください。



目次

M&Aの着手金とは何か

M&Aの着手金の定義と役割を説明するビジネス書類確認シーン

M&Aの着手金とは、売り手または買い手がM&A仲介会社(もしくはFA=財務アドバイザー)と契約を締結した時点で、もしくは契約直後に支払う初期費用のことです。M&Aプロセスを開始するにあたっての「着手の証」として設定されており、仲介会社がマッチング活動・書類作成・相手先候補の選定など初期業務を行う対価として位置付けられます。

着手金の役割と目的

着手金が設定されている背景には、仲介会社側の実務コストという事情があります。M&A仲介会社は、契約締結後すぐに企業概要書(IM:インフォメーション・メモランダム)の作成、候補先へのアプローチ、秘密保持契約(NDA)の取得といった業務に人員・時間を投入します。仲介会社は初期段階でこれらの人的コストを投下するため、成約の有無にかかわらず一定額を事前に収受する仕組みが着手金です。

一方で、売り手企業にとって着手金は「M&Aを本気で進める意思表示」としての側面もあります。着手金を支払うことで、仲介会社は当該企業を優先的に担当案件として扱い、マッチング活動にリソースを集中しやすくなります。

着手金は「前払費用」の性格を持ちますが、多くの契約では成約・不成立を問わず返金されない条件(非返金)が設定されています。この点は契約前に必ず確認すべき重要事項です。

着手金と他の費用の違い

M&Aにかかる費用は着手金だけではありません。着手金と混同されやすい費用の種類と支払いタイミングを整理すると以下のとおりです。

費用の種類発生タイミング相場・目安返金の有無
相談料初回相談時(無料の会社も多い)0〜数万円程度通常なし
着手金仲介契約締結時0〜200万円程度(会社によって異なる)通常なし(非返金が多い)
月額報酬(リテイナーフィー)活動期間中・月次月20〜50万円程度なし
中間報酬意向表明書(LOI)または基本合意書(MOU)締結時(契約による)成功報酬の一定割合通常なし
成功報酬主にクロージング時等の案件完了時(契約による)レーマン方式で算出なし
DD(デューデリジェンス)費用DD実施時数百万〜数千万円(規模による)なし

着手金は「M&Aプロセスの入口」で支払う費用であるのに対し、成功報酬は「出口(成約)」で支払う費用という位置付けです。着手金無料の仲介会社も増えていますが、その場合は月額報酬や成功報酬が高めに設定されている場合もあるため、費用体系全体で比較することが大切です。


M&Aにかかる手数料体系の全体像

M&Aの相談料・着手金・月額報酬・成功報酬など手数料体系全体を検討するシーン

着手金を正しく評価するには、M&A仲介会社の手数料体系全体を理解することが不可欠です。仲介会社ごとに手数料の組み合わせは大きく異なるため、個別の費用だけで比較せず、プロセス全体の総コストで判断することが重要です。

M&Aにかかる手数料の全体像については、M&A手数料の体系と相場の全体像で詳しく解説しています。

手数料の種類と内容

各手数料の内容を詳しく確認します。

相談料は、初回面談・秘密保持契約締結前後に発生する場合があります。近年は初回相談を無料とする仲介会社が増えており、実務上あまり発生しないケースも多くなっています。

着手金は前述のとおり、仲介契約締結時に発生します。非返金が原則のため、複数の仲介会社に依頼するといった事情がある場合はコスト負担が積み上がる点に注意が必要です。

月額報酬(リテイナーフィー・コンサルタント料)は、活動期間中に毎月定額で支払う費用で、担当アドバイザーの人件費・管理費用に充当されます。M&Aのプロセスは案件によって大きく異なり、長期化する場合もあるため、月額報酬が積み上がると総費用に占める割合が無視できなくなります。

中間報酬は、意向表明書(LOI:Letter of Intent)の提出時や基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)の締結時に設定されている場合があります。LOIは買い手が取引への意向や希望条件を示す書面、MOUは当事者間でM&Aの基本条件を確認する書面として用いられることが多く、どの段階で中間報酬が発生するかは仲介会社の契約によって異なります。中間報酬は後の成功報酬と相殺される契約設計の仲介会社もあります。なお、基本合意書等には、一定期間、買い手に独占交渉権を与える条項が設けられる場合があります。

成功報酬は、案件完了時(主にクロージング)に発生します。中小M&Aガイドライン第3版は「主にクロージング時等の案件完了時に発生する手数料」と説明していますが、最終契約書の締結時点かクロージング(決済実行)時点かは仲介会社の契約条件によって異なります。契約前に成功報酬の発生タイミングを必ず確認してください。また、着手金・月額報酬・中間報酬が成功報酬に含まれる(相殺される)かどうかも重要な確認事項です。

DD(デューデリジェンス)費用は、買い手が売り手企業の財務・法務・ビジネス・労務等を調査するデューデリジェンスの外部専門家(公認会計士・弁護士・税理士等)に支払うコストです。DDは原則として買い手が費用を負担しますが、案件条件によって売り手が一部を分担する例もあります。中小企業のM&AではDD費用が数百万円〜数千万円規模に達することもあるため、事前に目安を確認しておくことをお勧めします。なお、仲介会社・FAがDDのスケジューリング等のみ対応し、DD自体の実施は外部専門家に委託するケースもあります。

成功報酬の計算方法:レーマン方式とは

M&A仲介の成功報酬の算定で広く採用されている代表的な方式が「レーマン方式」です。中小M&Aガイドライン(第3版)でも参考例として取り上げられています。

成功報酬の計算方法については、成功報酬(レーマン方式)の計算で詳しく解説しています。

レーマン方式は、取引金額(譲渡代金)を一定の区分に分け、区分ごとに異なる料率を乗じて合算する方式です。ガイドラインは特定の料率・算定式を規定しているわけではなく、以下はあくまで実務で多く見られる料率の目安です。

取引金額の区分料率の目安
5億円以下の部分5%程度
5億円超〜10億円以下の部分4%程度
10億円超〜50億円以下の部分3%程度
50億円超〜100億円以下の部分2%程度
100億円超の部分1%程度

上記はあくまで目安であり、仲介会社・対象企業の規模・交渉状況によって異なります。また、「移動総資産ベース」(株式だけでなく負債も含む全資産を基準とする方法)と「株式価値ベース」(譲渡価格のみを基準とする方法)では計算結果が大きく異なる場合があります。どちらの基準で計算されるか、最低報酬額の設定の有無(目安として数百万〜1,000万円台を設定している会社が多い傾向がありますが、会社によって大きく異なります)を契約前に確認することが重要です。

なお、M&Aの仲介手数料は誰が払うかについて、売り手・買い手どちらが負担するかは契約によります。仲介型(売り手・買い手双方と契約し双方を支援する)とFA型(一方のみと契約し一方のみを支援する)では費用構造が異なります。仲介型の場合、仲介会社は相手方(買い手)の手数料に関する事項についても事前に説明することが中小M&Aガイドライン第3版で求められています。


M&Aの着手金の相場

M&A着手金の相場を調べる日本人経営者のリサーチシーン

着手金の相場は仲介会社の規模・方針・対象案件の規模によって大きく異なります。

M&A仲介手数料の相場全体については、M&A仲介手数料の相場を確認するで詳しく解説しています。

着手金の一般的な水準

中小企業のM&Aを扱う仲介会社における着手金は、各社の公開情報を参考にすると概ね0〜200万円程度の幅があるとされています(中小案件の目安であり、案件規模や仲介会社の方針によって異なります)。大手仲介会社では100万〜200万円程度の着手金を設定しているケースが多く、中小・独立系のFA・仲介会社では50万〜100万円程度というケースも見られます。ただし、これは公開情報ベースの目安であり、実際の費用は個別の交渉・案件状況によって異なります。

一方で、近年はマッチングプラットフォームの普及や競争激化を背景に、着手金を無料または大幅に引き下げる会社も増えています。中小M&A市場改革プラン(経済産業省、2025年8月)では、手数料の透明性向上が政策課題として挙げられており、今後は費用の開示がさらに進む方向にあります。

着手金の相場に影響する要因

着手金の金額は以下の要因によって変動します。

仲介会社の規模・ブランドが大きいほど、着手金が高めに設定される傾向があります。大手には多数の買い手候補データベースや専門チームが整備されており、その体制維持コストが反映されます。大手仲介会社を選ぶことで買い手候補へのアクセス数が多くなる一方、着手金の初期負担が増える点はトレードオフとして認識しておく必要があります。

案件の規模(譲渡代金の見込み)も影響します。譲渡代金が大きい案件では、仲介会社の担当業務量も増加するため、着手金が高く設定されることがあります。逆に、売上高1億円未満の小規模案件では着手金を低く設定している(あるいは無料にしている)仲介会社もあります。

仲介型かFA型かによっても異なります。FA型(アドバイザリー型)は一方のみを支援するため、着手金とは別にリテイナーフィーを重視する料金体系をとる場合が多く、相場観が仲介型とは異なります。

地域・業種特化型の仲介会社も存在します。地方企業のM&Aや特定業種(医療・介護・IT・建設など)に特化したアドバイザーを選ぶ場合、大手総合型とは異なる料金設定になることが多く、場合によっては着手金をより低く抑えられるケースもあります。自社の業種・エリアを専門とする仲介会社へのアプローチも選択肢として検討する価値があります。


着手金を支払う前に確認すべきこと

M&A着手金を支払う前に契約書を慎重に確認する経営者のシーン

着手金は一度支払うと返金されないケースが大半です。支払い前に以下の点を必ず確認しましょう。

仲介会社との契約条件を精査する

契約書には「着手金の金額」「返金条件の有無」「契約期間」「専任契約か非専任契約か」「中途解約時の取り扱い」が明記されているはずです。これらを一点ずつ確認し、不明な点は書面で回答を求めることが原則です。

特に注意すべきは専任条項(エクスクルーシビティ)の有無です。「専任契約」は一定期間、他の仲介会社への依頼を禁止する契約形態で、「非専任契約」は複数の仲介会社に同時依頼が可能な形態です。多くの仲介会社との契約は専任条項が含まれますが、この期間中に成果がなかった場合、解約時の着手金の扱いがどうなるかを事前に確認しておく必要があります。

M&Aプロセスは案件によって大きく異なり、1年以上を要することもあります。月額報酬が発生する場合は、長期化した場合の総コストも試算しておくと安心です。また、成約後に売り手経営者に対して一定期間の経営関与・雇用継続(役員継続・雇用契約等)を求める「ロックアップ条項(キーマン条項)」が設定される場合もあり、これも契約前に内容を把握しておくべき事項のひとつです。

仲介会社の実績・体制を確認する

着手金を支払う前に、仲介会社の実績・担当者の経験・自社の業種・規模に近い案件の成約実績を確認しましょう。担当者が頻繁に交代する会社や、自社の業種・規模に不慣れな会社では、期待する成果が得られない可能性があります。

M&Aのプロセスでは多くの機密情報を仲介会社と共有します。情報管理体制・NDAの締結範囲・情報漏洩時の責任規定についても、契約書で確認することをお勧めします。

着手金無料の仲介会社のメリット・デメリット

近年、着手金を無料とする仲介会社が増えています。初期コストを抑えられることは大きなメリットですが、次の点には注意が必要です。

着手金無料の場合、収益モデルが成功報酬のみか、または月額報酬に重点を置いているケースが多くなります。成功報酬の料率が着手金あり会社より高めに設定されていることがあるため、総費用で比較することが不可欠です。

また、着手金がないことで案件の優先度や担当者の稼働配分に影響が出るケースが指摘されることもあります。ただし、これは仲介会社の方針・体制によるもので一概には言えません。契約前に担当者の具体的な活動内容・スケジュールを確認することで見極めることができます。


着手金に関するトラブルと実務対策

M&A着手金のトラブルを防ぐために書類を慎重に点検するビジネスシーン

着手金は非返金が原則のため、仲介会社との間でトラブルが生じやすい費用のひとつです。ここでは実際に起こりやすいトラブルのパターンと、売り手としての事前対策を解説します。

着手金をめぐる具体的なトラブル事例については、着手金をめぐるトラブル事例で詳しく解説しています。

よくあるトラブルのパターン

活動開始後に「思ったほど候補企業が見つからない」「担当者の対応が遅い」「業種理解が不足している」といった不満が生じても、着手金は返金されません。このような事態を防ぐには、契約前に活動計画の具体的な内容(候補先へのアプローチ方法・頻度・担当者の経験)を確認しておくことが有効です。

また、M&Aが不成立に終わった場合でも着手金は戻りません。複数の仲介会社に打診して複数社と契約した場合は、着手金が重複して発生します。なるべく最初の仲介会社選びを慎重に行い、まず1社と試験的に取り組んでみることも一案です。

担当者が途中で交代するケースも想定しておくべきです。大手仲介会社では担当者の異動・退職によってM&Aプロセスの途中で担当者が変わることがあります。担当者交代時の引き継ぎ体制・情報共有の仕組みについて契約時に確認しておくと安心です。

契約解除時のトラブルとして、「解除後も営業秘密・顧客情報が守られるか」という点も見落としがちです。M&Aのプロセスでは、自社の財務情報・顧客情報・従業員情報など極めて機密性の高い情報を仲介会社と共有します。契約解除後の守秘義務期間・範囲・情報の返却・廃棄の義務を契約書で明確にしておくことが重要です。守秘義務条項が「契約期間中のみ」となっている場合は、解除後の対応について書面で確認を求めることをお勧めします。

着手金を支払う前の実務チェックリスト

以下の項目を確認してから着手金を支払う判断をしましょう。

  • 着手金の金額と非返金の条件が契約書に明記されているか
  • 専任契約か非専任契約かを確認し、専任の場合は期間(一般的に6か月〜1年程度)を把握したか
  • 中途解約時の手続きと費用清算方法が明示されているか
  • 担当者の過去実績・自社業種での経験を確認したか
  • 月額報酬・中間報酬・成功報酬の算定基準(移動総資産ベースか株式価値ベースか)を確認したか
  • 成功報酬の発生タイミング(最終契約締結時かクロージング時か)を確認したか
  • 成功報酬の最低保証額(最低報酬)の有無と金額を確認したか
  • 着手金・月額報酬・中間報酬が成功報酬に含まれる(相殺される)かどうかを確認したか
  • 情報漏洩時の責任規定と契約解除後の守秘義務が契約書に含まれているか
  • 複数の仲介会社から見積もりを取り、総費用を比較したか

着手金の会計処理と損金算入の扱い

M&A着手金の会計処理と損金算入について税理士に相談するシーン

着手金の支払いは、経理上どのように処理すればよいか、損金として算入できるかという点も経営者が気になる事項です。ただし、税務・会計の処理は誰が支払うか(法人か個人オーナーか)・M&Aのスキーム・個別の事情によって異なるため、最終的な判断は必ず顧問税理士・会計士に確認してください。

着手金の会計処理の基本

M&Aの着手金は、支払い時点ではまだ具体的な役務提供が完了していないため、役務提供期間に対応する「前払費用」として資産計上する処理が考えられます。その後、仲介会社の役務提供が行われる期間に応じて費用化(販売費及び一般管理費)していく処理が想定されます。ただし、実務的には金額の重要性・活動期間の長短・企業の会計方針によって、支払時に一括で費用処理しているケースもあり、処理方法は一様ではありません。

着手金の損金算入の可否

M&Aの費用の税務処理は、誰が支払うか・どのスキームか・費用の性質によって異なります。

法人が支払う場合は、事業に関連する費用として損金算入が可能なケースが多いとされますが、資本的支出として扱われる場合もあり個別の判断が必要です。

オーナー個人が株式を売却する場合(株式譲渡)は、仲介手数料は「法人の損金」ではなく、個人の株式等の譲渡所得の計算における「必要経費(委託手数料等)」として処理されます(国税庁タックスアンサーNo.1463)。この場合、法人側での損金処理とは切り離して考える必要があります。

最終的に案件が不成立に終わった場合の処理についても、個別の状況・契約内容・税務当局の判断によります。着手金を資産計上した後に不成立となった場合の損失処理は税務上複雑になることがあるため、事前に税理士へ相談することを強くお勧めします。


M&A仲介会社を選ぶ際のポイント

M&A仲介会社を比較・選定している日本人経営者のシーン

着手金の多寡だけで仲介会社を選ぶことは避けるべきです。中長期的な費用対効果と信頼性を総合的に判断することが重要です。

着手金の妥当性を中立の立場で確認する

仲介型とFA(アドバイザリー)型の違い

項目仲介型FA(アドバイザリー)型
支援の対象売り手・買い手双方と契約し、双方を支援する売り手または買い手の一方のみと契約し、一方のみを支援する
利益相反リスク双方を支援するため潜在的に存在する(ガイドラインは中立的立場の確保と開示を求める)一方のみを支援するため相対的に低い
費用の傾向双方から手数料を受領一方からのみ受領(着手金・リテイナーが中心)
向いているケース初めてのM&A・規模が小さい案件売り手の利益を最優先したい場合

中小M&Aガイドライン第3版では、仲介者は両当事者と契約を締結し双方を支援する立場であることを書面で開示し承諾を取得することが求められています。また、どちらか一方の利益を不当に害しないよう適切な利益相反管理を行わなければならないとされています。FA型(財務アドバイザー型)の場合、売り手の利益を優先した立場でサポートを受けられる反面、費用は仲介型より高くなるケースもあります。

業種・規模への対応力を確認する

自社の業種・企業規模に精通した仲介会社・担当者を選ぶことが成約率・条件の向上につながります。製造業・IT・医療・建設等の専門分野に特化した仲介会社や、売上規模・地域を絞って対応している会社もあります。担当者の過去事例を具体的に聞き、自社との親和性を確認することをお勧めします。


M&Aの着手金・手数料を安く抑えるポイント

M&A着手金と手数料を抑えるための補助金や無料相談を活用するシーン

費用負担を最小化しながらM&Aを進めるための選択肢を解説します。

手数料を安く抑える具体的な選択肢については、手数料を安く抑える方法で詳しく解説しています。

着手金無料・成功報酬型の仲介会社を活用する

着手金無料・成功報酬のみという料金体系を採用する仲介会社を選ぶことで、初期費用の負担を抑えることができます。ただし前述のとおり、成功報酬の料率・算定ベース・最低報酬額は必ず確認してください。

補助金を活用する

中小企業のM&Aを支援するための補助金として「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」があります。これはM&Aに係る専門家報酬の一部を補助するもので、FA・仲介手数料も補助対象に含まれる場合があります。ただし、補助対象となるためには、M&A支援機関登録制度に登録された支援機関の支援に係る費用であることが原則として要件となります。補助率や上限額は毎年の公募条件によって変わるため、最新情報は中小企業庁の公式サイトでご確認ください(2026年5月時点で第十五次公募の公募要領が公表されています)。

また、事業承継引継ぎ支援センター(公的機関)を通じたM&Aマッチングサービスは、民間の仲介会社より低コストで利用できる場合があります。小規模案件では活用の余地がある選択肢です。

複数の専門家から見積もりを取る

着手金・手数料は仲介会社によって大きく異なります。複数社から見積もりを取り、費用体系・サービス内容・実績を比較してから依頼先を決めることが、コスト面・品質面の両方で有効です。見積もりの段階では詳細な情報開示が難しいケースもありますが、料率・算定ベース・最低報酬額・活動方針の概要程度は確認することができます。


中小M&Aガイドラインと着手金の位置付け

中小M&Aガイドラインに基づき着手金の説明義務を確認するビジネスシーン

着手金を含むM&Aの手数料体系について、中小企業庁が公表する中小M&Aガイドラインでは確認すべき事項や説明義務が示されています。この視点は、M&A支援機関を選ぶ際に非常に重要な判断材料となります。

中小M&Aガイドライン(第3版)が示す方向性

中小企業庁は2020年3月に「中小M&Aガイドライン」を策定し、2024年8月に第3版へ改訂しました。M&A支援機関登録制度では、既存の登録事業者について原則として2025年1月までに第3版へ移行しています。同ガイドラインは、M&A支援機関(仲介会社・FA等)が守るべき行為規範を示しており、手数料の開示・説明義務に関する項目も含まれています。ただし、これは手数料の額や料率を一律に規制する法的基準ではなく、説明・確認事項の指針に位置付けられます。

ガイドラインでは、M&A支援機関登録制度に参加するにあたって、着手金を含む手数料の内容・算定方法・発生タイミング等を事前に説明・書面交付等することが求められています。M&A支援機関登録制度に登録されているかどうかは、依頼先を選ぶ際の一つの判断材料になります。

また、中小M&A市場改革プラン(経済産業省、2025年8月)では、支援の質・手数料の透明性・セカンドオピニオン機能の活用を政策的に推進する方向性が示されています。売り手企業にとって、着手金を含む費用の内訳を明確に説明できない仲介会社には注意が必要です。

このような背景から、着手金の金額・条件・返金可否について明確に説明できない会社、または書面化を拒む会社とは契約を慎重に検討することをお勧めします。M&Aの意思決定は人生最大の経営判断のひとつです。セカンドオピニオンとして中立的な専門家に相談することも、適切な費用水準を判断するうえで有効な手段です。

着手金の条件に不安を感じた場合は、M&Aインサイトの無料相談をご活用ください。成功報酬なし・完全無料で、中立的な立場からアドバイスを提供しています。


M&Aで支払う手数料の税務上の扱い

M&Aで支払う手数料の税務処理について公認会計士と確認するシーン

M&Aに係る費用は、税務上の処理が複雑になりやすい分野です。着手金に限らず、各費用の税務処理の概要を理解しておくことで、申告時の漏れやトラブルを防げます。なお、いずれも個別の状況・スキームによって判断が異なるため、最終確認は必ず税理士・公認会計士に行ってください。

費用別の税務処理の概要

仲介手数料(着手金・成功報酬等)の処理は、誰が支払うか・どのスキームかによって異なります。法人が支払う場合は、事業関連費用として損金算入が可能なケースが多いとされますが、資本的支出として扱われる場合もあり個別の判断が必要です。オーナー個人が株式譲渡を行う場合は、個人の株式等の譲渡所得の計算における必要経費(委託手数料等)として処理されます(国税庁タックスアンサーNo.1463)。

DD(デューデリジェンス)費用は、企業取得に向けた調査費用として資本的支出に計上されるケースと、期間費用として処理されるケースがあり、判断基準は税法上の扱いに依存します。

のれん(買い手が実際に支払う価格と対象企業の純資産価値の差額)の税務処理は、M&Aのスキームによって異なります。事業譲渡や非適格合併等の一定の取引では、対価額が移転を受けた資産・負債の時価純資産額を上回る場合など、所定の要件を満たすと税務上の「資産調整勘定」が生じ、原則として5年間で損金算入されます(法人税法第62条の8)。一方、株式を取得するスキーム(株式譲渡・株式交換等)の場合は、買い手企業の個別財務諸表・法人税務上、この意味での資産調整勘定は原則として発生しません。会計上ののれんと税務上の取り扱いはスキームによって異なるため、M&Aの検討段階から税理士・公認会計士に相談することを強くお勧めします。

これらの処理については、税理士・公認会計士との事前確認が欠かせません。特に事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予制度)とM&Aを組み合わせる場合は、税務設計が複雑になるため早期に専門家へ相談することをお勧めします。


M&Aの着手金に関するよくある質問

Q1. 着手金は必ず支払わなければならないのですか?

必ずしもそうではありません。着手金の有無は仲介会社の料金体系によって異なります。着手金無料・成功報酬のみという会社も存在します。複数社を比較して、自社にとって最適な費用体系を選ぶことが重要です。

Q2. 着手金はM&Aが成立しなかった場合に返金されますか?

多くの場合、着手金は「非返金」が契約条件として明示されています。仲介会社が実際に業務(企業概要書の作成・マッチング活動等)を行った対価として支払われるものであるためです。ただし、会社によっては一定条件下で返金または成功報酬との相殺を認めているケースもあります。契約前に必ず返金条件を確認してください。

Q3. 着手金はいつ支払うのですか?

一般的には、仲介契約書(アドバイザリー契約書)の締結と同時または契約締結後の一定期間内に支払います。分割払いに応じている仲介会社もありますが、事前に交渉することが必要です。

Q4. 着手金の相場を下げるために交渉することはできますか?

交渉余地がゼロではありませんが、大手仲介会社では料金体系を固定しているケースが多く、大幅な値引きは難しいことが多いです。複数社から見積もりを取り、競合させることで交渉力が生まれる場合もあります。また、着手金の金額よりも、成功報酬の算定ベース・最低報酬額・月額報酬の有無のほうが総費用に与える影響が大きいため、そちらを重点的に確認することをお勧めします。

Q5. 着手金以外にどのような費用が発生しますか?

着手金のほかに、月額報酬・中間報酬・成功報酬・DD費用が発生する可能性があります。これらの合計が最終的な費用総額となります。また、法務・税務に関する外部専門家(弁護士・税理士・公認会計士)の費用が別途必要になる場合があります。契約前に想定される費用項目の全体像を仲介会社に確認することが重要です。

Q6. 中小M&Aの着手金の相場はどのくらいですか?

中小企業のM&Aでは、各社の公開情報を参考にすると着手金0〜200万円程度が一つの目安とされています。着手金無料の仲介会社も増えており、特に近年はマッチングプラットフォームの普及で初期費用が下がる傾向があります。ただし、着手金の金額だけで仲介会社を選ぶことは避け、成功報酬の算定方法・活動内容・実績を総合的に評価することをお勧めします。

Q7. 着手金の会計処理はどのように行えばよいですか?

役務提供期間に対応する前払費用処理が考えられますが、実務では支払時に一括で費用処理するケースもあります。金額の重要性・活動期間・自社の会計方針・支払主体(法人か個人オーナーか)によって処理方法は異なります。最終判断は必ず顧問税理士・会計士に確認することをお勧めします。


まとめ:着手金を正しく理解してM&Aの第一歩を踏み出す

M&Aの着手金は、仲介会社とのプロセスを開始するために支払う初期費用であり、多くの場合非返金です。着手金の金額だけに目を向けるのではなく、手数料体系全体(月額報酬・中間報酬・成功報酬・DD費用)を総合的に比較・評価することが重要です。

支払い前には、契約書の条件を精査し、担当者の実績・自社業種への理解・情報管理体制を確認してください。成功報酬の発生タイミング・算定ベース・着手金が成功報酬に含まれるかどうかも必ず確認しましょう。また、中小M&Aガイドラインに基づくM&A支援機関登録制度の活用や、事業承継・M&A補助金の検討も費用負担を軽減する選択肢のひとつです。

会社の売却・事業承継は、経営者にとって人生でも最大の意思決定のひとつです。仲介会社が提示する条件や説明について少しでも疑問や不安を感じる場合は、中立的な立場の専門家に意見を求めることを強くお勧めします。

M&Aインサイトでは、完全無料・成功報酬なしのセカンドオピニオンサービスをご提供しています。着手金の条件が適切かどうか、仲介会社から受けた提案が売り手の利益にかなうものかどうかについて、中立的な立場からアドバイスいたします。ぜひ無料相談フォームからお気軽にご相談ください。


監修:森沢 雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事/日本M&Aセンター出身/M&A成約実績100件超)

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