M&Aマッチングサイトのトラブル事例と安全な使い方

M&Aマッチングサイトのトラブルを防ぐために経営者と専門家が資料を確認しながら相談している様子

「M&Aマッチングサイトを使って会社を売ろうと思ったけれど、本当に大丈夫だろうか」——そう感じている経営者の方は少なくありません。M&Aの手段が多様化し、インターネット上のマッチングサイトを通じて自社の売却相手を探すことが以前より身近になった一方で、「契約後に約束した代金が支払われなかった」「表明保証違反を指摘されて損害賠償を請求された」といったトラブルの報告も増えています。

売り手経営者にとって会社の売却は、経営人生で一度しかない大きな意思決定です。マッチングサイトを使う場合、相手方との交渉から契約締結まで多くの場面に専門的な判断が求められますが、そのプロセスで生じる情報格差や知識不足がトラブルの温床になりやすいのが実情です。

こうしたリスクをあらかじめ知り、適切な対策を取ることで、多くのトラブルは防ぐことができます。

そこで本記事では、M&Aマッチングサイトで起きやすいトラブルの種類・原因・具体的な対策を、売り手経営者の視点から順を追って解説します。M&Aを検討し始めたばかりの方にも理解しやすいよう、専門用語はそのつど説明しながら進めます。

相談先選びに迷ったときは、こちらの比較ガイドもあわせてご覧ください。



目次

M&Aマッチングサイトとは何か

M&Aマッチングサイトの仕組みをタブレットで確認する経営者

M&Aマッチングサイトとは、企業の売却を希望する売り手と、企業の買収を希望する買い手をインターネット上でつなぐプラットフォームです。従来のM&Aは仲介会社を通じて非公開で行われることがほとんどでしたが、マッチングサイトを活用することで、売り手自身が候補先を探して交渉を始めることも可能になっています。

マッチングサイトには大きく分けて次の2タイプがあります。

種別 特徴 主な利用者
プラットフォーム型 案件情報を掲載し、売り手・買い手双方が検索・交渉 中小企業・個人事業主の小規模案件が多い
アドバイザー仲介型 サイト上でマッチングした後、アドバイザーが交渉をサポート 一定規模以上の企業

費用が比較的低く抑えられる場合があること、自分のペースで相手を探せること、案件を広く公開できることなどが売り手のメリットとして挙げられます。一方で、専門的なサポートが限られるケースでは、交渉・契約のノウハウが不足する売り手が不利な立場に置かれやすいという側面もあります。

M&Aの基本的な流れとマッチングサイトの位置づけ

M&Aの標準的なプロセスは、大まかに以下の段階を経ます。

  1. 売却方針の検討・相談先の選定
  2. ノンネームシートの作成・候補先へのアプローチ(マッチングサイトへの掲載もここに当たる)
  3. 秘密保持契約(NDA)の締結
  4. 企業概要書(IM)の開示・トップ面談
  5. 意向表明書(LOI)の受領・基本合意書(MOU)の締結
  6. デューデリジェンス(DD)の実施
  7. 最終契約書(DA)の締結・クロージング
  8. PMI(Post Merger Integration:経営統合プロセス)の開始

マッチングサイトは「2」の段階、つまり売り手と買い手の出会いを提供するものです。出会い以降のステップは当事者同士、または専門家のサポートを受けながら進めることになり、ここに専門知識を持たない売り手が陥りやすいトラブルのリスクが集中しています。


M&Aマッチングサイトで起きやすいトラブルの種類

契約書類を慎重に確認する経営者の様子

M&Aマッチングサイト利用に絡むトラブルは、発生するタイミングと原因によっていくつかのパターンに分類できます。中小企業庁は2024年8月に「M&Aに関するトラブルにご注意ください」と題した注意喚起を公表しており(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月)、不適切な買い手に関するトラブルが実際に多発していることを示しています。

クロージング後に譲渡代金が支払われないケース

株式譲渡の場合、株式の引き渡しと対価の支払いを同時に行う「同時履行」が原則とされますが、契約自由の原則のもと、当事者間の合意によって別段の支払い方法を定めることも一般的に行われています。実務上はエスクロー(第三者機関が代金を預かり条件成就後に支払う仕組み)や分割払い、アーンアウト(成約後の業績に連動した支払い)といった方式がとられる場合もありますが、分割払いや退職慰労金の後払いを条件とした契約では、後払い分が履行されないというトラブルが発生しています。

中小企業庁の事例でも、「譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているが履行されなかった」というケースが紹介されています(同上)。受け取れるはずの対価の一部が不払いになるリスクは、売り手にとって深刻な損害をもたらします。

経営者保証(個人保証)が解除されないケース

中小企業の経営者の多くは、銀行借入に対して個人保証(経営者保証)を負っています。M&Aを通じて会社を譲渡した後は、この個人保証を外してもらえることを期待する売り手も少なくありません。しかし中小企業庁の注意喚起では、「クロージング後に個人保証が解除されなかった」という事例が明示されており(同上)、譲渡後も経営者保証が継続するリスクがあります。経営者保証の解除可否は金融機関が判断するものであり、買い手が単独で保証解除を約束できるものではない点を事前に理解しておく必要があります。

M&A後に経営者保証がどう扱われるかは経営者保証(個人保証)で詳しく解説しています。

表明保証違反による損害賠償請求

表明保証とは、M&Aの最終契約書(DA)において売り手が「自社の財務・税務・法務・労務上の情報が正確である」と買い手に対して保証する条項です。売り手が把握していなかった負債・訴訟リスク・未払い給与・税務上の問題などが成約後に発覚した場合、買い手から表明保証違反として損害賠償を請求されることがあります。

表明保証の基本概念や違反時の対応については表明保証で詳しく解説しています。

小規模なM&Aでは、売り手自身が作成した資料をもとに交渉が進むことも多く、意図せず不正確な情報を提供してしまう事態が生じやすい環境にあります。

デューデリジェンス(DD)における情報開示のトラブル

デューデリジェンス(DD)とは、買い手が成約前に売り手企業の実態を調査するプロセスです。財務DD・税務DD・法務DDなどがあり、売り手はこれらの調査に対応するために膨大な資料を開示する必要があります。

DDの目的・種類・流れや費用についてデューデリジェンス(DD)で詳しく解説しています。

マッチングサイト経由の案件では、買い手が独自にDDを実施するケースと、小規模案件を中心に費用削減のため簡易DDや限定的なDDにとどまるケースの両方があります。DDが不十分なまま成約した場合、成約後に問題が発覚しやすく、トラブルに発展するリスクが高まります。また、DDへの対応ノウハウを持たない売り手が必要以上の情報を開示してしまい、情報漏洩が問題になることもあります。

交渉・契約段階での認識相違とトラブル

M&Aの交渉では、価格・従業員の処遇・代表者の経営参画期間・取引先への引継ぎ条件など、多くの事項についてすり合わせが必要です。売り手と買い手の認識が食い違ったまま交渉が進み、契約書に曖昧な表現が残った結果、成約後に「聞いていた条件と違う」「雇用条件の変更や人員整理が行われた」といったトラブルに至ることがあります。

PMI(経営統合プロセス)での人事・労務トラブル

クロージング後のPMI段階では、従業員の処遇変更や経営方針の転換をめぐる摩擦が起きやすくなります。売り手が「従業員の雇用を守ること」を重要条件として売却したにもかかわらず、成約後に大規模な組織変更が行われるケースも報告されています。PMIに関する取り決めを事前に契約書に明記しておかなかったことが、多くの場合において根本的な原因になっています。

PMIの全体像や実践ポイントについてはPMI(経営統合プロセス)で詳しく解説しています。


M&Aマッチングサイトでトラブルが起きやすい原因

売り手と買い手の情報格差を象徴する経営者同士の対話シーン

マッチングサイトを利用したM&Aでトラブルが多発する背景には、いくつかの構造的な要因があります。

売り手・買い手の情報格差

オーナーズ株式会社がM&A経験者523名を対象に実施したアンケート調査(PR TIMES掲載、2025年6月4日公表)では、回答者の9割以上が何らかの「後悔」を感じたと回答しており、売り手と買い手の情報格差がトラブルの引き金の一つになっているとされています。特定の民間企業による一回限りの調査であり数値の一般化には注意が必要ですが、傾向としては、買い手の多くが複数のM&Aを経験して交渉・契約に関するノウハウを蓄積しているのに対し、売り手にとってM&Aは一生に一度の経験であることが多く、この非対称性が売り手に不利な条件をもたらしやすい環境を生んでいる点は、実務上も広く指摘されています。

同調査では、M&A実施時に十分な情報が得られたと感じた売り手経営者は4割未満にとどまり、情報不足を実感した項目として「契約条件・条件交渉」が最多となっています。

デューデリジェンスの軽視

マッチングサイトでは費用を抑えることを優先する売り手・買い手の双方が集まりやすく、専門家による簡易DDや限定的なDDにとどまるケースがあります。DDが不十分なまま進んだ取引は、成約後に問題が表面化しやすく、発覚した税務リスク・未払い残業代などが後のトラブルの火種になります。

契約書の精度不足

弁護士や専門家が関与しないまま当事者間で作成された契約書は、条件の曖昧さや抜け漏れが生じやすい傾向があります。表明保証の範囲、補償条項の上限・下限、ロックアップ(成約後に売り手経営者が一定期間、対象会社の経営に留任・関与することを義務づける条項。競業避止条項とは別に定められることが多い)の範囲と内容、競業避止条項の地域・期間などが不明確なまま契約が締結されると、後に解釈の相違から紛争に発展するリスクがあります。

悪質な買い手の存在

中小企業庁が注意喚起を行っているように、不適切な目的でM&Aに参加する買い手が一定数存在します。会社の資産や顧客基盤を安く取得することだけを目的として、成約後の約束を守らない、あるいは詐欺的な手法で接触してくるケースもあります(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月)。マッチングサイト上の情報だけでは買い手の信頼性を判断するのが難しく、相手の実態確認が不十分なまま交渉が進んでしまう場合があります。

専門家サポートの欠如

M&Aには財務・税務・法務・労務など多分野の専門知識が必要です。しかしマッチングサイト経由の案件では、売り手が専門家に相談せずに直接交渉を進めるケースも少なくありません。専門家の関与なしに進んだ交渉では、契約書の落とし穴を見逃したり、税務上のリスクを把握できないまま売却価格を決定したりする問題が生じやすくなります。


M&Aマッチングサイトと従来の仲介会社の違い

マッチングサイトと仲介会社の違いを比較検討する経営者

売り手が利用できるM&Aの手段として、マッチングサイトのほかに仲介会社(M&A仲介会社)やFA(ファイナンシャルアドバイザー)があります。それぞれの特徴を整理すると以下のとおりです。

項目 M&Aマッチングサイト 仲介会社 FA(ファイナンシャルアドバイザー)
費用感 月額課金型・成功報酬型など料金体系は多様 着手金+成功報酬(レーマン方式が多い) 着手金+成功報酬(売り手専属の場合)
専門家サポートの深さ 限定的(プラットフォーム型は特に) 仲介者が双方をサポート 売り手または買い手のどちらか一方を専属で支援
候補先の探索範囲 広い(公開型なら多くの買い手に接触可能) 仲介会社のネットワーク内 FAのネットワーク内
手続き対応 当事者主導(専門家関与は別途必要) 仲介会社がある程度サポート FAが積極的にサポート
適したケース 小規模案件・費用を抑えたい場合 一般的な中小企業のM&A 大型案件・複雑な交渉が見込まれる場合

レーマン方式とは、成約価格に応じた料率で手数料を計算する方式です。中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂。登録M&A支援機関には2025年1月より適用。中小企業庁)によれば、レーマン方式について公的な標準料率は定められておらず、各社が独自に料率・算定方式や、料率とは別に定める最低手数料(ミニマムフィー)を設定しています。小規模な案件では、成約金額にレーマン方式を適用した金額よりミニマムフィーの方が高くなることもあるため、依頼前に料率とミニマムフィーの両方を確認し、比較することが重要です。

どの手段を選ぶにしても、専門家の関与なしに売り手単独で進めることはリスクを高める要因になります。マッチングサイトを使う場合は「出会いの場として活用し、交渉・契約段階では弁護士・税理士に相談する」という組み合わせが、トラブル防止の観点から有効です。


M&Aマッチングサイトのトラブルを防ぐための対策

弁護士に早期相談する経営者の安心した対話シーン

トラブルの多くは、事前の準備と適切な専門家の関与によって防ぐことができます。以下に、売り手経営者が実践できる具体的な対策を整理します。

信頼できる買い手かどうかを事前に確認する

マッチングサイトを通じて買い手候補が現れた際は、以下の点を必ず確認してください。

  • 法人であれば登記情報(法務局のオンラインサービスで取得可能)を確認する
  • 決算書・事業計画書など、買い手側の財務状況を示す資料の開示を求める
  • 買収資金の裏付け(自己資金か金融機関の融資予定か)について確認する
  • 過去の買収実績・PMIの実績について具体的な情報を確認する
  • 金融機関や取引先からの評判について情報収集する
  • 不自然なほど好条件を提示してくる場合は特に慎重に検討する

なお、買い手候補に仲介会社・FA・プラットフォーム運営者といった支援機関が関与している場合は、その支援機関がM&A支援機関登録制度に登録済みか、手数料体系を公表しているかもあわせて確認しておくと安心です(同制度は仲介者・FA等の支援機関を対象とする登録制度であり、買い手企業そのものを対象とするものではありません)。

条件が良すぎると感じる提案や、急かすような交渉姿勢には注意が必要です。中小企業庁の注意喚起でも「少しでも違和感を感じる場合は専門家に相談を」と明記されています(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月)。

秘密保持契約(NDA)の締結を最初に行う

情報開示の前に必ずNDA(秘密保持契約)を締結してください。NDAは、交渉において開示した企業情報が外部に漏洩しないよう法的に保護するための契約です。特に、マッチングサイト上の接触段階から具体的な情報をやり取りする場合、NDAなしで情報を提供すると、競合他社に自社の戦略・顧客情報・財務状況が渡るリスクがあります。

専門家を早期に関与させる

M&Aの交渉段階に入ったら、できるだけ早期に弁護士・税理士・M&Aアドバイザーへの相談を検討してください。特に以下の局面では専門家の関与が不可欠です。

  • 基本合意書(MOU)の内容確認・署名前
  • デューデリジェンスへの対応準備
  • 最終契約書(DA)の内容確認・署名前
  • 税務上の最適な売却スキームの選定(株式譲渡か事業譲渡かによって税負担が大きく異なる)

なお、一社の専門家だけでなく、中立的な第三者の意見を確認することも有効です。もし「今の進め方が本当に正しいのか確認したい」と感じている場合は、M&Aインサイトの無料相談をご活用ください。

契約書を精緻に作成し、曖昧な条件を残さない

基本合意書・最終契約書のいずれについても、以下の事項を明確に定めることが重要です。

  • 譲渡対価の金額・支払い時期・支払い方法(分割払いの場合は各回の金額と期限)
  • 表明保証の対象範囲と違反が生じた場合の補償上限額・補償期間
  • 競業避止条項の内容(禁止する業種・地域・期間)
  • ロックアップ(売り手経営者の留任義務)の期間・内容・報酬
  • 経営者保証の解除に向けた取り決めの有無
  • 成約後の経営参画条件(役員としての継続期間・報酬)
  • 従業員・取引先への説明・引継ぎ方法

特に分割払い・後払いを含む対価設定は、不払いリスクを生じさせる可能性があるため、担保設定(不動産抵当・連帯保証など)や支払い保証の条件、エスクローの活用などを契約書に盛り込むことを弁護士に相談してください。税務・法務の最終判断は、必ず税理士・弁護士等の専門家に確認されることをおすすめします。

デューデリジェンスに備えた情報整備を行う

売り手側のDD対応準備が不十分だと、成約後に「売り手が意図せず不正確な情報を開示した」と見なされるリスクがあります。事前に以下を整理・確認しておくことが有効です。

  • 過去3〜5年分の確定申告書・決算書の整合性確認
  • 未払い賃金・残業代の有無の確認
  • 知的財産権(特許・商標)の登録状況の確認
  • 取引先・顧客との契約書の整備(チェンジオブコントロール条項の有無の確認)
  • 係争中の案件・訴訟リスクの把握

M&Aマッチングサイト特有のリスク:情報セキュリティと情報漏洩への備え

機密書類を慎重に管理する経営者の情報セキュリティ対策の様子

M&Aマッチングサイトを利用する際、経済的・法的なトラブルと並んで見落とされがちなのが、情報セキュリティ上のリスクです。

M&Aの交渉過程では、自社の財務情報・取引先リスト・従業員情報・ビジネスモデルの詳細など、機密性の高い情報を買い手候補に開示することになります。マッチングサイト上でのやり取りでは、以下のリスクに注意が必要です。

  • 同業者・競合他社が「買い手候補」として登録し、情報収集目的で接近してくるケース
  • 交渉が不成立に終わった後に、開示した情報が不当に利用されるケース
  • マッチングサイト自体がサイバー攻撃の対象となり、登録情報が漏洩するケース

対策として、NDAの締結を徹底することに加えて、次の運用を徹底することが有効です。開示する情報は段階的に絞り込み、初期段階ではノンネームシート(企業名を伏せた概要資料)のみを提示します。買い手候補の実態確認(法人登記・事業の実在確認)を最初のコンタクト後すみやかに行います。マッチングサイト上のやり取りはサイトのメッセージ機能を使うことで記録が残り、後の証拠保全にも役立ちます。


トラブルが発生したときの対処法

トラブル発生後に弁護士へ相談し状況を整理する経営者

事前の対策を講じていてもトラブルが生じることがあります。トラブルが発生した際の初期対応を誤ると、解決が長期化したり損害が拡大したりする可能性があります。

証拠の保全と事実関係の整理

トラブルが生じた場合、まず証拠を保全することが最優先です。交渉中のメール・チャットのやり取り、契約書とその附属書類、議事録・合意事項の記録、資金移動の記録(振込明細など)をすべて保存・整理してください。後から「言った・言わない」の問題になるケースも多く、文書化された証拠の有無が解決の鍵を握ります。

弁護士への相談と法的手続きの検討

証拠を整理したら、M&A案件の経験を持つ弁護士に速やかに相談してください。トラブルの内容によっては、損害賠償請求・契約解除・表明保証条項に基づく補償請求などの法的手続きが選択肢になります。日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル(0570-783-110)」や各地の弁護士会でも相談窓口が設けられています。

公的機関の相談窓口の活用

各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターは、M&Aに関するトラブルを含む相談を受け付けています。中小企業庁の注意喚起でも、「違和感を感じた場合は弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談を」と案内されており(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月)、無料で専門的なアドバイスを受けられる場合があります。

専門家に相談する前段階として、M&Aの中立的な第三者意見(セカンドオピニオン)を求めることも有効です。現在の状況を整理し、リスクの観点から課題を洗い出してもらうことで、適切な対処法を見極めるための判断材料が得られます。お気軽にM&Aインサイトの無料相談をご利用ください。

第三者の視点でM&Aの進め方を確認したい場合はM&Aセカンドオピニオンの活用も検討してみてください。


M&Aマッチングサイトのトラブルを防ぐ事前チェックリスト

事前チェックリストを確認しながら準備を進める経営者

以下のチェックリストを、マッチングサイトを利用したM&Aを進める前の確認にお役立てください。

準備段階のチェック

  • 会社売却の目的・条件(価格・従業員の処遇・自分の関与期間)を文書化した
  • 過去3〜5年分の決算書・確定申告書の内容を自分で把握した
  • 未払い賃金・残業代など潜在的な労務リスクを確認した
  • 取引先との契約にチェンジオブコントロール条項が含まれているか確認した
  • 知的財産権(商標・特許など)の登録状況を確認した
  • 借入金の経営者保証の有無と、解除の可能性を金融機関に確認した

買い手との交渉段階のチェック

  • 交渉開始前にNDA(秘密保持契約)を締結した
  • 買い手候補の法人登記・財務状況・買収実績を確認した
  • 買い手候補の買収資金の裏付け(自己資金・融資予定等)を確認した
  • 仲介会社・FA等が関与する場合は、M&A支援機関登録制度の登録有無や手数料体系の公表状況を確認した
  • 急がせる・過剰な好条件など、不自然な点がないか確認した
  • 基本合意書の内容を弁護士に確認してもらった
  • 対価の支払い方法(一括か分割か)と担保・エスクロー等の有無を明確にした

契約・クロージング段階のチェック

  • 最終契約書の表明保証の範囲と補償条項の上限・期間を確認した
  • 競業避止条項・ロックアップ(留任義務)の内容を理解した
  • 従業員の処遇に関する条件を契約書に明記した
  • 税理士に売却スキームの税務上の影響を確認した
  • クロージング時の対価受取と株式・事業の引き渡しの順序を確認した

中小企業庁が警告するM&Aトラブルの現状

公的機関の注意喚起情報を確認する経営者の様子

中小企業庁は2024年8月30日、「M&Aに関するトラブルにご注意ください」と題したページを公表し、不適切な買い手によるトラブルが実際に発生していることを明示しました(中小企業庁公式サイト「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月30日公表)。

同ページが特に注意を促している特徴として、「マッチングサイトを利用して接触してくる買い手」が明示されています。公表されているトラブル事例には以下が含まれます。

  • 個人保証がクロージング後も解除されなかった事例
  • 分割払いの対価・退職慰労金の後払いが履行されなかった事例

同庁は、トラブル対策として事業承継・引継ぎ支援センターや弁護士への相談を推奨しており、「中小M&Aガイドライン」(第3版、2024年8月改訂。登録M&A支援機関には2025年1月より適用)においても売り手の権利保護に関する内容が強化されています。

また、M&Aプラットフォームについては、経済産業省・中小企業庁が2025年8月5日に公表した「中小M&A市場改革プラン」においても、プラットフォームの適正化・利用者保護の強化が課題として位置づけられています。これらの動向からも、行政レベルでマッチングサイトを通じたトラブルの深刻さが認識されていることが分かります。


よくある質問(FAQ)

Q1. M&Aマッチングサイトを使うこと自体、リスクが高いのでしょうか?

M&Aマッチングサイトを使うこと自体がリスクというわけではありません。多くの実績ある取引がマッチングサイトを通じて成立しています。ただし、専門家のサポートが薄い環境で進めると、交渉・契約段階でのトラブルリスクが高まります。サイトで相手を見つけた後の交渉・契約段階では弁護士・税理士に相談することで、リスクを大幅に減らすことができます。

Q2. 成約前のマッチング段階でトラブルになることはありますか?

あります。NDA締結前に詳細な情報を開示してしまったことによる情報漏洩や、同業者・競合他社が調査目的で接近してくるケースが報告されています。交渉初期段階では企業名を伏せたノンネームシートのみを提示し、NDA締結後に詳細情報を開示する手順を守ることが重要です。

Q3. 成約後に買い手から「表明保証違反だ」と主張された場合、どうすればよいですか?

まず、指摘されている内容と根拠を書面で提出するよう求め、内容を把握することが先決です。次に、M&A案件の経験がある弁護士に相談し、契約書の補償条項(補償金額の上限・補償期間など)の内容を踏まえて対応方針を決定します。表明保証については補償上限額が契約書に定められている場合が多く、無限責任を負うものではありません。ただし、売り手が意図的に情報を隠蔽した場合は法的責任が生じる可能性があるため、最終判断は弁護士に確認することをおすすめします。

Q4. 成約後に個人保証(経営者保証)が解除されなかった場合はどうなりますか?

経営者保証の解除は金融機関が判断するものであり、買い手が単独で保証解除を「約束する」こと自体が法的に有効とはいえません。交渉段階で買い手が「保証解除できる」と説明していた場合、その発言が問題のある勧誘に当たるかどうかも含めて弁護士に相談することが重要です。また、事業承継・引継ぎ支援センターや金融機関に相談することで、保証解除に向けた助言を受けられる場合があります(中小企業庁「経営者保証に関するガイドライン」を参照)。

Q5. 対価の後払い・分割払いを求められた場合、応じても大丈夫ですか?

対価の一部を後払い・分割払いとする契約は、支払いが履行されないリスクを伴います。応じる場合は、担保の設定(不動産抵当・連帯保証など)や支払い保証の仕組み、エスクローの活用などを契約書に盛り込むことを弁護士に相談してください。また、分割払いの条件が妥当かどうか、他の案件と比較した観点で中立的な第三者に意見を求めることも有効です。不安な点があればM&Aインサイトの無料相談をご活用ください。

Q6. 買い手候補の信頼性をどうやって確認すればよいですか?

法人の場合は法務局のオンラインサービス(登記情報提供サービス)で法人登記の内容を確認できます。また、決算書の開示を依頼するほか、過去のM&A実績や買収資金の裏付けについての具体的な情報提供を求めることが有効です。買い手候補に仲介会社・FAが関与している場合は、その支援機関がM&A支援機関登録制度に登録されているか、手数料体系を公表しているかも確認しておくとよいでしょう(同制度は仲介者・FA等の支援機関を対象とするもので、買い手企業自体を対象とする制度ではありません)。条件が良すぎる提案や急かす姿勢は警戒サインとして受け止めてください。中小企業庁も「少しでも違和感を感じる場合は専門家に相談を」と促しています(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」2024年8月)。


まとめ:M&Aマッチングサイトのトラブルを防ぐために

M&Aマッチングサイトは、売り手経営者が買い手候補を広く探すための有効な手段です。しかし、マッチング後の交渉・契約・クロージング・PMIの各段階において、専門知識なしに進めると多くのトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

この記事で解説したトラブルの多くは、以下の3つの対策で予防できます。

  1. 事前準備として自社の財務・法務状況を正確に把握し、情報を整備しておく
  2. NDA締結・買い手の信頼性確認・専門家(弁護士・税理士)の早期関与を徹底する
  3. 基本合意書・最終契約書の内容を精緻に確認し、曖昧な条件を残さない

「この条件で進めていいのか不安」「買い手の提案の妥当性を中立的な立場で確認したい」という経営者の方には、第三者によるセカンドオピニオンの活用をお勧めします。M&Aインサイトでは、成功報酬なし・完全無料で、売り手経営者の視点に立った中立的なアドバイスを提供しています。

M&Aに関することでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


監修者情報

本記事は、一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事・森沢雄太氏(日本M&Aセンター出身、M&A成約実績100件超)の監修のもと作成しています。

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