会社売却の価格はどう決まる?相場・算定方法・価格を高めるポイントを2026年最新版で解説

会社売却の価格・相場・算定方法を解説するM&Aセカンドオピニオン記事のアイキャッチ

「自分の会社はいくらで売れるのだろう?」——M&Aや事業承継を検討し始めた経営者の多くが、最初に抱く疑問です。しかし、会社の売却価格は株価のように一目でわかるものではなく、複数の要素が複雑に絡み合って決まります。正確な情報がないまま交渉に臨むと、適正価格を大きく下回る条件で成約してしまうリスクもあります。

経営者として数十年かけて築いてきた会社の価値を、しっかりと正当に評価してもらいたい——その気持ちは当然のことです。そしてそのためには、価格がどのように算定されるのかを売り手自身が理解しておくことが非常に重要です。

そこで本記事では、会社売却価格の相場感から算定方法、価格に影響を与える要素、そして価格を高めるための具体的なポイントまでを、売り手経営者の視点でわかりやすく解説します。


目次

会社売却とは何か

会社売却(株式譲渡)の基本概念を示すビジネスシーン

会社売却とは、自社の株式を第三者に譲渡することで経営権を移す手続きです。M&Aの手法の中でも最も一般的なスキーム(取引形態)の一つであり、売り手経営者は対価として現金を受け取ります。

会社売却と事業売却の違い

会社売却と混同されやすいのが「事業売却(事業譲渡)」です。両者の違いを整理しておきましょう。

項目会社売却(株式譲渡)事業売却(事業譲渡)
売却対象会社そのもの(株式)特定の事業部門・資産
引き継ぐもの資産・負債・契約すべて指定した資産・契約のみ
税金の種類譲渡所得税(売り手個人)法人税・消費税(法人)
手続きの複雑さ比較的シンプル許認可の移転等が必要

中小企業のオーナー経営者が後継者不在を理由にM&Aを活用する場合、会社全体を売却する株式譲渡を選択するケースが大半です。株式譲渡では売却対価が個人に入るため、手元に残るキャッシュを最大化しやすいという特徴もあります。

会社売却と廃業の違い

後継者不在に悩む経営者にとって、会社売却の選択肢とよく比較されるのが廃業です。廃業は会社を清算・解散することで、資産売却後に残る金額を受け取ります。一方、会社売却では「のれん(営業権)」と呼ばれる超過収益力への対価も含めて売却価格に反映されます。そのため一般的に、収益力のある会社であれば廃業よりも売却のほうが経営者の手取りが多くなる傾向があります。


会社売却のメリット・デメリット

会社売却のメリット・デメリットを検討する経営者のビジネスシーン

売却価格を考える前に、まず会社売却という選択肢の全体像を把握しておくことが重要です。

会社売却の主なメリット

まず事業の存続という観点では、買い手企業の経営資源やブランド力を活用することで、従業員の雇用継続や取引先との関係維持が実現しやすくなります。廃業した場合は従業員が職を失うケースもありますが、M&Aによる売却であれば雇用を守りながら事業を引き継ぐことが可能です。

また経営者個人の観点では、会社の借入金に対して設定されていた個人保証(経営者保証)の解消につながることがあります。長年にわたり事業リスクを個人で背負ってきた経営者にとって、この点は精神的な解放という意味でも大きなメリットです。加えて、長年の経営努力に対する対価を一括で受け取れるため、老後の資金形成や新たな挑戦への原資とすることもできます。

さらに事業成長の観点では、自社単独では難しかった事業拡大を、買い手企業とのシナジー効果によって実現できるケースもあります。大手企業の傘下に入ることで販路が広がったり、資金力・人材・技術を活用して事業が飛躍的に成長した事例も少なくありません。

会社売却の主なデメリット

一方で、売却後は経営の自由度が失われます。買い手企業の方針に従って事業運営を行うことになるため、これまでの経営スタイルや社風が変わる可能性があります。経営者として会社に残る場合も、意思決定のプロセスが変わることを事前に理解しておくことが重要です。

また、デューデリジェンス(買収監査)の過程で財務・法務・人事などの社内情報が開示されるため、情報管理に一定の注意が必要です。万が一交渉が破談となった場合に備え、情報漏洩リスクを最小化する秘密保持契約(NDA)の内容を事前にしっかり確認しておくことが大切です。希望価格で成約できない可能性もゼロではないため、事前の適切な準備と相場感の把握が不可欠です。


会社売却価格の相場

会社売却価格の相場を示す財務データ検討シーン

「会社売却の相場はいくらか」という問いに対して、明確な一つの答えはありません。業種・規模・収益力・成長性・タイミングによって、価格は大きく変わります。ただし、参考となる目安はいくつか存在します。

年倍法(年買法)による目安

中小企業のM&Aで広く使われる簡便的な計算方法が「年倍法(年買法)」です。計算式は次のとおりです。

売却価格の目安 = 純資産 + 営業利益 × 2〜5年分

たとえば純資産が5,000万円、直近の営業利益が2,000万円の会社であれば、「5,000万円 + 2,000万円 × 3年 = 1億1,000万円」程度が一つの目安となります。ただし、この倍率(マルチプル)は業種や市場環境によって異なるため、あくまで参考値として理解してください。

EBITDAマルチプルによる目安

規模が大きい案件では「EBITDAマルチプル法」も用いられます。EBITDAとは利払前・税引前・減価償却前利益を指し、実務上は「営業利益+減価償却費(減価償却・償却費)」または「税引前利益+支払利息+減価償却費+無形固定資産償却費」などで把握される指標です。会社の実質的なキャッシュ創出力を示すものとして、M&Aの評価で広く使われています。

企業価値(EV)の目安 = EBITDA × EV/EBITDA倍率(3〜10倍程度) 株式価値(売却価格)の目安 = 企業価値(EV)− 純有利子負債(有利子負債 − 現預金)

EBITDAに倍率を掛けた数値はまず企業価値(EV)の目安となります。売り手が受け取る株式価値(売却価格の目安)は、そこから純有利子負債(借入金などの有利子負債から手元現預金を差し引いた金額)を控除して算定します。借入金が多い会社ほど、企業価値に比べて手元に残る売却対価は小さくなる点に留意が必要です。

業種や案件条件によって倍率は大きく変動します。IT・ソフトウェア業種では高い倍率になる事例も見られる一方、製造業・建設業では相対的に低い水準となることが多い傾向ですが、成長性・収益安定性・顧客集中度などの個別要因によって案件差が大きく、一律の水準として捉えることは適切ではありません。

業種別の相場感

業種によって売却価格の水準は大きく異なります。以下は市場で見られる傾向の参考値であり、成長性・収益の安定性・顧客集中度・許認可の有無・人材構成・オーナー依存度といった個別要因によって大きく変動します。表の数値はあくまで感覚値として参照してください。

業種営業利益倍率の参考値評価で重視される要因
IT・SaaS5〜15倍将来性・成長性・解約率・ARR
医療・介護4〜8倍許認可・人材の希少性・稼働率
製造業3〜6倍技術力・設備・顧客基盤の安定性
小売・飲食2〜5倍ブランド力・立地・顧客基盤
建設・土木3〜5倍技術者資格・実績・地域シェア

これらの数値は公的な統計や評価ガイドラインに基づく一律の基準ではなく、案件ごとの条件によって上下します。自社の売却価格を正確に把握するには、後述の算定方法を用いた専門的な個別評価が不可欠です。


会社売却価格の算定方法

会社売却価格の算定方法(DCF・マーケット・コストアプローチ)を検討するシーン

会社の価値(企業価値)を評価する手法は大きく3つのアプローチに分けられます。実務では複数の手法を組み合わせて評価することが一般的です。

マーケットアプローチ(類似企業比較法)

上場している類似企業や、過去に成約した類似のM&A案件のデータをもとに、自社の価値を算定する手法です。市場での取引実績に基づくため、客観性が高いという特徴があります。

代表的な手法として「マルチプル法(倍率法)」があります。類似上場企業のPER(株価収益率)やEV/EBITDA倍率を参照し、自社の利益指標に掛け合わせて価値を算出します。ただし、非上場の中小企業は上場企業に比べて株式の流動性が低いため、非流動性ディスカウント(流動性の低さを反映した減額)が考慮されることがあります。その率は案件の特性や比較対象によって異なり、国内で合意された一律の水準があるわけではありません。

インカムアプローチ(DCF法・収益還元法)

会社が将来にわたって生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて、企業価値を算定する手法です。「DCF法(Discounted Cash Flow)」とも呼ばれます。

計算の流れは以下の通りです。まず将来の事業計画をもとに各年のフリーキャッシュフローを予測します。次に、資本コストなどをもとに決定した「割引率」を使って、それらを現在価値に換算します。最後に予測期間外の価値(ターミナルバリュー)を加えて合計します。

将来の成長性が高い企業ほど高く評価されるのが特徴で、スタートアップや成長フェーズにある企業の評価に適しています。一方で、将来予測の前提が変わると結果も大きく変わるため、事業計画の根拠を丁寧に説明することが重要です。

コストアプローチ(純資産法・修正純資産法)

会社が保有する資産と負債をもとに企業価値を算定する手法です。貸借対照表(バランスシート)の純資産をベースにするため「純資産法」とも呼ばれます。

簿価ベースの純資産をそのまま使う方法と、資産・負債を時価に修正した「修正純資産法」があります。修正純資産法では、不動産の含み益・有価証券の時価評価差額に加え、デューデリジェンスで判明した簿外債務(帳簿に載っていない潜在的な債務)や偶発債務についても、内容を精査したうえで評価に織り込む場合があります。

この手法は収益性の低い会社や資産保有型の会社(不動産や投資有価証券を多く持つ場合など)に適しています。一方で、人材・顧客基盤・ブランドといった無形資産の価値が反映されにくいという限界もあります。

算定方法の比較

手法主な活用場面メリット注意点
マーケットアプローチ市場データが豊富な業種客観性・説得力が高い類似企業選定の主観が入る
インカムアプローチ(DCF)成長性の高い企業将来価値を反映できる前提次第で結果が変わる
コストアプローチ資産保有型・低収益企業わかりやすく保守的無形資産を反映しにくい

実際のM&A交渉では、複数の手法で算出した価値を参照しながら最終的な売却価格が決定されます。どの手法を重視するかは、買い手の立場や業種によっても異なります。


売却価格に影響を与える要素

会社売却価格に影響する要素を分析するビジネスシーン

算定手法によって計算された数値はあくまでスタート地点です。最終的な売却価格は、以下のような要素によって上下します。

企業規模と収益性

売上高・営業利益・EBITDAなどの収益指標は、価格の根幹となる要素です。収益規模が大きいほど、また利益率が高いほど、一般的に高い評価を得やすくなります。特に「収益の安定性」は買い手が重視する指標で、単発の利益より継続的な利益のほうが高く評価されます。

業種と業界動向

市場が成長トレンドにある業種は、将来性への期待から価格が高くなる傾向があります。逆に市場が縮小傾向にある業種や競合が激化している業界では、同水準の収益でも評価が低くなることがあります。M&Aの件数が多い業種ほど類似事例が豊富で、相場感が形成されやすい面もあります。

将来性・成長性

現時点の収益だけでなく、今後の成長可能性も価格に大きく影響します。成長が見込める事業計画・新規顧客の開拓余地・未開拓の市場があることを具体的に示せると、評価が上がりやすくなります。一方で、主要顧客や取引先が限られている(売上が特定顧客に集中している)場合はリスクとして評価が下がる可能性があります。

財務状況と負債

借入金・未払い税金・偶発債務(将来発生する可能性のある損失)などの負債は、売却価格から控除されます。特に簿外債務(帳簿に記載されていない潜在的な債務)があると、デューデリジェンスで発見された際に価格交渉に大きく影響します。財務の透明性が高いほど買い手の安心感が増し、スムーズな価格合意につながります。

ブランド力・無形資産

特許・技術・顧客リスト・社員のスキル・ブランド力・取引先との関係性などの無形資産も、企業価値を構成する重要な要素です。特に業界内での知名度やブランド力は、数字では表れにくいものの実質的な競争優位性として評価されます。

M&Aスキーム(取引形態)

株式譲渡か事業譲渡かによって、税務上の取り扱いや手続きが大きく異なるため、売り手の手取り額や実務負担に相当の影響が生じます。スキームの選択は、税理士・弁護士などの専門家と事前に十分確認することが重要です。

シナジー効果

買い手企業が売り手の事業を取り込むことで得られるシナジー効果(売上拡大・コスト削減・新市場参入など)が大きいほど、買い手は高い価格を提示する傾向があります。自社の強みが買い手にとってどのような価値をもたらすかを把握し、交渉の中で適切に伝えることが重要です。


売却価格を高めるためのポイント

会社売却価格を高めるための戦略・準備を進める経営者シーン
会社売却にかかる費用・税金を確認する経営者と税理士のシーン

売却価格は、準備次第で高めることが可能です。以下に実践的なポイントをまとめます。

財務状況を整理・改善する

売却前の数年間にわたって財務状況を整理しておくことが、評価額向上につながります。不要な資産の売却、借入金の圧縮、不採算事業の整理などを進めておくと、買い手の財務デューデリジェンスでポジティブな印象を与えられます。また、決算書・試算表が正確かつタイムリーに整備されていることも、交渉をスムーズに進めるうえで重要です。

自社の強みを明確に言語化する

自社が持つ独自性・競争優位性を、経営者自身が明確に言語化しておくことが大切です。「なぜ顧客は自社を選ぶのか」「他社にはないものは何か」——こうした問いへの答えを具体的なデータや事例とともに示せると、交渉の場での説得力が増します。買い手の目線で見て魅力的に映る強みを意識してアピールすることが重要です。

複数の買い手候補を検討する

特定の1社だけを相手に交渉するのではなく、複数の買い手候補と並行して交渉することで、競争原理が働きやすくなります。選択肢が一つしかないと、条件面での譲歩を迫られるリスクが高まります。候補先は同業他社だけでなく、異業種の企業や投資ファンドまで広く検討するとよいでしょう。

適切な売却タイミングを見極める

業績が好調なタイミング、業界のM&A市場が活発なタイミングを選ぶことで、より有利な条件で交渉を進められます。経営者の年齢・健康状態・後継者問題の緊急度なども加味しながら、できれば「急がなければならない」状況になる前に動き始めることが理想的です。

一般的に、直近2〜3期の業績が右肩上がりで推移しているタイミングが、最も高い評価を得やすいとされています。逆に業績が悪化している局面や、経営者の健康問題・後継者問題が表面化してから動き始めると、売り手の交渉力が弱まりやすくなります。「売りたいと思ったとき」より「売れる状況にあるとき」に動き始めることが、価格最大化の観点から重要です。また業界全体のM&A動向(市場の活況・不況)も売却価格に影響するため、日頃から業界情報にアンテナを張っておくことが有効です。

専門家によるサポートを受ける

M&Aのプロセスは複雑で、法務・財務・税務にまたがる専門知識が必要です。仲介会社・FА(財務アドバイザー)・税理士・弁護士といった専門家のサポートを受けることで、適正な価格での成約可能性が高まります。なお、専門家の選定にあたっては、その報酬体系や利益相反の有無を事前に確認しておくことをお勧めします。

また、既に仲介会社のサポートを受けている場合でも、「提示された条件は適正か」「他に良い選択肢はないか」を第三者的な視点で確認したいと感じる経営者も多くいます。そうした場面では、中立的な立場のセカンドオピニオンを活用することも一つの選択肢です。M&Aインサイトが運営するM&Aセカンドオピニオンサービスは、完全無料・成功報酬なしで相談に応じており、売り手経営者に寄り添う立場から客観的なアドバイスを提供しています。


会社売却にかかる費用と税金

会社売却にかかる費用・税金を確認する経営者と税理士のシーン

売却価格が決まっても、そこから各種費用・税金を差し引いた「手取り額」が最終的な受取金額です。費用の種類を事前に把握しておくことが重要です。

各種税金

株式譲渡による会社売却の場合、売却益(売却価格から取得費用を差し引いた金額)に対して所得税・住民税が課税されます。原則として申告分離課税が適用され、税率は約20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)です。

一方、事業譲渡を選択した場合は、譲渡益が法人税等の課税対象となります。消費税については、棚卸資産・機械設備などの課税資産の譲渡に課されますが、土地や有価証券などの非課税資産は消費税の対象外です。スキームによって税負担が大きく変わるため、税理士への相談は不可欠です。

専門家・仲介会社への報酬

M&A仲介会社やFAに依頼する場合、成功報酬が発生します。多くの会社では「レーマン方式」と呼ばれる段階的な報酬体系が採用されています。一般的な例では取引金額の5億円以下の部分に5%、5億円超〜10億円以下の部分に4%、10億円超〜50億円以下の部分に3%——といった形で、金額が大きくなるほど料率が下がる階段式の計算方法です。

ただし「何を基準額とするか(譲渡価額・企業価値・移動総資産額など)」は仲介会社によって異なり、同じ売却価格でも手数料が大きく変わることがあります。また多くの会社が最低手数料(数百万〜1,000万円程度)を設けているほか、着手金・月額報酬・中間報酬の有無も会社ごとに異なります。契約前に報酬の計算基準と体系を十分に確認し、納得したうえで依頼することが重要です。

デューデリジェンス関連費用

買い手側のデューデリジェンス(DD)に伴い、売り手側でも弁護士・公認会計士・税理士への相談費用が発生することがあります。特に財務DD・法務DDへの対応は、社内の経理・法務担当者だけでは対応しきれないケースも多く、専門家への依頼費用は案件の規模・DDの範囲・複雑さによって大きく異なります。事前に概算費用を専門家に確認しておくことをお勧めします。


会社売却の手続きの流れ

会社売却の手続き・プロセスの流れを確認するビジネスシーン

価格交渉に向けて、M&Aプロセスの全体像を把握しておきましょう。売却価格は最終的に交渉によって決まりますが、各フェーズで何が行われているかを理解していることが、交渉での判断精度を高めることにつながります。また、どのフェーズで価格の見直しが発生しやすいかを知っておくことも、売り手として重要な準備です。

①事前準備・専門家の選定

まず自社の企業価値の概算を把握し、売却の目的・希望条件を整理します。仲介会社・FАなど、サポートを依頼する専門家を選定します。

②買い手候補の探索・アプローチ

仲介会社を通じて、あるいはM&Aマッチングプラットフォームを活用して買い手候補を探します。秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、相手企業と初期的な情報交換を行います。

③LOI(基本合意書)の締結

買い手候補との交渉が進み、大まかな条件(価格・スキーム・スケジュール等)が合意できたら、LOI(Letter of Intent:基本合意書)を締結します。LOI全体としては最終的な法的拘束力を持たないことが多いですが、独占交渉条項・秘密保持条項など一部の条項については拘束力を持たせるのが実務上の一般的な形式です。LOI締結後は、独占交渉期間が設定されたうえでデューデリジェンスへと移行するケースが多く見られます。

④デューデリジェンス(DD)の実施

買い手による財務・法務・事業DD(デューデリジェンス、買収監査)が実施されます。売り手は必要書類を準備・開示する必要があります。DDの結果によっては、価格の再交渉が行われることもあります。

⑤DA(最終契約書)の締結

最終的な価格・条件が合意されたら、DA(Definitive Agreement:最終契約書)を締結します。株式譲渡契約書(SPA)とも呼ばれます。

⑥クロージング(決済・引き渡し)

クロージング日に売買代金の受け渡しと株式移転手続きを完了します。これにより正式に経営権が移転します。

M&Aのスケジュール目安

フェーズ目安期間
準備〜候補探索1〜3ヶ月
交渉〜基本合意1〜3ヶ月
デューデリジェンス1〜2ヶ月
最終契約〜クロージング1〜2ヶ月
全体6ヶ月〜1年程度

業種や案件の複雑さによってスケジュールは変わります。事前の準備が整っているほど、全体のプロセスはスムーズに進みます。


赤字会社でも売却できるか?

赤字会社の売却可能性を専門家に相談する経営者シーン

「現在赤字だから売れない」と考えている経営者もいますが、必ずしもそうではありません。赤字であっても、以下のような価値があれば売却できる可能性があります。

保有している許認可(建設業許可・医療機関の開設許可など)が価値を持つケース、優れた技術・特許・顧客基盤を持つケース、優秀な人材が在籍しているケース、立地条件が良く不動産価値があるケースなどが代表的です。

ただし赤字の原因・構造によって評価は大きく変わります。一時的な要因による赤字なのか、構造的な問題なのかを整理して伝えることが重要です。また、赤字の場合は純資産ベースで価格を算定されやすくなるため、のれん(超過収益力)が価格に上乗せされにくいケースもあります。赤字状態での売却は、黒字時の売却に比べて交渉が複雑になる場合が多く、早期に専門家へ相談することをお勧めします。


会社売却に関するよくある質問

M&Aセカンドオピニオンを活用する経営者と中立的な専門家の相談シーン

会社を売却すると従業員はどうなるのか?

株式譲渡による会社売却の場合、会社そのものが存続するため、従業員の雇用契約は原則としてそのまま引き継がれます。買い手企業が雇用継続を前提とした案件が大半であり、交渉の過程で従業員の待遇・雇用条件の維持を条件として明示することも可能です。

一方で事業譲渡の場合は、従業員を個別に再雇用する手続きが必要になります。それぞれのスキームで従業員への影響が異なるため、スキームの選択にあたっては従業員への影響を十分に考慮したうえで判断することが重要です。

会社売却にかかる期間はどのくらいか?

一般的には、売却の決意から最終契約(クロージング)まで6ヶ月〜1年程度かかることが多いです。買い手候補が複数いてスムーズに交渉が進む場合は半年以内で完了するケースもありますが、複雑な案件や買い手探しに時間がかかるケースでは1年以上かかることもあります。

時間がかかる主な理由は、買い手候補の探索・絞り込み、デューデリジェンスでの資料準備・対応、価格・条件交渉の調整などです。売却を検討し始めた段階で、できるだけ早めに準備を開始することが、理想的なタイミングでの売却につながります。

会社売却で損することはあるか?

売却価格が帳簿上の純資産を下回るケースでは、経営者にとって期待よりも低い結果となることがあります。また、税金・仲介手数料・専門家費用などを差し引いた手取り額が、売却価格よりも大幅に減少するケースもあります。

特に注意が必要なのは、仲介会社の成功報酬体系をよく確認せずに契約してしまうケースです。売却価格が高額になるほど手数料の絶対額も大きくなるため、複数の専門家に意見を聞いたうえで、条件・手数料体系を比較検討することをお勧めします。

売却先はどのように探すのか?

主な探し方は以下の3つです。M&A仲介会社に依頼する方法では、仲介会社が保有するネットワークや登録企業の中から候補を探してもらえます。M&Aマッチングプラットフォームを活用する方法では、オンラインで広く買い手候補を募ることができます。FA(財務アドバイザー)に依頼する方法では、売り手または買い手どちらか一方の立場でアドバイスを行い、候補先探しから交渉・条件整理までをサポートしてもらえます。仲介会社が売り手・買い手双方の仲介を行うのに対し、FAは依頼した側の利益を重視する立場でサポートするという点が大きな違いです。ただし利益相反の有無や役割範囲は契約内容によって異なるため、依頼前に確認することが重要です。

それぞれに特徴・費用・向き不向きがありますが、いずれの場合も秘密保持契約(NDA)を早期に締結し、情報漏洩リスクを管理しながら進めることが基本です。


セカンドオピニオンを活用すべき場面

会社売却を進めるなかで、仲介会社から提示された条件に疑問や不安を感じることがあります。たとえば「この価格は本当に適正なのか」「この条件に乗っていいのか」「スケジュールが急すぎる気がする」といった場面です。

こうした疑問を抱えたまま成約してしまうと、後悔につながることもあります。M&Aのプロセスは情報の非対称性が生じやすく、売り手経営者が不利な立場に置かれやすい構造があります。そのため、中立的な第三者によるセカンドオピニオンが有効な場面があります。

M&Aセカンドオピニオン協会(代表理事:森沢雄太氏)が監修するM&Aセカンドオピニオンサービスは、完全無料・成功報酬なしで、売り手経営者に100%寄り添う立場から専門的な意見を提供しています。既にM&A仲介会社と交渉中の方も、最終契約前に一度ご活用ください。


まとめ

会社売却の価格は、単純な計算式で決まるものではなく、業種・収益力・財務状況・成長性・無形資産・買い手とのシナジーなど、多くの要素が組み合わさって最終的に交渉で決定されます。

本記事のポイントを整理すると次の通りです。会社売却価格の目安として年倍法やEBITDAマルチプルが参考になること、算定には主にマーケット・インカム・コストの3アプローチが使われること、価格に影響する要素を事前に把握・改善することで評価額を高められること、税金・報酬コストを含めた「手取り額」を意識することが重要であること、そして専門家のサポートを活用しながら、必要に応じてセカンドオピニオンを取り入れることが選択肢の一つとなります。

「自社の価値がいくらになるか」「今の交渉条件は適切か」「いつ売るのがベストか」——こうした疑問に対して、数十年かけて築いた会社の価値を正当に評価してもらうためにも、まず専門家への相談から始めることをお勧めします。

無料相談・お問い合わせはM&Aセカンドオピニオンからお気軽にどうぞ。


監修:森沢雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事/M&A成約実績100件超)
参考:中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター

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