合同会社を売却したいけれど、「そもそも売れるのか」「手続きが複雑そうで不安」と感じている経営者の方は少なくありません。実際、「合同会社は売却が難しい」という話を耳にしたことがある方も多いでしょう。
その背景には、株式会社と異なる合同会社固有の法的な仕組みがあります。しかし、正しい方法と手順を理解すれば、合同会社であっても売却・M&Aを進めることは十分に可能です。
そこで本記事では、合同会社の売却が難しいとされる根本的な理由から、具体的な4つの売却手法・手続き、税金・費用の基礎知識、そして売却を成功させるための準備まで、売り手経営者の視点に立って体系的に解説します。情報収集の段階にある方にも読みやすいよう、専門用語には丁寧な説明を加えています。

M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事 森沢 雄太
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
合同会社とは?株式会社との違いを整理する

合同会社の売却を考える前に、まず合同会社という組織形態の特徴と、株式会社との違いを整理しておくことが重要です。この違いこそが、売却の難しさに直結しているからです。
合同会社は2006年の会社法施行によって新たに設けられた法人形態です。出資者全員が有限責任(出資額の範囲内でのみ責任を負う)を持ちつつ、株式会社に比べて設立費用が低く、経営の自由度が高い点が特徴です。近年は中小企業や個人事業の法人化先として利用されるケースが増えています。
所有と経営の仕組みの違い
株式会社では、「所有(株主)」と「経営(取締役)」が制度上分離されています。株主は株式という形で会社に対する権利を持ちます。上場企業の株式は市場で売買できます。非上場会社では定款によって株式の譲渡に会社の承認を要する「譲渡制限株式」が一般的で、承認なく自由に譲渡できるわけではありません。それでも、株式を通じた経営権移転の枠組みが整備されているため、合同会社の持分譲渡に比べると手続き上の選択肢が広い構造になっています。
一方、合同会社では「出資者=社員(しゃいん)」であり、社員が直接経営に参加します(これを「所有と経営の一致」と呼びます)。この「社員」は一般的な従業員を指すのではなく、会社法上の出資者・経営者を意味する専門用語です。合同会社における社員は、持分(もちぶん)という形で会社への権利を持ちますが、この持分は株式のように自由に売買できるものではありません。定款(会社の規則を定めた書類)に別段の定めがない限り、持分を譲渡するには他の社員全員の同意が必要とされています。
登記事項の違い
株式会社では、株主(出資者)の情報は登記事項に含まれないため、株式の譲渡によって株主が変わっても、それ自体は登記変更を要しません。これが株式会社の株式譲渡における手続き上のシンプルさにつながっています。
対して合同会社では、代表社員や業務執行社員の情報が登記事項として法務局に登記されます。また、社員(出資者)の情報は設立時に定款に記載されます。持分譲渡により社員構成や代表社員・業務執行社員が変わる場合は、必要に応じて定款や登記の変更手続きが発生します。この点が、合同会社のM&Aにおける手続きの複雑さの一因です。
合同会社と株式会社の主な比較
| 比較項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 出資者の呼称 | 社員(出資者兼経営者) | 株主(出資者) |
| 権利の形式 | 持分 | 株式 |
| 持分・株式の譲渡 | 原則として社員全員の同意が必要 | 合同会社より移転しやすい枠組みがある(非上場会社では譲渡制限が付くことが多い) |
| 所有と経営の関係 | 一致 | 分離 |
| 設立費用 | 約6万円〜 | 約20万円〜 |
| 決算公告 | 不要 | 必要 |
| 登記事項への社員情報の記載 | あり | なし(株主情報は登記不要) |
合同会社の売却は可能か?

結論から述べると、合同会社の売却・M&Aは可能です。ただし、株式会社の株式譲渡のように単純にはいかないケースが多く、利用できる手法や手続きが限定されます。
「合同会社は売却できない」という誤解が広まっている背景には、合同会社に特有の法的制約と、それに伴う買い手探しの難しさがあります。実際には、事業譲渡・持分譲渡・組織変更後の株式譲渡・吸収合併という4つの手法を状況に応じて選択することができます。
重要なのは、手法ごとに必要な手続きや同意の取り方が異なること、そして手法の選択が売却の成否に大きく影響することです。後述する「難しい理由」と「具体的な手法」を理解した上で、自社の状況に最適なアプローチを検討することが肝心です。
合同会社の売却が難しいとされる4つの理由

合同会社の売却が「難しい」と言われる背景には、会社法上の規定から生じる複数のハードルがあります。ここでは4つの主な理由を整理します。
持分譲渡には社員全員の同意が必要
合同会社において、出資者(社員)が自分の持分を他者に譲渡するには、他の社員全員の同意を得ることが会社法上の原則です(会社法585条1項)。ただし、定款に別段の定めを設けることで、全員の同意要件を緩和することは可能です。
この「全員同意」という要件が、実務上の大きな障壁となります。社員が複数名いる場合、一人でも反対すれば持分の譲渡が成立しないため、会社の売却・経営権の移転が困難になります。株式会社であれば、過半数(場合によっては特別決議が必要な場合も)の賛成で意思決定ができる場面でも、合同会社では全員の賛同が求められます。
社員同士の関係が良好であれば問題になりにくいですが、意見が割れている局面や、連絡が取れない社員がいるような場合には、交渉のハードルが一気に上がります。
株式会社への組織変更のハードルが高い
合同会社を株式会社に組織変更(法的な手続きによって会社形態を変える)することは可能です。しかし、これにも社員全員の同意が必要とされています(会社法781条1項)。
さらに、組織変更には債権者保護手続き(官報公告・債権者への個別催告を行い、1か月以上の異議申立期間を設ける手続き)も必要となり、完了までには最短でも1か月以上の時間とコストがかかります。その間に交渉や準備と並行して進める必要があるため、売却のタイムラインに影響を与えることもあります。
株式会社に変更できれば株式譲渡という買い手にとって馴染みのある手法が使えるようになりますが、その前段階の組織変更自体に高いハードルがあるわけです。
事業譲渡の場合も社員の過半数の同意が必要
後述するように、合同会社の売却で最も現実的とされる手法が「事業譲渡」です。ただし事業譲渡においても、原則として社員または業務執行社員の過半数の同意が必要です(定款の定め方によって適用される条文が異なります)。
「過半数の同意であれば全員同意よりは現実的ではないか」と思われるかもしれませんが、少人数の社員で構成された合同会社では過半数の確保も難しい場合があります。また、事業全体を譲渡するほどの重大な意思決定であれば、実務上は社員全員の合意形成を目指すケースが多く、いずれにせよ十分な社内調整が不可欠です。
買い手にとっての合同会社買収のメリットが乏しい
買い手企業の視点からも、合同会社の買収には株式会社に比べて使いにくい面があります。
まず、持分譲渡を行っても持分の自由な転売が難しいため、買い手が将来的に自社の持分を第三者に売却したいと思ったときに障壁があります。また、上場を見据えた投資家やPEファンドなどにとっては、株式会社の方が出口戦略を描きやすいという事情もあります。加えて、株式会社への組織変更に手間やコストがかかることも、買い手の購入意欲を下げる要因の一つです。
このように、合同会社の買収は買い手にとって手続き上の負担が大きく、魅力を感じにくいという構造的な問題があります。結果として、買い手候補が集まりにくく、売却交渉が長引くことも少なくありません。
合同会社を売却する4つの方法と手続き

合同会社を売却する手法は大きく4つに整理されます。それぞれに特徴・メリット・デメリットがあるため、自社の状況と照らし合わせながら検討することが重要です。
事業譲渡(最も現実的な手法)
事業譲渡とは、会社そのものを譲渡するのではなく、会社が持つ特定の事業(あるいは事業全部)を他の会社に売却する手法です。売却の対象となるのは、事業に関連する資産・負債・契約・従業員などであり、会社(法人格)自体は売り手側に残ります。
合同会社においては、持分譲渡よりも手続きのハードルが低いとされており、実務上最も利用されやすい売却手法です。ただし、前述のとおり定款の定め方によって社員の過半数または業務執行社員の過半数の同意が必要となります。
手続きの流れとしては、おおむね以下のようなステップになります。
- 譲渡先(買い手)の選定・交渉開始
- 意向表明書(LOI:Letter of Intentの略称。買い手から売り手に対して買収意向や希望条件を示す書面)の提出、および基本合意書(MOU:Memorandum of Understandingの略称。売買の基本条件・独占交渉権・デューデリジェンス実施などを双方で合意する書面)の締結
- デューデリジェンス(DD:買い手が売り手の財務・法務・事業内容などを詳しく調査すること。「買収監査」とも呼ばれる)の実施
- 事業譲渡契約書(DA:Definitive Agreementの略称。最終的な売買条件を定める契約書)の締結
- 資産・権利義務・従業員の個別移転手続き
- クロージング(契約の効力発生・対価の支払い・事業の引き渡し完了)
事業譲渡では、個々の資産・契約・許認可を個別に移転させる手続きが発生するため、株式譲渡に比べると手間がかかります。取引先への通知や契約の引き継ぎ確認、場合によっては許認可の再取得も必要となるため、準備の段階から専門家との連携が重要です。
合同会社のまま持分譲渡を行う
会社の組織形態を変えずに、社員(出資者)が保有する持分を買い手に譲渡する手法です。株式会社における株式譲渡に相当するイメージですが、前述のとおり社員全員の同意が必要であるため、社員数が多いほど手続きが複雑になります。
定款で持分譲渡の要件を緩和している場合は別ですが、一般的な合同会社ではこの全員同意要件が大きなハードルとなります。社員が代表社員1名のみのケース(いわゆる一人合同会社)では、自己の同意のみで手続きを進められるため、比較的スムーズに進む場合もあります。
持分譲渡が成立した場合は、定款の変更と登記の変更(代表社員・業務執行社員の変更など)が必要となります。
株式会社に組織変更後、株式譲渡を行う
合同会社を一度株式会社に組織変更し、その後に株式譲渡によって会社の経営権を移転させる手法です。組織変更を経ることで、買い手にとっても馴染みのある株式譲渡の形式を使えるようになり、買い手候補が広がる可能性があります。
ただし、前述のとおり組織変更には社員全員の同意・債権者保護手続き・登記申請が必要であり、時間とコストがかかります。売却のスケジュールに余裕がある場合や、組織変更自体が事業戦略として望ましい場合には有力な選択肢となりますが、急いで売却を進めたい局面では現実的でないこともあります。
組織変更の登記申請には、株式会社としての定款の作成・役員選任など複数のステップが必要です。なお、新規に株式会社を設立する際には公証人による定款認証が必要ですが、合同会社から株式会社への組織変更の場合は定款の公証人認証は不要とされています。法務局への登記費用に加え、司法書士・弁護士などへの報酬も見込んでおく必要があります。
吸収合併を活用する
吸収合併とは、売り手の合同会社が買い手の会社に吸収される形で合併し、売り手の法人格が消滅する手法です。厳密には会社売却というよりも組織再編スキームの一形態ですが、合併の対価として株式や金銭等が交付されることがあり、M&Aの選択肢として検討されることがあります。
合同会社を存続させる必要がない場合や、買い手が特定の事業・資産だけでなく会社全体を引き継ぎたい場合に選択されることがあります。ただし、吸収合併では売り手の資産・負債・権利義務が包括的に買い手に承継される(包括承継)ため、売り手側に隠れた負債やリスクがある場合、それも買い手が引き継ぐことになります。
手続きとしては、合併契約の締結・社員への通知・債権者保護手続き・登記申請などが必要となり、全体としてかなりの工数がかかります。事業譲渡や持分譲渡に比べるとスキームの複雑さが増すため、専門家によるサポートが特に重要です。
事業譲渡による売却のメリットとデメリット

合同会社の売却手法の中で最もよく利用される「事業譲渡」について、売り手の視点からメリットとデメリットを詳しく確認します。
事業譲渡のメリット
他の手法に比べて合意形成のハードルが比較的低い
前述のとおり、持分譲渡が社員全員の同意を要するのに対し、事業譲渡は定款の定めに応じて社員または業務執行社員の過半数の同意で手続きを進められます。これが合同会社の売却において事業譲渡が選ばれやすい最大の理由です。
売却する事業の範囲を選択できる
事業譲渡では、会社が持つ複数の事業の中から譲渡する部分を選択できます。たとえば、収益性が高い事業だけを売却して対価を得つつ、残りの事業は継続するという形が取れます。会社全体を売る必要がなく、部分的な売却・切り離しが可能な点は、経営の選択肢を広げます。
従業員の雇用継続を交渉しやすい
事業譲渡では、対象事業に従事している従業員を買い手に引き継いでもらうよう交渉することができます。従業員の雇用を守りたいという経営者にとって、雇用継続条件を明示的に契約に盛り込める点はメリットです。ただし、従業員側には事業譲渡に伴う雇用契約の引き継ぎについて個別の同意取得が必要となる点には注意が必要です。
事業譲渡のデメリット・注意点
資産・契約・許認可を個別に移転する手間がかかる
吸収合併のような「包括承継」と異なり、事業譲渡では対象となる資産、契約、債権・債務などを一つひとつ個別に移転させる手続きが必要です。取引先との契約については改めて同意を取り付ける必要があり、件数が多いほど手続きの工数が増えます。
また、業種によっては事業運営に必要な許認可(飲食業の営業許可、建設業許可、医療・介護関係の指定など)が、事業譲渡によって自動的に買い手に引き継がれないケースがあります。この場合、買い手が新たに許認可を取得する必要があり、買い手の負担となります。売却交渉の中で許認可の取り扱いをあらかじめ確認・調整しておくことが重要です。
売却後も売り手の会社に負債が残る可能性がある
事業譲渡では、会社(法人格)自体は売り手に残ります。事業譲渡は包括承継ではなく個別移転が原則のため、債務は自動的に承継されません。買い手に承継させるには個別の債務引受等の手当が必要であり、その手続きを取らなかった負債は売り手側の会社に残ったままになります。売却後も残余の負債処理が必要な場合があることを念頭に置いておく必要があります。
消費税が課税される
事業譲渡によって譲渡される資産のうち、課税資産(棚卸資産・固定資産等)については消費税が課税されます。不動産や有価証券など非課税とされるものもありますが、譲渡対価の内訳次第では消費税の負担が生じます。事前に税理士に確認の上、対価の設定や税務処理を整理しておくことが大切です。
合同会社の企業価値評価の考え方

売却価格の相場を把握するためにも、企業価値評価(バリュエーション)の基本的な考え方を押さえておくことは重要です。売り手として「自社はいくらで売れるか」を自分なりに把握した上で交渉に臨むことが、納得のいく売却につながります。
企業価値の評価方法は大きく3つのアプローチに分類されます。
コストアプローチ(純資産法)
会社の純資産(資産から負債を差し引いた正味の価値)を基準に企業価値を算定する方法です。帳簿上の純資産をそのまま使う「簿価純資産法」と、資産・負債を時価で評価し直す「時価純資産法」があります。
資産の価値が収益性を上回るような業種(不動産保有会社や製造業など)では使われやすい手法です。一方で、将来の収益性や無形資産の価値が反映されにくいという側面もあります。
インカムアプローチ(DCF法など)
会社が将来生み出すと予測されるキャッシュフロー(現金収支)を現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法が「DCF法(Discounted Cash Flow法)」です。将来の収益性を重視するため、成長が期待されるビジネスに向いています。
ただし、将来予測の前提条件が変わると評価額も大きく変動するため、前提の妥当性を丁寧に検討する必要があります。また、EBITDAマルチプル法(EBITDAとは一般に営業利益に減価償却費を加えた指標です。この数値に業界ごとの乗数を掛けて企業価値を算定します)も、インカムアプローチに近い考え方として実務でよく使われます。
マーケットアプローチ
類似する上場企業の株価や、過去に実施された類似M&A取引の価格倍率(マルチプル)を参考に企業価値を算定する方法です。市場の実態に近い評価が得られる反面、非上場の中小企業では比較対象を見つけにくいことがあります。
実務上、合同会社を含む中小企業のM&Aでは、純資産法を下限の基準とし、DCF法やマルチプル法で収益価値を加味する形で折衷的に評価額を決定するケースが多くあります。売却価格の交渉においては、どのアプローチで算定された数値なのかを確認しながら交渉を進めることが重要です。
合同会社の売却に関わる税金の基礎知識

売却によって生じる税負担は、売却手法や売り手の立場(法人か個人か)によって異なります。ここでは代表的なポイントを整理します。詳細な試算・判断については、必ず税理士に相談することをお勧めします。
事業譲渡の場合
事業譲渡によって売り手の合同会社が利益(譲渡益)を得た場合、その利益は法人所得として扱われ、法人税等の課税対象となります。また、前述のとおり課税資産の譲渡には消費税が課されます。
売り手の合同会社は、譲渡益に対して法人税等を納付した後、残った資金を社員への分配(利益分配)などに活用することになります。社員が受け取る分配については、個人の所得税・住民税の対象となる場合があります。
持分譲渡の場合
持分を譲渡した社員が個人の場合、持分の取得価額と譲渡価額の差額(譲渡益)が所得税・住民税の対象となります。法人が持分を保有していた場合は、譲渡益が法人税の対象となります。
なお、持分の評価額(税務上の時価)の算定は複雑なケースもあり、低すぎる価格での譲渡は税務上問題となる可能性があるため、事前に専門家への確認が不可欠です。
吸収合併の場合
消滅会社(売り手の合同会社)の社員は、合併の対価として買い手会社の株式や現金を受け取ります。受け取った対価の種類や評価額によって課税の扱いが変わるため、合併スキームの設計段階から税務上の影響を確認しておく必要があります。
売却を成功させるための事前準備

合同会社の売却を検討し始めた段階から、いくつかの準備を進めておくことが、スムーズな売却と好条件での成約につながります。
財務情報の整理と透明性の確保
買い手はデューデリジェンスの過程で、売り手の財務状況を詳しく調査します。過去3〜5年分の決算書・税務申告書・試算表などを整理しておくことはもちろん、経費の計上内容や資産の実態についても説明できるよう準備しておくことが大切です。
財務情報が不透明だったり、帳簿と実態の間にズレがある場合、デューデリジェンスで問題が発覚して条件の見直しや交渉の中断につながることもあります。
社内の合意形成と調整
合同会社では、前述のとおり売却手法によって社員の同意が必要となります。売却の意思が固まった段階で、早めに他の社員と方針を共有し、合意形成を進めることが重要です。
また、主要な従業員・取引先との関係性も、買い手が企業価値を評価する際の重要な要素です。売却交渉が進んでいる段階では不必要な情報漏洩を防ぎながら、クロージング後のスムーズな引き継ぎを見据えた社内体制を整えておくことが望ましいです。
売却の目的・条件の明確化
「いくらで売りたいか」という価格の希望だけでなく、「なぜ売却するのか」「売却後に自分はどうしたいのか」「従業員の雇用は守りたいか」「譲渡先のイメージはあるか」といった点を事前に整理しておくことが、交渉をスムーズに進める上で役立ちます。
売却の目的が曖昧なままでは、複数の条件提示があった際にどれを優先すべきか判断が難しくなります。優先順位を明確にしておくことで、専門家へのアドバイスも具体的なものになります。
専門家との連携
合同会社の売却は、税理士・弁護士・M&Aアドバイザーなど複数の専門家の協力が必要となるケースがほとんどです。特に事業譲渡の場合は、契約書の作成・許認可の確認・税務処理など多岐にわたる専門知識が必要となります。
自社だけで全ての判断・手続きを行おうとすると、見落としや判断ミスが生じるリスクがあります。費用面の不安もあると思いますが、相談窓口を複数持つことで、情報の偏りや誤った判断を防ぐことができます。
合同会社の売却には第三者の視点が重要になる

合同会社の売却プロセスでは、M&A仲介会社やFAなど様々な専門家が関与します。こうした専門家のサポートを受けることは非常に有益ですが、同時に「売り手として適切な判断ができているか」を自分自身で確認することも大切です。
M&Aの交渉が進む中で、提示された条件や評価額の妥当性、契約書の内容リスクなどについて、自らが十分に理解できているかどうかを振り返ってみてください。特に、条件の良し悪しを判断するための比較情報が手元にない状態で意思決定を迫られることは、売り手にとってリスクとなります。
こうした場面で活用できるのが「M&Aセカンドオピニオン」という選択肢です。現在進行中の交渉や提示条件について、仲介に携わっていない中立的な専門家から意見を聞くことで、意思決定の精度を高めることができます。
M&Aインサイトが紹介するM&Aセカンドオピニオンは、完全無料・成功報酬なしで、売り手経営者の立場に寄り添った第三者意見を提供するサービスです。日本M&Aセンター出身でM&A成約実績100件超の専門家が監修しており、合同会社の売却に関する疑問・不安についても気軽に相談できます。
「今受けている提案が適正なのか確認したい」「売却手法の選択肢についてアドバイスが欲しい」といったご状況でも、費用を気にせず利用できる点が特徴です。売却の判断を急がず、しっかりと情報収集をしたい方にも向いています。
まとめ
本記事の内容を整理します。
合同会社の売却は可能ですが、株式会社に比べると利用できる手法が限られ、手続きのハードルも高い側面があります。主な理由は次の4点です。
- 持分譲渡には社員全員の同意が必要
- 株式会社への組織変更のハードルが高い
- 事業譲渡では、定款の定めに応じて社員または業務執行社員の過半数による決定が原則
- 買い手にとっての合同会社買収のメリットが乏しい
売却の手法としては、事業譲渡・持分譲渡・組織変更後の株式譲渡・吸収合併の4つがあり、特に事業譲渡が最も利用されやすい手法です。ただし、事業譲渡にも「資産・契約の個別移転の手間」「負債が売り手に残るリスク」「消費税の課税」といったデメリットがあるため、自社の状況に応じた手法の選択が重要です。
売却を成功させるためには、財務情報の整理・社内合意形成・売却目的の明確化・専門家との連携が不可欠です。また、交渉の中で自分自身が判断に迷ったときや、提示条件の妥当性を確認したいときには、中立的な立場のセカンドオピニオンを活用することも有効な選択肢です。
合同会社の売却は、正しい準備と適切なサポートによって実現できます。焦らず情報収集を進め、信頼できる専門家を見つけることが第一歩です。
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