事業承継税制とは?特例措置の要件・メリット・デメリット・手続きを徹底解説【2026年最新】

事業承継税制の概要を検討する中小企業経営者

会社を次の世代に引き継ぐとき、経営者が直面する大きな壁のひとつが税負担です。後継者が自社株を取得する際に発生する相続税・贈与税は、場合によっては数千万円から億単位に達することもあり、「税金が払えないから承継できない」という事態が中小企業の現場では少なくありません。

こうした問題を解決するために設けられたのが「事業承継税制」です。一定の要件を満たせば、後継者の相続税・贈与税の納税が猶予され、さらに後継者の死亡等の免除事由が生じた場合には最終的に免除されます。ただし、この制度は使い方を誤ると取消事由に該当し、猶予された税金に利子税まで加わって一括納付を求められるリスクもあります。

そこで本記事では、事業承継を検討中の経営者や後継者候補の方に向けて、事業承継税制の基本的な仕組みから特例措置・一般措置の違い、適用要件、手続きの流れ、よくある落とし穴まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。



目次

事業承継税制とは何か

事業承継税制の基本的な仕組みを確認する経営者

事業承継税制とは、中小企業の経営者が後継者に自社株(非上場株式)を贈与または相続する際に生じる贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の要件を満たし続けることで最終的にその税額を免除できる制度です。正式名称は「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除」といい、経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)を根拠法としています。

事業承継税制が設けられた背景

中小企業庁の調査によれば、中小企業の経営者の高齢化は年々進んでおり、後継者不足を主因とした廃業・休業が社会問題として認識されてきました。後継者がいる場合でも、高額な自社株の相続税・贈与税が承継の障壁となるケースが多く、税負担を軽減することで事業承継を後押しする政策的な必要性が生まれました。

この問題意識から、2008年(平成20年)に事業承継税制(一般措置)が創設され、その後2018年(平成30年)の税制改正で大幅に拡充された「特例措置」が10年間の時限制度として追加されました。

事業承継税制の基本的な仕組み

仕組みをひとことで言えば、「後継者が自社株を承継した際の相続税・贈与税の支払いを先送りし、要件を満たせば最終的に免除する」というものです。

贈与の場合は、後継者が先代経営者から自社株を贈与された年の翌年に贈与税の申告を行い、税務署に納税猶予の適用を申請します。相続の場合も同様に、相続税の申告時に猶予の適用を受けます。いずれも、都道府県知事の認定を受けたうえで税務署に申告することが条件です。

猶予が続く期間中は、毎年あるいは一定期間ごとに都道府県や税務署への継続届出・年次報告が必要です。後継者が代表者を引退したり、株式を第三者に売却したりするなど、一定の事由に該当した場合は猶予が取り消され、猶予されていた税額に利子税を加えた金額を納付しなければなりません。一方、免除事由(後継者の死亡、会社の破産など)に該当した場合は、猶予税額が全額免除されます。


事業承継の全体像と進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。


一般措置と特例措置の違い

一般措置と特例措置の違いを比較検討している様子

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。特例措置は2018年(平成30年)の税制改正で創設され、一般措置より格段に有利な内容になっています。どちらを選ぶかで、適用できる株数や猶予割合、後継者の人数が大きく変わるため、まず両者の違いを押さえておく必要があります。

比較項目一般措置特例措置
対象となる株数総株式数の最大3分の2まで全株式(制限なし)
相続税の猶予割合80%100%
贈与税の猶予割合100%100%
後継者の人数1人最大3人
雇用維持要件5年間平均80%以上の維持が必須(未達で猶予取消)未達でも理由を都道府県に報告すれば継続可能
事前計画の提出不要「特例承継計画」の提出が必要
特例措置の対象期間期限なし(恒久措置)2018年1月1日〜2027年12月31日の贈与・相続
特例承継計画の提出期限不要2027年9月30日まで(令和8年度税制改正で延長)

特例措置の最大のポイントは、相続税の猶予割合が一般措置の80%から100%へ引き上げられた点と、対象株式の上限が撤廃された点です。一般措置では総株式数の3分の2までしか猶予を受けられず、かつ相続税の猶予割合が80%にとどまるため、実効的な節税効果は特例措置より大幅に低くなります。

また後継者の人数についても、一般措置では1人しか認められませんが、特例措置では最大3人まで対象にできます。兄弟で会社を共同経営するケースや、複数の事業部門を複数の後継者で引き継ぐ場合に有効です。

雇用維持要件の扱いも大きく異なります。一般措置では、承継後5年間にわたり雇用の80%以上を維持できなかった場合、原則として猶予が取り消されます。特例措置では、維持できなかった場合でも認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・商工会議所等)の所見書を添付し都道府県に報告することで猶予を継続できます。実務上、景気変動や事業環境の変化への対応力が大幅に高まっています。

特例承継計画とは

特例措置を利用するには、「特例承継計画」を作成し都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。特例承継計画とは、会社の現状・後継者候補・承継予定時期(2027年12月31日以前)・承継後5年間の経営計画を記載した書面で、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成します。

令和8年度(2026年度)税制改正大綱(2025年12月26日閣議決定)により、特例承継計画の提出期限は従来の2026年3月31日から2027年9月30日まで1年6カ月延長されました(出典:日本商工会議所「令和8年度税制改正について」2025年12月)。ただし、特例措置そのものの適用期限(2027年12月31日以前の贈与・相続)は延長されていないため、計画の提出から実際の承継まで逆算して準備する必要があります。

計画書の作成には認定支援機関との面談・書類整備を含め1〜2カ月程度かかるのが一般的です。実際の贈与や相続の実行は計画提出後になるため、制度の活用を検討している場合はできる限り早期に動き出すことが重要です。


事業承継税制(特例措置)の適用要件

事業承継税制の適用要件を専門家と確認する経営者

特例措置を利用するには、会社・先代経営者・後継者のそれぞれが一定の要件を満たす必要があります。1つでも要件を欠くと認定が受けられないため、事前の確認が欠かせません。

会社の要件

特例措置の対象となる会社は、中小企業基本法に定める中小企業に該当する非上場会社です。具体的には資本金・従業員数のいずれかが業種ごとの基準を満たす必要があります(詳細は中小企業庁のウェブサイトで確認できます)。

加えて、以下のような会社は対象外となります。

  • 上場会社(株式を証券取引所に上場している会社)
  • 資産管理会社(総資産に占める特定資産の割合が70%以上の会社。ただし、一定の要件を満たす場合は対象)
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に定める性風俗関連特殊営業を行う会社
  • 医療法人・社会福祉法人など特別法に基づく法人

なお、会社が持株会社構造を採っている場合は、要件の判定が複雑になるため専門家への確認が必要です。

先代経営者(贈与者・被相続人)の要件

贈与の場合、先代経営者は以下の要件を満たす必要があります。

  • 会社の代表者であったこと(過去に代表者であった場合を含む)
  • 贈与前において、先代経営者と同族関係者合わせて総議決権数の過半数を有し、かつ筆頭株主であったこと
  • 贈与時において、会社の代表者でないこと(贈与と同時に退任する場合を含む)

相続の場合も基本的な考え方は同様ですが、被相続人が死亡した時点で代表者でなかった場合でも、生前に代表者だった実績があれば要件を満たします。

後継者の要件

後継者(受贈者・相続人)に求められる主な要件は以下のとおりです。

贈与・相続に共通する要件として、贈与または相続後において筆頭株主となり、かつ総議決権数の過半数を有することが必要です。また、後継者と同族関係者合わせて過半数の議決権を有することも求められます。

贈与特有の要件として、贈与直前において会社の役員であること、贈与時において会社の代表者であることが求められます。なお、2025年度税制改正で「贈与前3年以上の役員就任」要件が緩和され、「贈与直前に役員であれば可」となりました(出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」)。

相続特有の要件としては、相続開始直前において会社の役員であること、相続開始から5カ月以内に代表者に就任することが必要です。

なお、贈与税の納税猶予を受ける場合、後継者(受贈者)は贈与時に18歳以上であることが要件です。相続税の納税猶予については、一律の年齢要件は設けられていません。

承継後の継続要件

認定を受けた後も、納税猶予が継続するためには一定の要件を満たし続ける必要があります。主な継続要件は以下のとおりです。

承継後5年間(経営承継期間)は、毎年都道府県に年次報告書を提出し、後継者が代表者として会社を継続経営することが必要です。この5年間は税務署への継続届出書も毎年提出します。5年を経過した後は、都道府県への報告は不要となりますが、税務署への継続届出書は3年ごとの提出が続きます(出典:神奈川県「非上場株式に係る事業承継税制について」・愛知県「法人版事業承継税制(特例措置)について」)。

雇用維持については前述のとおり、特例措置では未達でも適切な報告と所見書の提出で継続が可能です。ただし正当な理由なく手続きを怠ると猶予が取り消されるため、期限管理が重要です。


事業承継税制のメリット

事業承継税制の活用で将来設計を前向きに考える経営者

自社株承継にかかる税負担を大幅に軽減できる

特例措置を利用すれば、後継者が承継する自社株にかかる贈与税・相続税の100%が猶予されます。猶予はその後も継続しますが、最終的に免除されるのは「後継者の死亡」「次の世代への猶予継続贈与」「会社の破産」などの免除事由が生じた場合です。要件を守って猶予が続いている限り、将来の税負担リスクを大幅に抑えながら経営を続けられます。自社株の評価額が高い中堅・中小企業では、この効果は非常に大きく、承継後の資金繰りを守る上で重要な制度です。

例として、評価額1億円の自社株を相続する場合、通常の相続税を仮に3,000万円とすると(相続税率は財産の構成・控除等により異なります)、事業承継税制(特例措置)を使えばその全額の納税が猶予されます。最終的に免除されるのは後継者の死亡など一定の免除事由が生じた場合ですが、免除事由が生じるまでの間も猶予が続く限り税負担は発生しません。この差は、後継者にとって経営資源の温存という意味でも非常に大きい恩恵です。

経営の継続・会社の存続を支援できる

相続税・贈与税を一括で納める場合、自社株を売却せざるを得ないケースが起こり得ます。事業承継税制はこうした事態を防ぎ、後継者が株式を手放さずに経営を続けられる環境を作ります。

複数後継者への対応や共同経営が可能になる

特例措置では最大3人の後継者への承継が認められるため、兄弟間での共同経営や複数事業の分散承継など、柔軟な形態に対応できます。

セーフティネットが充実している

事業の継続が困難になった場合(会社の業績が著しく悪化した場合など)に、当時の時価で株式を第三者に売却したとき等の「セーフティネット措置」が設けられており、猶予税額が一定の計算に基づき減免されます。また後継者が死亡した場合は、猶予されていた税額が全額免除されます。


事業承継税制のデメリット・リスク

事業承継税制のリスクと注意点を慎重に確認する経営者

メリットが大きい一方で、事業承継税制には注意すべきデメリットとリスクもあります。制度を選択する際は、これらをしっかり把握した上で判断することが重要です。

手続きが複雑で継続的な管理コストがかかる

特例措置を利用するには、特例承継計画の作成・提出から始まり、都道府県知事の確認・認定、税務署への申告、毎年の年次報告書・継続届出書の提出と、長期にわたる行政手続きが継続します。この管理をサポートする税理士等の専門家費用も発生します。費用は専門家・地域・支援の範囲によって大きく異なるため、事前に複数の専門家に確認することをお勧めします。

取消事由に該当すると猶予税額+利子税の一括納付が必要になる

猶予が取り消されると、猶予されていた贈与税・相続税の全額に利子税が加算された金額を一括で納付しなければなりません。主な取消事由は次のとおりです。

  • 後継者が代表者を退任した場合(経営承継期間中)
  • 年次報告書・継続届出書を期限内に提出しなかった場合
  • 猶予対象株式を第三者に譲渡した場合(M&Aによる株式売却を含む)
  • 会社が解散・清算した場合

特にM&Aを将来的に検討している場合は注意が必要です。事業承継税制の適用後に会社を第三者に売却すると、猶予されていた贈与税・相続税が確定し、利子税と合わせて納付が求められます。なお、制度は親族内承継に限らず、従業員等の親族外承継にも適用できます(後継者要件を満たすことが前提)。

M&Aとの関係で注意が必要

前述のとおり、事業承継税制を使って株式を承継した後に第三者への株式譲渡(支配権移転を伴うM&A)を行うと、原則として猶予が打ち切られます。ただし、経営環境の悪化等で事業継続が困難になった場合には、株式の売却価額に基づいて猶予税額が再計算され、差額が免除・軽減される「セーフティネット措置」が設けられています。一方、事業承継税制を使わずにM&Aで会社を売却した場合、譲渡所得として課税(原則として株式譲渡益の約20%の課税)されますが、取消リスクは発生しません。どちらの手段が経済的に有利かは、会社の規模・株価・承継後の経営方針によって異なります。

雇用維持が一定程度求められる

特例措置では雇用維持要件が弾力化されているとはいえ、完全に無視できるわけではありません。5年間平均で80%を下回った場合は都道府県への報告と認定支援機関の所見書が必要であり、手続き負担が生じます。人員削減等の経営判断を行いやすい環境にある会社は、この点も事前に確認しておく必要があります。


事業承継税制と組み合わせて活用できる補助金・支援制度については、事業承継補助金の種類・申請方法・注意点で詳しく解説しています。

事業承継税制の手続きの流れ

事業承継税制の手続きステップを確認している様子

特例措置を利用する場合の基本的な流れを、贈与のケースを中心に整理します。

ステップ内容目安期限・タイミング
①認定支援機関と連携税理士・公認会計士・商工会議所等の認定経営革新等支援機関を選定し、特例承継計画の作成支援を依頼承継実行の6カ月〜1年前を目安に開始
②特例承継計画の作成・提出認定支援機関の指導・助言を受けて計画書を作成し、都道府県に確認申請を提出提出期限:2027年9月30日まで
③都道府県知事の確認都道府県が計画内容を確認し、確認書を交付提出から概ね1カ月程度
④後継者の代表者就任・株式の贈与後継者が代表取締役等に就任し、先代から株式の贈与を受ける2027年12月31日以前
⑤都道府県知事への認定申請贈与を受けた翌年1月15日までに認定申請書を提出し、認定書を受け取る贈与翌年1月15日まで
⑥税務署への贈与税申告認定書を添付して贈与税の申告・納税猶予の申請を行う贈与翌年3月15日まで
⑦年次報告・継続届出都道府県への年次報告(承継後5年間、毎年)・税務署への継続届出(5年間毎年、6年目以降は3年ごと)継続して実施

相続の場合は、④が「先代の死亡と相続の発生」となり、⑤⑥は「相続税の申告期限(相続開始から10カ月以内)」に合わせて手続きを行います。


個人版事業承継税制

個人事業主の事業承継を親子で考えるシーン

ここまで解説してきたのは「法人版」(非上場会社の株式が対象)ですが、個人事業主の後継者にも適用できる「個人版事業承継税制」があります。

個人版事業承継税制は、青色申告を行っている個人事業主が後継者に事業用資産(土地・建物・機械設備など)を贈与・相続する際の贈与税・相続税を猶予・免除する制度です(2019年度税制改正で創設)。

比較項目法人版個人版
対象非上場会社の株式(自社株)個人事業主の事業用資産
対象資産非上場株式土地・建物・機械装置等の事業用資産
猶予割合贈与100%、相続最大100%(特例)贈与100%、相続100%
事前計画特例承継計画(法人)個人事業承継計画
計画提出期限2027年9月30日(法人)2028年9月30日(令和8年度税制改正大綱に基づく予定)

個人版の特例措置の適用期限も2027年12月31日以前の贈与・相続が対象です(出典:国税庁「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除(個人版事業承継税制)」)。


事業承継税制に関するよくある質問

事業承継税制についての疑問を専門家に相談する場面

Q1. 事業承継税制を使うと贈与税・相続税はゼロになるのですか?

猶予であって免除は自動ではありません。承継後に一定の要件を満たし続けることで最終的に免除される仕組みです。要件を満たせなかった場合(後継者の退任・株式売却など)は、猶予されていた税額+利子税の一括納付が求められます。

Q2. M&Aを検討していますが、事業承継税制は使えますか?

将来的なM&A(第三者への株式譲渡で支配権が移転する場合)を前提にしている場合は慎重な検討が必要です。事業承継税制を適用して株式を承継した後に株式を売却すると、原則として猶予が打ち切られ税額が確定します。ただし、経営環境の悪化等による事業継続困難な場合には、売却価額に基づいて税額が軽減されるセーフティネット措置が存在するケースもあります。M&Aが現実的な選択肢である場合は、制度適用前に税理士・M&Aアドバイザーに相談することをお勧めします。

Q3. 後継者が親族でなくても利用できますか?

特例措置では、後継者は親族外(従業員等)でも構いません。ただし適用要件(筆頭株主になること・代表者に就任すること等)を満たす必要があります。

Q4. 特例措置の適用期限である2027年12月31日を過ぎたらどうなりますか?

特例措置が終了した後は、一般措置のみが適用されます。一般措置では対象株式が総株式の3分の2まで・相続税の猶予割合が80%と、特例措置に比べて大幅に不利な条件になります。2027年度以降の制度のあり方については、令和9年度(2027年度)税制改正で結論を得るとされており(出典:令和8年度税制改正大綱)、今後の動向を注視することが重要です。

Q5. 特例承継計画の提出だけでは制度は適用されないのですか?

計画の提出(確認申請)はあくまでも事前の準備ステップです。実際に制度の適用(納税猶予)を受けるためには、その後に贈与・相続が発生し、都道府県知事の認定申請→税務署への申告という手続きが必要です。計画を提出しただけでは税額は猶予されません。

Q6. 事業承継税制を使って承継した後でも会社を売却できますか?

株式を第三者に売却すると猶予が打ち切られますが、時価での売却金額と猶予されていた税額の関係によっては、「売却益が税負担を上回る」ケースもあります。また、会社そのものの株式を売却せず、事業の一部だけを他社に譲り渡す「事業譲渡」の場合は、会社の株式自体は変動しないため、一見すると猶予に直接影響しないように見えます。ただし、事業譲渡の内容次第では会社の事業実態や認定要件(事業の継続性など)に影響が生じる可能性があるため、一概に「猶予が継続する」とはいえません。いずれの場合も、実行前に必ず税理士等の専門家に個別の状況を確認してください。

Q7. 個人事業主(フリーランス)でも使えますか?

法人版ではなく「個人版事業承継税制」が別途設けられています。青色申告を行っている個人事業主が対象で、事業用資産(土地・建物・機械等)にかかる贈与税・相続税が猶予されます。


事業承継税制の活用可否を判断するためのチェックリスト

事業承継税制の活用可否をチェックリストで自己確認する経営者

制度の利用を検討する前に、以下の項目を確認してみましょう。

  • [ ] 自社は中小企業基本法に定める中小企業に該当するか(非上場・資本金・従業員数の基準)
  • [ ] 後継者の候補は決まっているか(特例では最大3人まで)
  • [ ] 後継者は贈与・相続後に筆頭株主かつ過半数議決権を保有できるか
  • [ ] 先代経営者は贈与時に代表者を退任(または同時に退任)できるか
  • [ ] 後継者は贈与直前に役員に就任しているか(相続の場合は5カ月以内に代表就任可能か)
  • [ ] 会社が資産管理会社や風俗営業等に該当していないか
  • [ ] 承継後5年間、継続して経営する意思があるか
  • [ ] 中長期的にM&Aで株式を売却する可能性はないか
  • [ ] 毎年の報告・届出を管理できる税理士等の専門家を確保できるか
  • [ ] 特例承継計画の作成・提出に向けて認定経営革新等支援機関と連携できるか

すべての項目を確認した上で、制度の活用が自社の状況に合うかどうかを判断することが大切です。判断に迷う場合や、自社の要件充足状況に不明点がある場合は、税理士や認定支援機関に相談することをお勧めします。


事業承継税制と他の事業承継手法の比較

事業承継の複数の選択肢を比較検討している経営者と専門家

事業承継税制を利用した「親族内・社内承継」は、事業承継の選択肢のひとつです。後継者がいない場合や、別の選択肢と比較検討したい場合は、以下の整理を参考にしてください。

手法概要主な税負担事業承継税制の適用
株式の贈与(親族内)経営者が生前に後継者に株式を贈与贈与税適用可(特例・一般)
株式の相続(親族内)経営者の死亡で後継者が株式を相続相続税適用可(特例・一般)
MBO(従業員買収)従業員等が会社を買い取る株式譲渡益(約20%)適用可(後継者要件に留意)
M&A(第三者への売却)外部の買い手に株式・事業を売却株式譲渡益(約20%)原則不可(売却で猶予取消)

M&Aは「納税猶予・免除」というメリットはありませんが、会社の売却対価を現金で受け取れる点が大きな違いです。事業承継税制を利用した場合、株式は手元に残りますが現金は入りません。将来の老後資金や生活資金の確保を考えると、M&Aのほうが資産化しやすいケースもあります。どちらが最適かは、後継者の有無・会社の業績・オーナー経営者の意向など個別の状況によって判断が異なります。


他の承継手法についても詳しく知りたい方は、第三者承継(M&A)の基礎知識親族内承継のメリット・デメリットと手続き事業承継とM&Aの仕組みと流れもあわせてご参照ください。

事業承継を進める前に第三者の目線を持つことの重要性

第三者の中立的な意見を聞きながら事業承継を検討する経営者

事業承継税制は強力な制度ですが、複雑な要件・長期にわたる管理義務・取消リスクを伴う制度でもあります。仲介会社やアドバイザーから「税制を使えば全部解決する」と言われた場合でも、本当に自社の状況に合った選択なのかを立ち止まって検証することが重要です。

たとえば、事業承継税制の適用後にM&Aを検討し始めた場合、猶予の取消リスクという問題が生じます。逆に、M&Aを前提としていた計画を途中で変えて税制の活用を検討する場合も、要件の充足状況や手続きの段取りを整理し直す必要があります。

こうした判断を仲介会社・アドバイザーや後継者の一方の当事者だけで行うのではなく、中立的な立場の第三者に確認することで、見落としや意思決定の偏りを防ぐことができます。

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まとめ

事業承継税制は、後継者に自社株を承継する際の税負担を大幅に軽減できる強力な制度です。特に2018年度税制改正で創設された特例措置は、相続税の猶予割合100%・対象株式の上限撤廃・後継者3人まで対応と、一般措置に比べて格段に使いやすい内容になっています。

一方で、複雑な適用要件・長期にわたる継続義務・M&A等に伴う取消リスクといったデメリットも存在します。制度の活用を検討する際は、自社の状況を整理したうえで、税理士・認定経営革新等支援機関などの専門家と連携して進めることが不可欠です。

特例措置の適用を受けるために必要な特例承継計画の提出期限は、令和8年度税制改正により2027年9月30日まで延長されています。ただし、特例措置そのものの適用期限(2027年12月31日以前の贈与・相続)は変わっていないため、逆算して早めに動き出すことが重要です(出典:東京都産業労働局「事業承継税制の認定」2026年4月)。

なお、税制の適用要件や最新の制度内容については、改正が行われる可能性があるため、必ず国税庁・中小企業庁等の公的機関の最新情報や専門家にご確認ください。

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