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M&A最低手数料の相場と仕組みを徹底解説|費用を抑えるポイントと仲介会社選びの基準

会社の売却や事業承継を検討し始めたとき、多くの経営者がまず気になるのが「いくら費用がかかるのか」という点ではないでしょうか。M&Aの手数料は「成功報酬だから成約するまで払わなくていい」と思っていたら、成約後に想定をはるかに超える請求書が届いた、という声は珍しくありません。
なかでも見落とされやすいのが「最低手数料」という仕組みです。取引規模が小さくても一定額が徴収されるこの条件は、小規模のM&Aでは特に影響が大きく、事前に理解していないと資金計画が大きく狂うことがあります。
「レーマン方式で計算したら手数料は200万円のはずなのに、なぜ1,000万円の請求が来たのか」——この疑問を持つ売り手経営者は少なくありません。答えの多くは、最低手数料の存在にあります。
そこで本記事では、M&Aの最低手数料とは何か、その相場と設定される理由、手数料全体の種類と計算方法、そして費用を合理的に抑えるための具体的な方法まで、売り手経営者の視点から丁寧に解説します。手数料の全体像を把握したうえで、自社に最適なパートナー選びの判断基準を持っていただくことが本記事の目的です。
この記事の監修者

森沢 雄太
一般社団法人
M&Aセカンドオピニオン協会
代表理事
外資系銀行でのウェルスマネジメント業務を経て、日本M&Aセンターに入社。譲渡側アドバイザーとして100件超の成約に関与し、野村證券出向や福岡支店立ち上げも経験。2018年に日本投資ファンド立ち上げに参画し、投資先の再生にも成功。2022年、合同会社M&Aプレップを創業し、仲介会社・ファンドへの支援やオーナー向け売却準備、買収支援など幅広く展開。2024年には売却支援事業拡大のため株式会社企業経営支援機構を設立し代表に就任。加えて、M&Aにおける利益相反や情報格差の是正を目的とし、代表理事として一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会を設立。
M&A手数料の全体像と種類

M&Aの手数料といっても、仲介会社やアドバイザー(FA)に支払う費用には複数の種類があります。それぞれが発生するタイミングと目的が異なるため、まずは全体像を把握することが重要です。
M&Aのプロセスは、相手先探しの着手から最終契約締結まで数ヶ月から1年以上かかることがあります。その各フェーズに対応する形で手数料が設定されており、すべてを合算した総費用が実際の負担額となります。
M&Aにかかる費用の全体像をより詳しく知りたい方は、M&A手数料の体系と相場の全体像で詳しく解説しています。
相談料(初期面談料)
仲介会社やFAとの初回面談・相談に対して発生する費用です。近年は無料相談を打ち出す会社が増えており、相談料を徴収する会社は減少傾向にあります。ただし、無料相談と有料のアドバイザリー契約は別物であるため、契約前に確認が必要です。
着手金
アドバイザリー契約(仲介契約)を締結した時点で発生する費用です。M&A支援業務の開始対価として位置づけられており、成約の有無にかかわらず支払います。相場は数十万円から数百万円程度とされていますが、完全成功報酬制を採用する会社では着手金を設定していないケースもあります。
着手金は、仲介会社が案件化に要するコスト(企業概要書の作成、相手先候補のリストアップなど)をカバーするためのものです。万が一、M&Aが不成立に終わった場合でも原則として返金されません。
月額報酬(リテイナーフィー)
M&Aプロセスが進行している期間中、継続的に発生する月次費用です。主に大手仲介会社やFAが採用する体系で、交渉支援・資料作成・デューデリジェンス(DD)対応などの継続的なサービスの対価として月額数十万円程度が設定されます。取引完了まで期間が長引くほど総額が膨らむため、注意が必要です。
中間報酬
基本合意書(MOU等)の締結時など、案件完了前の一定時点で発生する報酬です。なお、意向表明書(LOI:Letter of Intent)の提出・受諾時に中間報酬が発生するかどうかは、契約条件によって異なります。基本合意書締結後にデューデリジェンスへ進む段階での支払いとなるケースが多く、成功報酬の一部を前払いする形式が多く見られます。成約時の成功報酬から差し引かれる場合もあれば、別途加算される場合もあります。契約書の記載を必ず確認してください。
デューデリジェンス(DD)費用
デューデリジェンスとは、買い手が対象企業の財務・法務・税務・事業の実態を詳細に調査するプロセスです。DDにかかる費用は通常、買い手が主体的に負担します。ただし、売り手側がFA(売り手専属)と契約している場合、DDへの資料対応サポート費用や資料整備費が別途発生することもあります。財務DDは公認会計士、法務DDは弁護士が担当するのが一般的です。
成功報酬
M&Aが成約した段階で発生する報酬で、手数料の中核を占めます。発生時点は主にクロージング(株式・代金の引き渡し完了)時など案件完了時ですが、最終契約書(DA:株式譲渡契約書等)の締結時に発生する設計を採用している支援機関もあります。いずれの時点で発生するかは、契約書に明記された条件で確認することが重要です。一般的にレーマン方式(後述)によって計算されます。
M&Aの最低手数料とは何か

最低手数料とは、成功報酬をレーマン方式で計算した結果が一定額を下回った場合でも、最低限徴収される手数料の下限額のことです。
たとえば、成約価格が5,000万円の案件で、レーマン方式で計算した成功報酬が300万円だったとしても、仲介会社の最低手数料が1,000万円であれば、1,000万円を支払うことになります。取引規模が小さいほど、レーマン計算値と最低手数料の乖離が大きくなるため、小規模M&Aでは実質的な手数料率が想定より大幅に高くなることがあります。
最低手数料が設定される理由
仲介会社がM&A一件を取り扱うには、案件化から成約まで一定の業務量が発生します。相手先候補のリストアップ、企業概要書(IM)の作成、交渉サポート、基本合意後のDD対応、最終契約書の条件調整など、取引規模にかかわらず必要なプロセスは同じです。
取引規模が小さい案件ではレーマン方式の計算値が低くなりますが、仲介会社が投入する人件費・業務コストは大規模案件と大差ありません。最低手数料は、この業務コストを回収するための下限として機能しています。
最低手数料の相場
最低手数料は仲介会社によって大きく異なりますが、中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月30日改訂・公表)では、M&A支援機関が料金体系を透明化・開示することが推奨されており、この流れを受けて各社が最低手数料をウェブサイトで公表するケースが増えています。
一般的な相場感として、中小M&A市場で実績を持つ支援機関の最低手数料は次のような水準が多く見られます。
| 支援機関の区分 | 最低手数料の目安 |
|---|---|
| 大手仲介会社(東証プライム上場等) | 2,000万円〜5,000万円程度 |
| 中堅仲介会社 | 500万円〜2,000万円程度 |
| 士業・コンサル系 | 200万円〜1,000万円程度 |
| 金融機関系 | 300万円〜1,000万円程度 |
※上記は各社の公開料金情報・M&A支援機関登録制度データベース等をもとにした参考値です。最低手数料は各社の料金体系によって大きく異なるため、必ず各社の契約書・料金表でご確認ください。M&A支援機関登録制度に登録されている機関は、中小企業庁のウェブサイト(登録機関データベース)でも料金体系を確認できる場合があります。
大手の仲介会社では「最低手数料5,000万円」という設定も存在します。成約価格が数億円の案件なら問題ありませんが、売却価格が1億円程度の中小企業にとっては、状況によっては成功報酬の大部分が最低手数料で占められる状況になります。
最低手数料が適用される典型的なケース
最低手数料が実際に適用されるのは、主に次のようなケースです。
取引規模が比較的小さい案件(成約価格が数千万円〜1億円程度)では、レーマン方式で算出した成功報酬が最低手数料を下回りやすくなります。また、売り手・買い手の双方から手数料を受け取る仲介型では、売り手・買い手それぞれに手数料が発生します。最低手数料の金額や適用条件は各自の契約内容によって異なるため、自社に適用される条件を契約書で確認する必要があります。
レーマン方式の仕組みと成功報酬の計算方法

成功報酬の計算に最もよく用いられるのがレーマン方式です。中小M&Aガイドライン(第3版)にも言及されており、業界の標準的な参考指標となっています。ただし、同ガイドラインでも「公式な標準料率は存在しない」と明記されており、各社が独自の料率を設定しています。
レーマン方式の具体的な計算手順と業界相場については、レーマン方式の計算方法と相場で詳しく解説しています。
レーマン方式の基本構造
レーマン方式とは、取引金額(成功報酬の算定基準額)を複数の階層に分け、それぞれの階層に異なる料率を適用して合計する計算方式です。取引規模が大きくなるほど料率が逓減する構造になっています。
一般的に用いられる参考料率の目安は次のとおりです(中小M&Aガイドラインでも例示があります)。
| 取引金額の区分 | 料率の目安 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
※実際の料率は各支援機関の料金体系によって異なります。
成功報酬の算定基準額に注意
レーマン方式を適用する際、何を基準額とするかによって成功報酬が大きく変わります。主に次の2種類があります。
移動総資産基準(総資産レーマン)は、主に譲渡額に負債額を加えた「移動総資産額」を基準に算定する方式です。中小M&Aガイドライン(第3版)でもこの定義に近い説明がされていますが、各社によって算定方法に幅があるため、「移動総資産」の具体的な定義は契約前に確認が必要です。有利子負債(借入金)が多い企業では、実際の株式譲渡対価(株価)よりも基準額が大きくなるため、成功報酬が高くなりやすい特性があります。
株式価値基準(株式価値レーマン)は、実際の株式譲渡対価を基準とします。移動総資産基準では負債額が基準額に加算されることがあるため、株式価値基準の方が成功報酬が低くなるケースがあります。
同じ案件でも算定基準の違いによって成功報酬が数百万円から数千万円単位で変わることがあります。事前に「何を基準に計算するか」を仲介会社に確認し、契約書に明記してもらうことが不可欠です。
算定基準別の比較と計算例
成約価格(株式価値)が2億円、有利子負債が1億円で、移動総資産額を「株式譲渡対価+有利子負債」と定義する支援機関の場合の比較です。
| 算定基準 | 計算の基礎となる金額 | 料率(参考) | 成功報酬(試算) |
|---|---|---|---|
| 総資産(移動総資産)基準 | 2億円+1億円=3億円 | 5% | 1,500万円 |
| 株式価値基準 | 2億円 | 5% | 1,000万円 |
上記の例では、有利子負債が1億円あるだけで500万円の差が生じます。有利子負債が多い会社ほど、算定基準の選択は手数料総額に大きく影響します。
さらに、最低手数料が2,000万円の仲介会社に依頼した場合、いずれの算定基準でも最低手数料が適用され、2,000万円の支払いが発生します。これは株式価値(2億円)の10%に相当します。
手数料の支払いタイミングと誰が払うのか

売り手と買い手それぞれの負担
M&Aにおける手数料の支払い主体は、仲介会社の契約形態によって異なります。
仲介型(両手仲介)では、売り手と買い手の両方と仲介契約を締結し、双方から手数料を受け取ります。この場合、売り手・買い手それぞれが成功報酬を支払います。FA(フィナンシャル・アドバイザー)型では、売り手専属または買い手専属として契約するため、依頼した側のみが手数料を支払います。
売り手側の視点では、仲介型でも片側FA型でも成功報酬の支払いが発生しますが、仲介型の場合は「買い手からも手数料を受け取っている」という点で利益相反の懸念が生じる場合があります。この点が近年のM&A業界で議論されており、中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月30日改訂・公表)でも支援機関に対して双方への手数料説明義務が定められています。
成功報酬の支払いタイミング
成功報酬の支払いは、主にクロージング(株式・代金の引き渡し完了)時など案件完了時に発生するのが一般的です。ただし、最終契約書(DA)の締結時点に発生する設計を採用している支援機関もあります。また、中間報酬として基本合意時に一部を前払いし、残額を成約時に支払う形を採用している会社もあります。いずれの場合も、支払いタイミングは契約書で事前に確認してください。
着手金・月額報酬は各フェーズ開始時に発生するため、M&Aが不成立に終わった場合でも返金されないのが原則です。資金繰りの観点から、M&A開始前に費用総額の見通しを立てておくことが重要です。
M&A手数料が高くなりやすい背景

M&Aの手数料は他の専門サービスに比べて高額に感じられることがあります。その背景には、業務の複雑さと成功報酬制の特性があります。
業務プロセスの複雑さ
M&A一件を完結させるには、案件化(売り手の希望整理・企業概要書作成)、相手先探索と秘密保持契約(NDA)締結、トップ面談の設定と交渉サポート、基本合意書(MOU)の条件調整、デューデリジェンス(DD)対応支援、最終契約書(DA)の条件交渉、クロージング手続きという多くのフェーズがあり、各フェーズで法務・財務・交渉面の専門知識が必要です。一件あたりの業務時間は数百時間に上ることも珍しくなく、この業務量に対応する人件費・コストが手数料に反映されています。
不成立リスクと成功報酬制
完全成功報酬制を採用する会社では、M&Aが不成立に終わった場合に成功報酬を受け取れません。仲介会社にとって、成功しなかった案件への投入コストは回収できないビジネスリスクです。成立した案件の成功報酬で不成立案件のコストも賄う構造になっているため、単純な業務コストだけで手数料水準を評価することは難しい側面があります。
M&A手数料を合理的に抑えるための方法

手数料を不当に値切ることが目的ではありません。適正な費用で質の高い支援を受けるために、事前知識を持ったうえで合理的な判断をすることが重要です。
手数料を合理的に抑えるための具体的な選択肢については、手数料を安く抑える具体的な方法で詳しく解説しています。
複数の仲介会社・FAから相見積もりを取る
M&Aの手数料体系は会社ごとに大きく異なります。1社だけに相談して契約するのではなく、複数の支援機関から費用の内訳・最低手数料・算定基準を確認したうえで比較することが基本です。相見積もりを取ることは、費用の妥当性を判断するうえで最も有効な方法の一つです。
算定基準の確認(株式価値基準を選ぶ)
前述のとおり、総資産(移動総資産)基準と株式価値基準では成功報酬が大きく変わります。特に有利子負債が多い会社を売却する場合は、株式価値基準を採用している支援機関を選ぶことで手数料が低くなる可能性があります。
事業承継・M&A補助金の活用
中小企業庁が所管する「事業承継・M&A補助金」は、M&Aを活用した事業承継の費用の一部を補助する制度です。専門家活用型において、M&A支援機関登録制度に登録されている支援機関を利用した場合の仲介手数料・FA費用等の一部が補助対象となる場合があります。補助率・補助上限額は年度や公募によって変わるため、最新の公募要領は事業承継・M&A補助金の公式サイトおよび中小企業庁の公募情報でご確認ください(出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金」公募情報)。
補助金は採択されれば実質的な手数料負担を軽減できますが、申請準備・採択待ちに時間がかかるため、M&Aのスケジュール全体との調整が必要です。
成功報酬の算定対象の確認・交渉
最終的な合意条件によっては、成功報酬の算定対象から不動産や特定の資産を除外できる場合があります。また、役員退職金の扱いを交渉する余地がある場合もあります。これらは契約前の交渉段階で確認すべき事項であり、税理士・弁護士等の専門家に相談することを推奨します。
支援形態(仲介型かFA型か)を検討する
仲介型と片側FA型では、費用構造と役割が異なります。売り手専属のFAは売り手の利益最大化に特化するため、仲介型に比べて条件交渉で売り手に寄り添った立場を保ちやすい場合があります。一方でFAと仲介型では相手先候補の探索手法や規模が支援機関によって異なるため、自社の状況や希望する支援の質・範囲に応じて支援形態を選択することが重要です。
小規模M&Aと最低手数料の関係

売却価格が1億円前後の小規模案件では、最低手数料の影響が特に大きくなります。
スモールM&Aにおける注意点
いわゆるスモールM&A(売却価格が数千万円〜数億円規模)の案件では、大手仲介会社の最低手数料(2,000万円以上が多い)が成約価格の相当割合を占めることがあります。このような場合、実質的な手数料率が20%を超えるケースもあります。
小規模案件を扱う場合は、最低手数料が自社の規模に見合った水準かどうかを必ず確認したうえで支援機関を選ぶ必要があります。士業系・コンサル系の支援機関や、スモールM&A専門のプラットフォームは、最低手数料が低く設定されているケースが多く見られます。
実質手数料率の試算方法
契約前に、自社の想定売却価格を基にした「実質的な手数料率」を試算することを推奨します。
たとえば、想定売却価格が8,000万円の案件で、レーマン方式(5億円以下5%)による計算値が400万円、仲介会社の最低手数料が1,500万円の場合、実際の支払いは1,500万円となり、実質手数料率は約18.75%になります。この試算を事前に行うことで、複数の支援機関を比較する際の基準として活用できます。
仲介会社・FAを選ぶための基準

手数料だけで支援機関を選ぶことは適切ではありません。費用の透明性と、提供されるサービスの質・専門性を総合的に判断することが重要です。
仲介会社とFAの違いや手数料体系の比較については、仲介とFAの違いと手数料体系で詳しく解説しています。
料金体系の透明性
中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月30日改訂・公表)では、M&A支援機関に対して、着手金・成功報酬・最低手数料を含む料金体系を事前に明示することが求められています。料金表をウェブサイトで公開しているか、初回相談時に書面で説明してもらえるかを確認しましょう。
なお、中小M&Aガイドラインは法律ではなく、法的な義務を直接課すものではありません。ただし、M&A支援機関登録制度では、同ガイドラインの遵守宣言が登録要件とされており、登録機関はガイドラインに沿った行動が求められます(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」、2024年8月改訂)。料金開示に消極的な支援機関は選択肢から外すことも一つの判断基準です。
自社業種・規模への対応実績
同じM&A仲介会社でも、得意とする業種や案件規模が異なります。製造業・IT・医療・介護・飲食業など、自社の業種で成約実績がある支援機関を選ぶことで、相手先候補のマッチング精度が上がる可能性があります。
担当者の専門性と関与度
M&Aの成否は担当者の能力と関与度に大きく左右されます。初回面談から同じ担当者が継続して関与するのか、組織体制としてサポートが提供されるのかを事前に確認することを推奨します。特に中小企業のM&Aでは、担当者が変わることで交渉の継続性が失われるリスクがあります。
仲介型か片側FA型かの確認
仲介会社は原則として売り手・買い手の双方の利益を調整する立場にあります。一方、FA(フィナンシャル・アドバイザー)は依頼した側のみの利益を最大化することを目的とします。自社にとってどちらの支援形態が適切かを理解したうえで契約することが重要です。
M&Aを進める前のチェックリスト(費用・手数料編)

M&A着手前に以下の項目を確認することで、費用面での想定外を防ぐことができます。
- 想定売却価格を概算で把握しているか
- レーマン方式による成功報酬の試算値(総資産基準・株式価値基準の双方で)を出しているか
- 支援機関の最低手数料を確認し、試算値と比較したか
- 着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬の発生タイミングと金額(目安)を書面で確認したか
- 成功報酬の算定基準(総資産基準か株式価値基準か)を確認し、契約書に明記されているか
- 不成立の場合に返金されない費用の範囲を把握しているか
- 複数の支援機関から費用の比較を行ったか
- 事業承継・M&A補助金の活用可能性を確認したか
- 税理士・弁護士への別途費用(DD費用、法務費用等)を見積もりに含めているか
- 支援機関がM&A支援機関登録制度の登録事業者かどうかを確認したか
手数料の詳細条件は必ず専門家(税理士・弁護士等)にも確認することを推奨します。
手数料の妥当性を中立的な立場で確認する

仲介会社から提示された手数料条件が適正かどうかは、当事者では判断しにくい場合があります。M&Aが成立することで大きな利益を得る仲介会社が提示する条件に対して、売り手自身が客観的に評価するのは難しいことが少なくありません。
手数料の妥当性を中立の専門家に確認する

こうした場合に役立つのが、利益相反のない中立的な第三者意見です。M&Aセカンドオピニオンとは、仲介会社やFAから独立した立場で、提示された手数料条件・スキーム・契約条件の妥当性を評価するサービスです。
契約前に「この手数料条件は適正か」「最低手数料の設定は業界水準と比べてどうか」「算定基準は自社に不利ではないか」といった点を専門家に相談することで、交渉の根拠を持つことができます。
M&Aインサイトでは、売り手経営者に寄り添う中立的なセカンドオピニオンを無料でご提供しています。手数料条件の評価、仲介会社選びの判断基準、スキームの妥当性確認など、M&Aに関するあらゆる疑問・不安をご相談いただけます。
M&A市場の動向と手数料への影響

中小M&A需要の拡大と料金透明化の流れ
帝国データバンクの調査(2025年)によれば、後継者不在率は50.1%と依然として高水準にあり、事業承継を目的としたM&Aの需要は増加傾向にあります(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。この需要拡大を背景に、M&A支援市場への参入者が増加しており、競争原理が働くことで手数料体系の透明化・低廉化が進みつつあります。
中小M&A市場改革プラン(2025年8月5日公表、経済産業省)でも支援機関の質の向上と料金透明化が政策的に推進されています。売り手経営者にとっては、手数料の比較・検討がしやすい環境が整いつつある状況です。
M&A支援機関登録制度の影響
2021年8月に創設されたM&A支援機関登録制度では、中小企業庁に登録した機関に対して、中小M&Aガイドラインの遵守宣言が登録要件とされています。ガイドライン自体は法律ではありませんが、登録機関はガイドラインに沿った手数料や業務内容の開示が求められます。登録機関であるかどうかは、事業承継・M&A補助金の対象要件に影響する場合もあり、支援機関選択の一つの指標となっています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」、2024年8月改訂)。登録機関の一覧は中小企業庁ウェブサイトで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 最低手数料はどの段階で発生しますか?
最低手数料は、成功報酬として発生します。M&Aが成約(主にクロージング完了または最終契約書締結、契約書に定める時点)した段階で適用されます。レーマン方式で計算した成功報酬が最低手数料を下回った場合に、最低手数料が適用される形です。M&Aが不成立に終わった場合は最低手数料は発生しませんが、着手金等の別費用は発生する可能性があります。
Q2. 最低手数料は交渉で変えられますか?
原則として仲介会社が設定した最低手数料は固定の条件として提示されますが、案件の規模や状況によっては交渉の余地がある場合もあります。ただし、無理な値引き交渉は支援の質に影響するリスクもあります。最低手数料の水準が自社の案件規模に見合っているかを事前に確認し、合わない場合は別の支援機関を検討する方が建設的です。
Q3. 成功報酬の算定基準(総資産か株式価値か)で実際にどれくらい変わりますか?
移動総資産額を「株式譲渡対価+有利子負債」とする契約の場合、有利子負債(借入金・社債など)が1億円ある会社を2億円(株式価値)で売却した例では、総資産(移動総資産)基準で3億円×5%=1,500万円、株式価値基準では2億円×5%=1,000万円となり、500万円の差が生じます。有利子負債が多い会社ほど、算定基準の影響は大きくなります。なお、移動総資産の具体的な定義は支援機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
Q4. 補助金を使えば手数料の負担は軽減できますか?
事業承継・M&A補助金で補助されるのは費用の一部であり、全額が補助されるわけではありません。補助率・補助上限は年度・公募によって変わります。また、M&A支援機関登録制度に登録された機関の利用が要件となる場合があります。補助金は成約後に精算請求する形が多く、先払いの資金が必要な点も考慮が必要です。詳細は事業承継・M&A補助金の公式サイトおよび中小企業庁の公募情報でご確認ください。
Q5. M&Aが不成立になった場合、着手金は戻ってきますか?
原則として返金されません。着手金は業務開始の対価であり、成約の有無にかかわらず発生します。完全成功報酬制を採用している支援機関の場合、着手金そのものを設定していないため、不成立時の費用負担を最小化できますが、その分、成功報酬が高めに設定されているケースもあります。
Q6. 仲介型とFAでは手数料にどのような違いがありますか?
仲介型では売り手・買い手の双方から手数料を受け取るため、片方のFAより各当事者の負担額が低くなる場合があります。一方、FAは依頼者の利益最大化に特化するため、売り手専属FAを選ぶことで成約条件が有利になる場合があります。単純な費用比較ではなく、支援形態のメリット・デメリットを理解したうえで選択することが重要です。
Q7. 手数料条件を確認する際に、契約書で必ずチェックすべき点は?
次の5点は必ず書面で確認し、疑問点は契約前に専門家(税理士・弁護士等)に相談することを推奨します。①成功報酬の算定基準(総資産基準か株式価値基準か、移動総資産の定義は何か)、②最低手数料の金額と適用条件(売り手・買い手どちらに適用されるか)、③着手金・月額報酬の金額と不成立時の返金条件、④中間報酬が成功報酬から差し引かれるかどうか、⑤成功報酬の発生タイミング(DA締結時かクロージング時か)。
まとめ
M&Aの最低手数料とは、成功報酬の下限額として設定される費用です。レーマン方式で計算した成功報酬がこの下限を下回った場合、下限額が適用されます。小規模案件ではこの影響が特に大きく、実質的な手数料率が想定よりも大幅に高くなるケースがあります。
M&Aの費用を合理的に把握し、適切な支援機関を選ぶためには、次の点が重要です。
- 手数料の種類(着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬)とそれぞれの発生タイミングを理解する
- 最低手数料の金額と、自社の想定売却価格との関係を試算する
- 成功報酬の算定基準(総資産か株式価値か)を確認し、複数社で比較する
- 複数の支援機関から相見積もりを取る
- 事業承継・M&A補助金の活用可能性を確認する
- 中立的なセカンドオピニオンを活用して、提示条件の妥当性を判断する
M&Aインサイトは、完全無料・成功報酬なしの中立的なセカンドオピニオンサービスです。仲介会社から提示された手数料条件の評価、支援機関の選び方、M&Aスキームの妥当性確認など、売り手経営者のあらゆる疑問にお答えします。M&Aを検討している段階からお気軽にご相談ください。
監修
森沢雄太(もりさわ ゆうた)
一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事。日本M&Aセンター出身。M&A成約実績100件超。