事業承継の失敗事例と原因を徹底解説|回避策と成功のポイントも紹介

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「後継者が見つからないまま、あと数年で限界を迎えてしまう」「子どもに継がせたいが、本人がどう思っているか分からない」「いざ承継を進めようとしたら、親族間でもめてしまった」——事業承継に向き合う経営者の多くが、こうした不安や困難を抱えています。

準備不足のまま承継を進めてしまい、承継後に業績が急落した。後継者への経営権移譲で親族が対立し、会社が分裂してしまった。そういった痛みを伴う事例は、決して遠い話ではありません。中小企業庁「2024年版 中小企業白書」によれば、廃業・休業件数は依然として高水準を維持しており、後継者問題が廃業を後押しする大きな要因となっています。

しかし、失敗の多くは「なぜ失敗するのか」という構造的な原因を事前に知っていれば、回避できるものです。後継者選定の問題、準備のタイミング、税務・株式の対策——これらの落とし穴を理解し、適切な対策を講じることで、スムーズな承継に近づけることができます。

そこで本記事では、事業承継の代表的な失敗事例とその根本原因を整理し、失敗を防ぐための具体的な対策を分かりやすく解説します。税務・法務・後継者育成にわたる実践的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。

事業承継の基本と全体像



目次

事業承継の「失敗」とはどういう状態か

事業承継の失敗とはどういう状態かを示すビジネスイメージ

事業承継の文脈で「失敗」と呼ばれる状態は、大きく分けて4つのパターンに整理できます。どれか一つに陥るケースもあれば、連鎖的に複数のパターンへと発展するケースも少なくありません。

廃業・倒産に追い込まれる

後継者が見つからず、経営者が高齢や病気で現役を続けられなくなった結果、廃業を余儀なくされるケースです。帝国データバンク「2024年全国企業倒産集計」によると、後継者難を起因とする倒産は2024年に540件(前年比4.3%減、2年連続で500件超)に上ります。また、帝国データバンクが2025年に公表した「全国企業『休廃業・解散』動向調査」によると、2024年の休廃業・解散件数は6万9,019件にのぼり、直近調査の集計では6万7,949件とわずかに減少したものの、過去10年では2番目に多い水準となっています。黒字経営であっても廃業を選ばざるを得ないケースもあり、積み上げてきた技術・顧客・雇用が一度に失われることになります。

業績悪化

承継後、後継者が経営の実権を十分に握れないまま意思決定が遅れる、または現場との信頼関係を構築できないまま方針変更を進めてしまい、業績が急速に悪化するパターンです。後継者の経営経験が不足していた、あるいは先代経営者のノウハウや人脈が十分に引き継がれていなかったことが背景にあることが多いです。

退職者の増加・組織の混乱

承継に際して組織の方向性が見えないまま時間が経過すると、不安を感じた幹部や古参社員が離職する事態が起きやすくなります。特に「現社長に近い人物が後継者を認めない」「社内派閥が対立する」といった状況では、退職が連鎖し、組織全体が機能不全に陥るリスクがあります。

資金繰りの悪化

承継に伴い、金融機関の融資条件が変わる、または株式の相続税・贈与税の納税資金が不足するという問題が生じるケースです。特に非上場の中小企業では株式の評価額が高額になる場合があり、納税のための資金準備ができていないと経営資金まで圧迫されることがあります。


よくある事業承継の失敗事例

事業承継でよくある失敗事例を示すビジネスシーン

具体的な失敗のパターンを知ることは、リスクを先読みするうえで重要です。以下に、中小企業の経営現場でよく見られる典型的な失敗事例を挙げます(いずれも個別の実在企業を示すものではなく、業界の典型パターンをまとめたものです)。

準備不足による社内の混乱

経営者が体調を崩したことを機に急いで承継を進めたものの、後継者への権限移譲の手順が定まっておらず、現場がどの指示に従えばよいか分からなくなってしまった——こうした「準備不足型」の失敗は非常に多く見られます。事業承継計画書がなく、引き継ぎ内容も口頭での説明のみだった場合、後継者は会社の財務状況や取引先との関係、業務フローを全体として把握できないまま経営を担うことになります。

後継者不在で廃業の危機に

「息子に継いでもらおうと思っていたが断られた」「従業員に打診したが誰もやりたがらなかった」という状況は、後継者候補を早期に探し始めていなかったことが主因です。帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」によると、全国の中小企業の後継者不在率は50.1%に達しています(前年から2.0ポイント低下し7年連続で改善傾向にあるものの、依然として2社に1社が後継者未定の状態です)。後継者候補がいない場合、M&Aによる第三者への承継という選択肢を検討する時間的余裕もないまま廃業に至るケースがあります。

株式の分散による経営権の喪失

先代経営者が生前に株式を複数の親族に分散させていた結果、後継者が過半数の議決権を確保できなくなったという事例は少なくありません。株主総会での意思決定が滞り、重要な経営判断ができなくなるリスクがあります。非上場の中小企業では、こうした株式の分散が長年かけて進んでいるケースも多く、承継前に専門家の助けを借りて株式を集約する手続きが必要になります。

親族間のトラブルと派閥争い

後継者として指名された人物と、それ以外の親族や役員が対立するパターンです。特に複数の子どもがいる場合、「長男が継ぐのは当然」という暗黙の前提と、現場の評価や当人の意欲との乖離が生じることがあります。また、古参の役員が後継者の方針に反発し、社内で「先代派」「後継者派」の派閥が形成されてしまうケースも見られます。こうした対立は、売上の低下・資金の流出・優秀な人材の退職を引き起こす深刻なリスクとなります。

元経営者が影響力を持ち続ける

形の上では承継が完了していても、先代経営者が社内で引き続き意思決定に関与し、後継者の判断を覆し続けるケースです。取引先への挨拶、金融機関との交渉、幹部への指示など、様々な場面で先代が「口を出す」ことで、後継者のリーダーシップが社内外に認められなくなります。役割の明確な線引きと、引退予告のスケジュール化が欠かせません。

相続税・贈与税の対策不足

経営者の急逝や突然の病気により、法人版事業承継税制の適用手続きが間に合わなかった、あるいは自社株の評価額が想定より高くなっており納税資金が不足した——こうした税務リスクは、事前対策がなければ避けることができません。法人版事業承継税制(特例措置)を活用するためには、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた「特例承継計画」を都道府県に提出し、経営承継円滑化法に基づく認定を受けたうえで税務申告時に必要書類を提出する必要があります。計画的な準備が前提となります。


事業承継が失敗する根本原因

事業承継が失敗する根本原因を解説するビジネスイメージ

個別の事例は異なっていても、失敗の背景には共通した「根本原因」があります。ここでは3つの構造的な問題を整理します。

後継者不在などの根本原因に対して、M&Aによる事業承継という解決策で詳しく解説しています。

後継者選定・育成の問題

後継者問題は、単に「誰が継ぐか」という人選だけでなく、「その人が経営者として機能できるか」という育成の問題でもあります。後継者候補が決まっていても、経営の意思決定経験を積む機会が与えられていなかった、財務・法務の知識を身につける機会がなかった、従業員や取引先から「次の社長」として認知されていないといった問題が蓄積しているケースがあります。

後継者の育成には最低でも3年から5年程度の期間が必要とされることが多く、経営者自身の引退タイミングから逆算して早期に着手することが求められます。また、後継者候補が「本当に経営を引き継ぐ意志があるか」を早い段階で確認し、必要であれば外部の人材育成プログラムや同世代の経営者コミュニティへの参加を後押しすることも有効です。

株式・資産の承継準備不足

事業承継では、経営権の移転と資産の移転を並行して進める必要があります。自社株式が分散していれば集約する手続きが必要ですし、自社株の評価が高い場合には贈与や相続に備えた税務対策が不可欠です。

また、個人保証(経営者保証)の問題も見落とされがちなポイントです。金融機関への借入に際して代表者が個人保証を提供している場合、後継者にその保証を引き継ぐことで新たなリスクを負わせることになります。2022年12月に策定された「経営者保証改革プログラム」(金融庁・経済産業省・財務省)を受け、金融機関による経営者保証の徴求要件の明確化や解除促進が図られるなど、経営者保証に依存しない融資慣行を広げる施策が進められています。ただし、個人保証なしの融資は自動的に受けられるものではなく、法人と経営者の資産・経理の分離、十分な財務基盤、適切な情報開示などの要件を踏まえて金融機関が個別に判断します。専門家(税理士・弁護士・中小企業診断士など)に早期に相談することで、選択肢が広がります。

関係者とのコミュニケーション不足

承継計画を経営者だけで抱え込み、従業員・家族・取引先に対して情報共有が不足していると、承継の直前や直後に大きな混乱が生じることがあります。特に「誰も知らないまま後継者が決まっていた」という状況では、従業員が不信感を抱きやすく、退職者が増えるリスクがあります。

また、家族間での事前合意が形成されていなければ、相続に際して争いに発展するケースもあります。承継計画は、関係する全員と共有し、それぞれの役割と期待を明確にするプロセスが重要です。


3つの事業承継方法の特徴比較

事業承継の3つの方法(親族内・親族外・M&A)を比較するビジネスイメージ

事業承継の方向性を決めるうえで、どの方法を選ぶかによって準備すべき内容や課題が異なります。主な3つの承継方法を比較すると以下のとおりです。

親族内承継親族内承継・従業員承継の進め方で詳しく解説しています。

方法概要メリットデメリット・課題
親族内承継子や配偶者など家族に引き継ぐ理念・文化の継続性が高い、従業員に受け入れられやすい後継者の意欲・資質に依存、相続税・贈与税の問題が生じやすい
親族外承継(役員・従業員への承継)社内の幹部や優秀な従業員に引き継ぐ経営の実態を熟知、社内での信頼も得やすい株式取得資金の問題、経営者保証の引き継ぎ問題
M&Aによる第三者承継外部の企業や個人に譲渡する後継者不在でも事業を継続させられる、売却対価を得られる文化・雇用面の不安、マッチングに時間を要する

特に後継者が社内外に見つからない場合は、第三者承継(M&A)という選択肢も有力な方法として挙げられます。

近年は後継者不在を背景に、M&Aを活用した第三者承継が増加しています。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)」は、売り手である中小企業がM&Aを安全に活用できるよう、アドバイザーの行動指針や手数料の考え方を整備した実務上重要な指針です。なお、同ガイドラインは法令ではありませんが、M&A支援機関登録制度において登録支援機関に遵守宣言が求められており、売り手が支援機関を選ぶ際の判断基準にもなります。

M&Aによる第三者承継では、まず秘密保持契約(NDA)の締結から始まり、企業概要書(IM)の作成・提示、買い手候補との面談、意向表明書(LOI)の提出、必要に応じた基本合意書(MOU)の締結、デューデリジェンス(DD)、最終契約(DA)に至る複数のプロセスを経ます。成約後には、円滑な引継ぎのため、旧オーナーが一定期間会社運営を支援する取り決めが設けられることもあり、承継後の統合プロセス(PMI)も重要なポイントとなります。こうした手続きは複雑なため、専門家の支援を受けながら進めることが重要です。

自社の状況(後継者候補の有無、株式の分散状況、経営者の年齢・健康状態)に応じて、どの方法が実現可能かを早期に検討することが重要です。


事業承継の失敗を防ぐための5つの対策

事業承継の失敗を防ぐための5つの対策を示すビジネスイメージ

失敗を回避するには、「知識を持つこと」だけでなく、実際に行動するタイミングと手順が重要です。以下に、実務的な観点から有効な対策を整理します。

早期に事業承継の準備を始める

中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」を踏まえると、承継完了までには一般的に5年から10年程度の準備期間が必要とされています。後継者の育成、株式の整理、事業承継計画書の策定、税務対策——これらすべてを短期間で行うことは現実的ではないため、経営者が60歳を迎えるタイミングを目安に、具体的な検討を開始することが望ましいとされています。

帝国データバンク「全国社長年齢分析調査(2024年)」によると、社長の平均年齢は60.7歳(34年連続で過去最高を更新)であり、多くの経営者がすでに承継を意識すべき年齢に差し掛かっています。

事業承継計画書を策定する

「誰に、いつまでに、どのように承継するか」を文書化することで、経営者自身の意思決定を明確にするとともに、関係者との情報共有がスムーズになります。計画書には以下の要素を盛り込むことが推奨されます。

  • 承継の目標時期と後継者の候補
  • 株式の移転計画と評価額の見直しスケジュール
  • 後継者の育成計画(研修・実務経験・社内外の関係構築)
  • 財務・税務対策の行動計画
  • 従業員・取引先への告知のタイミングと方法

中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」でも、計画書の策定は承継を円滑に進めるための基本ステップとして位置づけられています。

後継者の意思を確認し、育成計画を立てる

後継者候補が本当に経営を引き継ぐ意志を持っているかどうかを、早期に確認することが重要です。暗黙の了解や「当然継ぐだろう」という思い込みが、後になって大きな食い違いを生むことがあります。

意志の確認後は、具体的な育成計画を立てましょう。財務・営業・現場業務それぞれの実務経験を計画的に積ませ、役員会や金融機関との打ち合わせにも参加させることで、実際の意思決定プロセスを体感させることが有効です。従業員への紹介・社内外への認知活動も、承継前から段階的に進める必要があります。

節税対策と株式の整理を早期に進める

非上場株式の相続や贈与には、通常の財産移転と同様に税負担が生じます。自社株の評価額が高い場合、相続税・贈与税が多額になることがあり、後継者や家族が納税のために会社資産を売却せざるを得ないリスクもあります。

法人版事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)は、一定の要件を満たした場合に納税を猶予される制度です。2018年の改正で創設された特例措置では最大100%の納税猶予が受けられます。ただし、特例措置を活用するには、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた「特例承継計画」を都道府県に提出(期限:令和9年〈2027年〉9月30日)し、令和9年12月31日までに贈与・相続等を行う必要があります。なお制度の詳細・期限は改正される可能性があるため、最新の国税庁・中小企業庁の情報を必ず確認し、税理士に早期に相談することを強くお勧めします。

また、株式が分散している場合は、後継者への集中化を段階的に進める必要があります。

専門家・支援機関を積極的に活用する

事業承継には、税務・法務・財務・経営管理など幅広い専門知識が必要です。一人の経営者がすべてを把握して最適な判断を下すことは容易ではありません。以下のような専門家・支援機関を活用することで、見落としを防ぎ、リスクを適切に管理できます。

  • 税理士:自社株の評価、贈与・相続税対策、事業承継税制の活用
  • 弁護士:株主間契約、遺言書の作成、親族トラブルの予防と対処
  • 中小企業診断士:事業承継計画の策定、後継者育成の支援
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:全国47都道府県に設置された公的相談窓口。事業承継全般の相談、事業承継計画の策定支援、M&Aのマッチング支援などを原則無料で受けられる
  • M&Aアドバイザー:後継者不在の場合の第三者承継のマッチング

事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に設置されており、無料で専門家への相談が可能です(中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センター」参照)。


後継者選定・育成チェックリスト

後継者選定と育成のチェックリストを確認するビジネスシーン

承継準備を始める際に、以下の項目を確認しましょう。1つでも「×」がある場合は、早急に対応を検討することをお勧めします。

後継者候補の有無は承継の成否を大きく左右します。後継者が見つからない場合の対処法で詳しく解説しています。

  • 後継者候補が少なくとも1人特定されている
  • 後継者候補本人が経営を引き継ぐ意志を明確に示している
  • 後継者候補が財務・営業・現場の各業務を経験したことがある
  • 後継者候補が社内外の主要関係者(従業員・取引先・金融機関)に紹介されている
  • 自社株の評価額を直近1年以内に確認している
  • 法人版事業承継税制(特例措置)の活用可否を税理士に相談済みである
  • 株式が分散している場合、集約の計画が立てられている
  • 個人保証(経営者保証)について金融機関と協議したことがある
  • 従業員・家族に対して承継の方向性を共有している
  • 事業承継計画書(承継時期・後継者・株式移転計画・税務対策を含む)を文書化している

事業承継後の注意点:組織の安定化と業績管理

事業承継後の組織安定化と業績管理を示すビジネスイメージ

承継が完了した後も、リスクは続きます。後継者が新しい経営者として組織を安定させるまでの期間は、特に注意が必要です。中小企業庁「中小PMIガイドライン(2022年版)」では、M&Aによる承継後の統合プロセスの重要性も強調されています。

従業員との信頼関係の構築

後継者にとって最初の課題の一つは、従業員の信頼を獲得することです。承継直後は「新しいリーダーに任せていいのか」という不安が従業員にあることを前提として、丁寧なコミュニケーションを継続する必要があります。経営方針の変更がある場合は、一方的に告知するのではなく、背景・理由を丁寧に説明し、関係者が納得できる形を作ることが重要です。

また、承継後の一定期間は先代経営者との役割分担を明確にし、後継者が主体的に意思決定できる環境を整えることが、組織の安定につながります。先代が「相談役」「顧問」として助言する役割に留まり、日常の経営判断には口を出さないよう、事前に合意を形成しておくことが望ましいです。

業績管理と早期の問題発見

承継後は業績の変化を月次で追う仕組みを整え、問題の兆候を早期に把握することが求められます。先代経営者が暗黙知として保持していた取引条件・顧客情報・仕入先との関係などが引き継がれていない場合、業績悪化の原因を特定することが難しくなります。引き継ぎ事項を文書化し、双方が確認できる形にしておくことが有効です。

資金繰り管理も承継後の重要な課題です。承継に伴い金融機関の審査が行われる場合もあるため、財務状況の透明性と経営計画の明確化を早期に行うことが信頼構築につながります。


後継者の心理的負担と承継の成功をつなぐ視点

後継者の心理的負担と事業承継成功をつなぐ視点を示すビジネスイメージ

多くの書籍や記事は、事業承継の「法務・税務・手続き」に焦点を当てがちですが、現場で見落とされやすいのが「後継者の心理的な負担」です。

後継者候補は、経営を引き継ぐことへの責任感やプレッシャーと同時に、「本当に自分でできるのか」「従業員や取引先に認めてもらえるのか」という不安を抱えています。こうした心理的負担に先代経営者が気づかず、一方的に承継スケジュールを押し進めた結果、後継者が精神的に追い詰められるケースも見受けられます。

後継者の心理的安定を支えるためには、以下の取り組みが有効です。

  • 承継に関する決定事項を後継者と一緒に決める(押しつけない)
  • 失敗を責めない環境を作り、小さな経営体験から成功体験を積ませる
  • 後継者が外部の経営者コミュニティ・研修に参加できる機会を設ける
  • 必要に応じて、後継者専門のコーチング・メンタリングを活用する

事業承継は最終的に「人と人の関係」に支えられています。法律や税務の問題を解決するだけでなく、後継者と先代経営者の双方が納得感を持って進められる承継が、長期的な成功につながります。

承継の方向性や計画に不安がある場合は、売り手視点を重視した中立的な第三者の意見を参考にすることも有効な選択肢です。M&Aインサイトでは、無料のセカンドオピニオン相談を提供しています。承継計画の妥当性、後継者選定の考え方、M&Aの選択肢まで、売り手側に寄り添う中立的な立場からアドバイスを受けることができます(完全無料・成功報酬なし)。


よくある質問(FAQ)

Q1. 事業承継に失敗したらどうなるのですか?

失敗のパターンによって結果は異なりますが、主な影響として廃業・倒産、業績の急速な悪化、幹部・従業員の大量退職、取引先・金融機関からの信頼低下が挙げられます。承継そのものが失敗に終わった場合、長年培ってきた経営基盤が短期間で失われるリスクがあります。ただし、早期に課題を把握して対策を打てば、多くの失敗は回避または修正が可能です。

Q2. 後継者が見つからない場合、どうすればよいですか?

後継者が社内・親族内に見つからない場合の有力な選択肢がM&Aによる第三者承継です。事業を第三者の企業や個人に売却・譲渡することで、雇用の維持や事業継続が可能になるケースがあります。全国47都道府県の「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者探しの相談も受け付けており、M&Aの活用について中立的なアドバイスを受けることができます。後継者不在と判明した時点で、なるべく早く相談先を探すことが重要です。

Q3. 事業承継税制はどのような場合に使えますか?

法人版事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)は、後継者が自社株式を先代経営者から贈与・相続により取得する際、一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税が猶予される制度です。特例措置(2018年創設)では最大100%の納税猶予が受けられますが、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります(提出期限:令和9年〈2027年〉9月30日)。適用要件・手続きについては国税庁または最寄りの税理士にご相談ください。制度の内容は改正されることがあるため、最新情報は国税庁ホームページで確認することをお勧めします。

Q4. 親族間のトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?

早期に「誰が後継者か」を明確にし、その理由を関係者に丁寧に説明することが基本です。遺言書の作成(公正証書遺言が推奨)により、相続発生後の争いを未然に防ぐことができます。また、後継者以外の相続人への配慮として、相続分の代償金の準備や後継者以外への別の財産の充当なども検討できます。弁護士や税理士など専門家の助けを早期に借りることで、親族間の合意形成をスムーズに進めることができます。

Q5. 何歳から事業承継の準備を始めるのがよいですか?

一般的には、経営者が60歳前後を一つの目安に承継の検討を始めることが推奨されています。承継完了までには育成・税務対策・株式整理・計画策定などを含め5〜10年を要するケースも多く、70歳を超えてから始めると選択肢が狭まりやすくなります。帝国データバンク「全国社長年齢分析調査(2024年)」によると社長の平均年齢は60.7歳であり、すでに多くの経営者が承継を検討すべき段階にいます。早すぎるということはありませんので、まず専門家に現状を相談するところから始めることをお勧めします。

Q6. M&Aによる承継と通常の事業承継はどう違いますか?

通常の事業承継は親族や役員・従業員など「身近な関係者」への引き継ぎを指すことが多く、M&Aは外部の第三者企業・個人への譲渡を指します。M&Aは後継者不在の際の有力な選択肢であり、売却対価を得ながら事業・雇用を継続させることができます。一方で、企業文化の統合やPMI(統合プロセス)に一定の時間とコストがかかる点はデメリットです。どちらが適しているかは、後継者候補の有無・経営状況・経営者の意向によって異なるため、専門家への相談が有効です。


まとめ:失敗を避けるために今できること

事業承継の失敗は、準備不足・タイミングの遅れ・コミュニケーションの欠如という3つの根本原因に起因するケースがほとんどです。後継者の選定・育成に十分な時間をかけ、株式・税務・法務の問題を専門家とともに整理し、関係者との情報共有を丁寧に進めることで、多くの失敗リスクは回避できます。

特に重要なのは「早く始めること」です。承継の問題は後回しにするほど選択肢が減り、準備にかけられる時間も限られていきます。法人版事業承継税制の特例措置には令和9年(2027年)12月末という適用期限もあり、活用を検討している場合はとりわけ早期の行動が求められます。現時点で後継者候補がいない、あるいは承継計画が全く手つかずという場合は、まずは専門家への相談から始めることをお勧めします。

M&Aインサイトでは、事業承継に関する中立的なセカンドオピニオンを完全無料で提供しています。「今の承継計画に不安がある」「後継者候補がいないがM&Aを検討したい」「専門家のアドバイスをコストをかけずに聞きたい」——そのような方は、ぜひ一度ご相談ください。成功報酬も一切なく、売り手側に寄り添った中立的な立場からサポートします。

事業承継の進め方を中立の専門家に相談する


監修:森沢 雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事/日本M&Aセンター出身/M&A成約実績100件超)

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