障害福祉サービス(放課後等デイ・グループホーム)のM&A

障害福祉サービス事業のM&A・事業承継について経営者が専門家と相談している様子

「利用者さんやスタッフのことを考えると、事業をこのまま自分の代で終わらせてよいのか迷っている」「後継者が見つからないまま、体力的にも経営を続けるのが難しくなってきた」——障害福祉サービス事業を営む経営者からは、こうした声が少なくありません。

障害福祉サービスは、利用者やその家族の生活を日常的に支える公共性の高い事業です。だからこそ、事業をやめる・引き継ぐという判断は、単なる経営判断にとどまらず、利用者の生活や職員の雇用にも直結します。後継者が見つからないまま先送りにしてしまうと、選べる選択肢が狭まり、最終的にサービスの縮小や廃業という形で利用者・職員に影響が及ぶこともあります。

こうした状況で選択肢の一つになるのが、第三者への事業承継、すなわちM&Aです。M&Aと聞くと「事業を売り渡す」というイメージが先行しがちですが、実際には利用者へのサービス提供を維持しながら、経営基盤を引き継いでもらう手段としても活用されています。そこで本記事では、障害福祉サービス事業のM&Aの基礎知識から、業界特有の指定手続きの注意点、流れ・相場・費用、よくある失敗パターンまでを整理して解説します。


目次

障害福祉サービス事業のM&Aとは

障害福祉サービス事業のM&Aの基礎知識を確認する経営者

障害福祉サービス事業のM&Aとは、就労継続支援(A型・B型)、放課後等デイサービス、児童発達支援、共同生活援助(グループホーム)、生活介護、就労移行支援といった障害福祉サービスを運営する法人・事業者が、株式譲渡や事業譲渡などの手法によって経営権や事業そのものを第三者に引き継ぐことを指します。

M&Aの基本的な意味・手法・流れをあらためて確認したい方は、以下の記事もご覧ください。

事業承継には、親族内承継(子や親族への引き継ぎ)、従業員承継(役員・従業員への引き継ぎ)、そしてM&Aによる第三者承継という3つの方式があります。障害福祉業界では、後述するように後継者不在が深刻化していることから、社外の法人等に事業を引き継いでもらうM&Aが、事業を存続させるための現実的な選択肢として注目されるようになっています。

一般的なM&Aと同様、障害福祉サービス事業のM&Aでも、株式譲渡・事業譲渡・合併といった手法が用いられます。ただし、障害福祉サービスは都道府県・市町村(政令市・中核市を含む)から「指定」を受けて初めて運営できる事業であるため、手法によって指定の扱いが異なる点が、他業種のM&Aとは異なる大きな特徴です。この点は本記事の後半で詳しく解説します。

障害福祉業界でM&A・事業承継が増えている背景

障害福祉業界の後継者不在と事業承継の動向を考える経営者

障害福祉業界でM&A・事業承継への関心が高まっている背景には、いくつかの要因が重なっています。

経営者の高齢化と後継者不在

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表)によれば、国内企業全体の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント改善したものの、依然として半数前後の企業が後継者を確保できていません。障害福祉サービス事業者の多くも中小規模の法人であり、この傾向と無縁ではありません。経営者自身の高齢化が進む一方で、専門性の高い福祉分野を引き継げる後継者候補が身近にいないケースも多く、第三者への承継を検討する動きにつながっています。

サービス需要の拡大と事業所数の増加

一方で、障害福祉サービスの利用者数・事業所数自体は増加傾向にあります。厚生労働省が公表する「障害福祉サービス等の利用状況」(国保連データに基づく集計)によれば、放課後等デイサービスの利用者数・事業所数の直近公表値は令和7年1〜3月平均で約37.5万人・22,748カ所です。利用者数・事業所数とも増加傾向にあることを背景に、事業規模の拡大を狙う法人や、異業種から新規参入する企業にとって、既存の指定事業所を譲り受けることは事業立ち上げの時間短縮につながる選択肢として注目されています。

経営環境の変化

障害福祉サービス等報酬は定期的に改定されており、人員配置基準や加算要件への対応、専門職の採用・定着など、事業運営にかかる負担は小規模事業者ほど重くなりがちです。こうした環境変化への対応力を高める目的で、資本力や人材採用力のある法人グループの傘下に入る選択をする経営者も見られます。

障害福祉サービスM&Aの主な手法とその違い

株式譲渡・事業譲渡・合併の手法を比較検討するビジネスシーン

障害福祉サービス事業のM&Aで用いられる主な手法は、株式譲渡・事業譲渡・合併の3つです。それぞれ指定の扱いや対象範囲が異なるため、自社の状況に合った手法を検討する必要があります。

手法 概要 指定への影響 対象範囲
株式譲渡 株主が保有株式を買い手に譲渡し、経営権を移転する。法人格は変わらない。 法人格が継続するため、既存の指定を維持したまま承継できるのが原則。ただし代表者・役員等の変更届出(変更があった日から10日以内)は別途必要 会社全体(保有する全事業所)
事業譲渡 特定の事業・事業所のみを契約で選んで譲渡する。 譲渡先の法人が新たに指定申請を行う必要があり、譲渡元の事業所は廃止の手続きが必要になるのが原則 事業所単位で対象を選択可能
合併(吸収合併等) 複数の法人が1つの法人に統合される。 存続法人による新規指定申請が原則必要。ただし実質的に運営が継続していると認められる場合は、指定権者への提出書類・手続きが簡素化される取扱いがある 法人全体

株式譲渡は、経営権(株式)の移動にとどまり法人格そのものは変わらないため、比較的スムーズに手続きが進みやすい手法とされています。一方、事業譲渡は事業所ごとに対象範囲を選べる柔軟性がある反面、指定手続きの負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。

株式譲渡そのものの手続きや注意点は株式譲渡の仕組みで詳しく解説しています。

障害福祉サービスM&Aにおける売り手のメリット

M&Aによる事業承継後も安心して働く福祉施設のスタッフたち

M&Aによって事業を第三者に引き継ぐことには、売り手側にとって次のようなメリットがあります。

まず、後継者不在という長年の課題を解消できることが最大のメリットです。親族や社内に適任者がいなくても、外部の法人等に事業を引き継いでもらうことで、事業を存続させられます。あわせて、金融機関からの借入に付されている経営者個人保証についても、M&Aを機に解除の交渉を行える可能性があります。

利用者・従業員の面では、事業を廃業するのではなく承継することで、利用者は同じ事業所でサービスを受け続けられ、従業員も雇用を維持したまま新しい経営体制に移行できる可能性があります。契約交渉の中で、雇用維持や処遇に関する条件を盛り込むこともできます。また、資本力のある法人グループの傘下に入ることで、システム投資や人材採用力の強化など、単独では難しかった経営基盤の強化につながるケースもあります。

障害福祉サービスM&Aにおける売り手のリスク・注意点

契約条件を慎重に確認する経営者と専門家

一方で、M&Aには売り手が見落としがちなリスクもあります。

経営方針が変わることで、これまでのサービスの質や運営スタイルが変化する可能性があります。買い手がどのような経営方針を持っているかを事前に確認せずに進めると、想定していなかった変化が生じ、利用者や職員の不安につながることがあります。従業員の待遇・勤務条件についても、雇用は維持されても給与体系や勤務シフトの見直しが行われる場合があるため、交渉段階で確認しておくことが重要です。

契約前に条件の妥当性を中立的な視点で確認したい方は、以下もあわせてご覧ください。

また、事業所の稼働率が低い、行政処分歴がある、加算の取得状況が振るわないといった事情がある場合、想定していたよりも評価額が低くなるケースもあります。交渉が決裂した場合の情報漏洩リスクにも注意が必要で、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、開示する情報の範囲を段階的に広げていくのが実務上の基本です。

条件面の妥当性に不安がある場合、契約を締結する前の段階で、仲介会社とは別に中立的な第三者の視点から確認しておくというのも一つの方法です。

障害福祉サービスM&Aの流れ

M&Aの進め方のステップを確認しながら打ち合わせをする様子

障害福祉サービス事業のM&Aは、おおむね次のようなステップで進みます。全体でおおよそ半年から1年程度となるケースが多いとされますが、これを一律に定めた公的な基準があるわけではなく、指定権者との協議状況、デューデリジェンスの深さ、買い手候補の数などによって、これより短くなることも長くなることもあります。

一般的なM&A全体の流れをより詳しく知りたい方はM&Aの流れで詳しく解説しています。

  1. 準備・自己分析(1〜2ヶ月):財務状況、利用者数・稼働率、加算の取得状況、人員体制などを整理し、譲渡の方向性を検討する
  2. 仲介会社・アドバイザーの選定と秘密保持契約(NDA)締結:情報を開示する前に、秘密保持契約を締結する
  3. ノンネームシート・IM(企業概要書)によるマッチング(数ヶ月〜半年):法人名を伏せた概要書(ノンネームシート)で買い手候補に打診し、興味を持った候補に詳細な企業概要書(IM)を開示する
  4. トップ面談・意向表明書(LOI):経営者同士が面談し、買い手候補が意向表明書(LOI)を提示する
  5. 基本合意書(MOU)の締結:特定の買い手候補に絞って交渉することを確認する書面で、独占交渉権が付与されるのが一般的
  6. デューデリジェンス(DD):財務・法務・労務に加え、人員配置基準の充足状況や指定取消歴の有無といった福祉的な観点からの調査も行われる
  7. 最終契約書(DA)の締結・クロージング:譲渡価格や条件を確定した最終契約を締結し、対価の授受や経営権の移転を実行する
  8. 指定手続き・利用者や職員への説明:手法に応じて、変更届出・廃止届出や新規指定申請などの必要な手続きを行い、利用者・家族・職員への丁寧な説明を行う

企業価値評価と売却相場の考え方

企業価値評価と売却相場を検討するビジネスシーン

障害福祉サービス事業の企業価値評価には、純資産法(時価純資産をベースにする方法)、年買法(純資産に将来利益の数年分を加算する方法)、EBITDAマルチプル法(利益に一定の倍率を掛ける方法)など、複数の考え方があります。どの手法を用いるか、あるいは複数の手法を組み合わせるかは、仲介会社・FAや買い手の方針によって異なります。

純資産法・年買法・EBITDAマルチプル法それぞれの考え方は企業価値評価の3つの方法で詳しく解説しています。

評価額を左右する要因としては、収益力や純資産といった一般的なM&Aの評価要素に加え、障害福祉サービスでは稼働率、加算の取得状況(サービス提供体制加算などの体制要件を満たしているか)、人員配置の安定性、行政処分歴の有無、不動産を保有しているかどうかといった点が実務上重視される傾向にあります。具体的な倍率や金額を断定的に示すことはできませんが、これらの要因が良好であるほど評価が高くなりやすい傾向にあります。相場観をつかむためにも、複数の仲介会社やアドバイザーから話を聞き、比較検討することが実務的です。

手数料・費用の考え方

M&A仲介手数料・費用の内訳を確認する経営者

M&A仲介会社・FAへの報酬体系としてよく用いられるのが、譲渡金額を階層(金額帯)ごとに区切り、それぞれに定められた料率を適用して合算する「レーマン方式」です。ただし、料率テーブルや最低報酬額は仲介会社・FAによって異なり、算定の基準(株価ベースか、負債を含めた総資産ベースかなど)にもバリエーションがあります。

費用の内訳としては、契約時に発生する着手金、契約期間中に発生する月額報酬(リテイナーフィー)、基本合意時に発生する中間金、成約時に発生する成功報酬などがあり、すべてを組み合わせるか一部のみとするかは契約内容によって異なります。中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版では、契約締結前に算定方法・料率テーブル・最低報酬額などを書面で説明することが仲介者・FAに求められています。同ガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、M&A支援機関登録制度に登録した仲介者・FAには遵守が求められているため、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。

障害福祉サービス特有の論点①:指定の承継手続き

障害福祉サービスの指定承継手続きの書類を確認する様子

障害福祉サービス事業のM&Aで、他業種のM&Aと大きく異なるのが、指定手続きへの対応です。障害福祉サービスは、障害者総合支援法等に基づき都道府県・市町村(政令市・中核市を含む)から事業所ごとに指定を受けて初めて運営できる仕組みになっています。なお、就労継続支援や共同生活援助(グループホーム)等は主に障害者総合支援法、放課後等デイサービスや児童発達支援は主に児童福祉法を根拠法とする点で、同じ「障害福祉サービス」でも運営する事業によって根拠法が異なります。

株式譲渡の場合、経営権が移るだけで運営法人そのものは変わらないため、既存の指定を維持したまま承継できるのが原則です。ただし、代表者・役員の変更が生じる場合は、障害者総合支援法または児童福祉法に基づき、変更があった日から10日以内に変更届出を行う手続きが別途必要になります。

一方、事業譲渡の場合は、譲渡元の法人が事業所を廃止し、譲渡先の法人が新たに指定申請を行うのが原則的な取り扱いです。事業所の廃止届は原則として廃止日の1か月前までに提出する必要があるため、譲渡先の指定申請スケジュールとあわせて早めに準備しておく必要があります。譲渡先が指定申請の準備を整えないまま譲渡日を迎えると、指定の空白期間が生じ、サービス提供が一時的に滞るリスクもあるため、指定権者との事前協議のスケジュールには特に注意が必要です。

合併(吸収合併等)についても、存続法人による新規指定申請そのものは原則必要です。ただし、令和6年6月21日の規制改革実施計画を踏まえて厚生労働省が発出した事務連絡「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」では、施設・事業所の職員に変更がないなど、合併前後で事業所が実質的に継続して運営されていると指定権者が判断する場合、法人格の変更がわかる登記事項証明書等の提出のみで足りるなど、提出書類・手続きが簡素化される取扱いが示されています(申請自体が不要になるわけではない点に注意が必要です)。会社法上の権利義務を承継する形での合併で、かつ実質的な継続運営が認められると判断された場合には、利用者との利用契約の再締結が不要になり、障害福祉サービス等報酬上の実績も通算できるとされています。

いずれの手法を選ぶ場合も、指定権者(都道府県・市町村)ごとに運用の細部が異なる可能性があります。事前相談の要否や時期、必要書類、新規指定申請の審査期間、利用契約の再締結の要否、加算実績の通算可否といった項目は自治体によって差が出やすいため、M&Aの検討段階から早めに個別の確認・相談を行うことが欠かせません。

障害福祉サービス特有の論点②:人員配置・加算・利用者対応

福祉施設のスタッフ体制と利用者対応について話し合う職員

指定手続き以外にも、障害福祉サービス特有の論点として押さえておきたいのが、人員配置基準と既存加算の取り扱いです。

サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者など、法定で定められた人員配置基準は、承継後も継続して満たす必要があります。承継を機にキーパーソンとなる職員が離職してしまうと、人員基準を満たせなくなり、指定の維持や加算の算定に影響が及ぶ可能性があります。デューデリジェンスの段階で、資格保有者の勤続意向を確認しておくことが重要です。

また、サービス提供体制加算など、事業所が取得している既存の加算を維持できるかどうかも、譲渡先の運営体制次第で変わってきます。買い手側は承継後の体制で加算要件を満たせるかを事前に確認し、売り手側もどのような加算を取得しているかを整理して開示できるようにしておくと、交渉がスムーズに進みやすくなります。

そして何より重要なのが、利用者・家族・職員への説明です。障害福祉サービスの利用者にとって、事業所の運営主体が変わることは大きな不安要素になり得ます。契約締結のタイミングや、利用者・家族への説明時期・説明方法については、買い手側とも十分にすり合わせたうえで、混乱が生じないよう配慮することが求められます。

実務でそのまま使えるチェックリスト

M&A検討時の確認項目をチェックリストで整理する経営者

障害福祉サービス事業のM&Aを検討する際、以下の項目を早い段階で確認しておくと、後の交渉がスムーズに進みやすくなります。

  • 財務状況・稼働率・加算の取得状況を整理できているか
  • サービス管理責任者等、人員配置基準を満たす職員の勤続意向を確認したか
  • 過去に行政処分・指導歴がないか、あれば内容を整理しているか
  • 秘密保持契約(NDA)を締結したうえで情報開示を進めているか
  • 想定する譲渡手法(株式譲渡・事業譲渡・合併)ごとの指定手続きを確認したか
  • 利用者・家族・職員への説明時期とタイミングを買い手側とすり合わせているか
  • 契約内容(表明保証・競業避止条項など)を専門家とともに確認したか
  • 税務・消費税・個人保証・役員退職慰労金などの取り扱いについて、税理士・弁護士等の専門家に個別に確認したか

障害福祉サービスM&Aで失敗しやすいパターンと対策

M&Aの失敗パターンを避けるため慎重に資料を見直す経営者

障害福祉サービス事業のM&Aで後悔につながりやすいパターンには、共通する傾向があります。

失敗しない相談先の選び方については、以下の比較ガイドも参考になります。

一つは、後継者不在への焦りから、条件の妥当性を十分に検討しないまま最初に提示された条件で交渉を進めてしまうケースです。複数の選択肢を比較せず一社のみと交渉を進めると、相場観がないまま契約に至るリスクがあります。

もう一つは、指定手続きのスケジュールを軽視してしまうケースです。前述のとおり、事業譲渡では譲渡先の新規指定申請が完了するまでにサービス提供が滞る可能性があるため、指定権者との事前協議を後回しにすると、クロージングの直前になって想定外の遅延が生じることがあります。

さらに、利用者・家族・職員への説明が直前になってしまうケースも少なくありません。情報管理の観点から早期の周知が難しい面はありますが、契約締結後、できるだけ早いタイミングで丁寧な説明の機会を設けることが、承継後の信頼関係を左右します。

こうした失敗を避けるためにも、契約締結前の段階で、条件の妥当性を中立的な第三者の視点からも確認しておくことが有効な備えになります。

よくある質問

Q1. 株式譲渡と事業譲渡、どちらを選ぶべきですか? A. 一概にどちらが良いとは言えません。法人全体を引き継ぐ株式譲渡は指定手続きの負担が比較的軽い一方、事業譲渡は特定の事業所だけを譲渡できる柔軟性があります。自社の状況(複数事業所の一部だけを譲渡したいか、法人全体を引き継いでほしいか)に応じて、専門家と相談しながら検討することをおすすめします。

Q2. M&Aをすると、事業所の指定は自動的に引き継がれますか? A. 手法によって異なります。株式譲渡は既存の指定を維持したまま承継できるのが原則ですが、事業譲渡は譲渡先での新規指定申請が必要です。合併も原則として新規指定申請が必要ですが、実質的な運営継続が認められる場合は提出書類・手続きが簡素化される取扱いがあります。いずれも指定権者(都道府県・市町村)への事前確認が欠かせません。

Q3. 利用者や職員への説明はいつ行うべきですか? A. 情報管理の観点から、契約締結前の周知は難しいのが実務上一般的です。ただし、契約締結後はできるだけ早い段階で、買い手側と説明内容・時期をすり合わせたうえで丁寧に説明することが、承継後の信頼関係の維持につながります。

Q4. 小規模な事業所でも買い手はつきますか? A. 稼働率や人員体制、加算の取得状況などが良好であれば、小規模な事業所でも買い手が見つかるケースはあります。逆に、稼働率が低い、行政処分歴があるなどの事情があると、想定より評価が低くなる、あるいは交渉が難航することもあります。

Q5. M&A後、職員の雇用条件は維持されますか? A. 雇用そのものは維持される交渉を行うことができますが、給与体系や勤務条件の見直しが行われる場合もあります。交渉段階で、雇用条件についてどこまで維持されるのかを買い手候補に確認しておくことが重要です。

Q6. 完全無料の第三者意見は、どのタイミングで使うのがよいですか? A. 特定の仲介会社と契約を結ぶ前や、条件提示を受けて判断に迷っている段階で活用するのが効果的です。契約後では見直しが難しい条件もあるため、早めに中立的な視点を取り入れることをおすすめします。

まとめ

障害福祉サービス事業のM&Aは、後継者不在という課題を解消しながら、利用者へのサービス提供と職員の雇用を維持できる選択肢の一つです。一方で、指定手続きや人員配置基準の維持、利用者・家族への説明など、障害福祉サービス特有の論点に配慮しながら進める必要があり、一般的なM&Aの知識だけでは対応しきれない場面も少なくありません。

後継者不在率が依然として高い水準にあるなかで、事業を存続させる選択肢を狭めないためにも、早めに情報収集を始め、条件の妥当性を第三者の視点から確認しておくことが大切です。


監修:森沢雄太(一般社団法人M&Aセカンドオピニオン協会 代表理事) 日本M&Aセンター出身、M&A成約実績100件超。売り手経営者に寄り添う中立的な立場から、本記事の内容を監修しています。

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